松「お世話になりました」
爺「なにもなにも...この年寄りの世話をしてくれたのは智のほうだ...」
婆「そうよ...さとちゃんのお陰で毎日が楽しくてね...ずっと...ここにいて欲しかったのに...。
ごめんなさい...もっと、気を付けてあげていれたら...こんな事には...」
松「とんでもない...感謝しかありません。
智は...絶対にお二人には体調が悪いのを隠してきたと思います。そういう奴なんです...。
ずっと...ここで...お二人の所に居たくて元気なフリをしていたに違いないんです。
改めてお礼に伺います...智に使って下さった生活費もお支払いします」
爺「そんな事はいいんだ...。とにかく早く治してやってくれ...」
婆「...寂しくなる...」
爺「元に戻るだけだよ...また、博達も遊びに来るさ」
松「あの...長野さん...博さんは智をここに連れてきてくれた時...何か言っていましたか?」
婆「......とても良い子だから頼む、と...」
爺「こんな所でも働かなきゃならんから...工作教室が出来る様に役場や商工会に話付けてきて...。
智があんなだから...子供にも保護者にも人気でな...夏休みや冬休みはキャンセル待ちになる程や...あの子らも残念がるな...」
松「他に何か...」
婆「...ただ...ひどく傷付いているから...何も聞かずに孫のつもりで一緒に暮らしてあげて欲しいと。食費や生活費は自分が持つから...と」
爺「そんな金は必要ない。孫に使う金なんか惜しくない。と言ってやったんだ...」
婆「お教室の体験料でさとちゃんの収入は十分あったからね、お金なんて私らはなんぼも使ってへんのに毎月、ちゃんと入れてくれてたよ」
松「本当に...ありがとうございました...。僕の...たった一人の身内なんです...姉から託された大事な甥です...こうして無事に見つける事が出来たのもお孫さん達とお二人のお陰です...」
爺「いいからいいから...早う、病院に...」
婆「わたし...泣いてしまうから、お見送りはせんわな...」
既に鼻声のお二人に
改めて来る事を約束して智の住まわせてもらっていた離れに向かう
俺じゃなく…付き合いも浅い長野さんを頼ったのには、きっと理由があるはず...
それには櫻井君が関わっているのは明らかだ
そうでなければ
長野さんが自腹を切ってまで智を世話する理由がない...何に...そんなに酷く傷付いたというんだ...
誰が...智に傷をつけやがったんだ...