日座天中殺(乙亥)のチェックポイント

①生家環境の影響。生家が逃げ場になっているか
②空間ナシで現実を作っていると感じられる部分(生きづらさはあるのか)
③既存を受け入れながらその中で新しい世界を作る役割
④結婚生活

 

アンジェラ・アキさんはシンガーソングライター。

日座生月天中殺。年干支(仕事社会)へ向かう比重が強くなる。

主星にキンタロー。さんと同じように、車騎星中殺がある。やはり弱い自我乙が激剋されて、甲として生きる仕掛けが作られている。

 

気が向かう年支巳は、丙(調舒星)剋 庚(牽牛星)←戊(司禄星)となって、中元の庚(牽牛星)に気が集まる。

この牽牛星は月支の車騎星中殺と半会して、日干乙を打つ。何か使命感を持つ仕組みだが、全部主観星なので、それを個人的なレベル(自分が好きなこと)で成し遂げるようになる。マイペースな仕事環境なので、既存枠の中で生きることは難しい。

 

『大学卒業後、そのままワシントンで就職して歌手を目指すことになった。昼間はオフィスで秘書として働き、夜は9時から12時までバーやライブハウスで歌うという二重生活が続いたが、次第にその生活に疑問を持つようになった。そんな時、会社の上司に音楽に賭けてみることを勧められ、覚悟を決めた彼女は仕事をやめた。中華料理店でのアルバイトの傍ら、クラブやライブハウスに出演し、デモテープの作成に務める』

 

調舒星も司禄星も個人色が強い星。調舒星が牽牛星を激剋する姿はプライドは内に隠れて、闘争的な部分や個人的感情が表にでる。個人感情が大義を持った役割と化すので、身勝手にもなるが、時に、自分なりの新しい世界を作る力と才覚を発揮する。

これは甲戌にもあった形。日座天中殺が自分らしく生きるために、調舒星と牽牛星のつながりは、最適な組み合わせに思える。日座天中殺らしい新しい世界を作れる可能性が与えられている。

 

①『父は安藝清、株式会社イーオンの創業者兼代表取締役会長とイーオンホールディングスの元代表取締役社長。父親が日本人で母親がイタリア系アメリカ人のハーフ』

 

日本で生まれ、3歳からピアノを習い、15歳で家族とともにハワイに渡り、4年制の高校に通う。それから26歳までアメリカでの生活が続く。経済的には何不自由ない生活だったとは思うが、それに甘んじることなく、大学卒業後は、仕事を持ち、音楽を目指してからもアルバイトをして、ミュージシャンの道を歩んできた。

 

二世三世の日座天中殺は森泉さんくらいだが、海外で生活した経験を持つ人は散見できる。といって、因果を証明できるほど顕著でもない。

 

アンジェラさんは子供時代に、日本で生まれ育ったにも関わらず、ハーフであることをからかわれたり、異邦人のように扱われ、深く傷ついたことを語っている。

 

『小学生になると授業参観や運動会などの学校行事に、母親が来るのが嫌だったという。「学校中が大変なことになって、校門から入ってきた私の母親を児童全員が見に行く状態。」外国人が珍しかったのか、子ども達は悪気は無かったのかもしれない。だがアンジェラは自分の親が見せ物になっているみたいで、地獄のようだったと語る。』

 

『その頃彼女は、母に対して、『このような嫌な思いをするのは母のせいだ。』
『母が外人でなければ、こんなに嫌な思いをしなくてもよかったのに。』と思っていた』

『私は、幼い頃、母を憎いと思っていた。』

 

と母について語っていたことがある。天極星は子供のころの体験が血肉になって、なかなか切り離すことができない。

ただ、この乙亥に関して言えば、この体験で母への意識が途切れ、壬が空洞になることで学ぶ意欲が生まれ、母以外の指導者との出会いを濃厚にするチャンスが生まれる。生家を切り離して、我が道を歩む意味でも、必要な体験だったのだろう。

起こる出来事には、宿命的な意味が含まれている。

 

②天極星や玉堂星の影響が大きく、乙亥は経験から生まれた気持ちや身につけた知識や情報から空間を作るようになる。甲戌の調舒星よりもずっとリアリティーのある創造力を発揮する。

 

『大学1年生の時にサラ・マクラクランの学園祭ライブを見に行った際、スタジアム内の1万人の聴衆がサラと1対1で向かい合っているのを感じ、自らも音楽を通じて人とつながるために生まれてきた事を確信したという。その経験がきっかけとなり、本格的に音楽活動を開始。』

 

これが天極星が現実から影響されるプラス効果だろう。

甲戌のように自分で現実を作る力は弱いが、受け取ったメッセージから自分を作ることはできる。

どんな宿命にもこうした一瞬はある。特に、日座天中殺のような特殊な宿命においては、歩むべき道につながる道しるべと、それにふさわしい能力が与えられていると考えるべきだろう。

それは決して自分が幸福になる道ではない。それゆえ、その道を追い続けることは簡単なことではなく、それが出来たものだけが手にする、幸福の代わりになる何かがあると信じてみたい。

 

日座天中殺のマイナス面。既存の現実への適応に苦労する。

『人って、とりあえず社会の中に溶け込まないといけない苦しさがあって。で、私にとってそのサンクチュアリっていうのは家だったんです。子供の頃、自分がハーフであることがすごく嫌だったから、家の外っていうのは全部敵地と思っていた。だから「安全地帯の家を出て 鞄を両手に抱えて」っていう言葉がすごくナチュラルに生まれてきた。鞄を両手に抱えてるっていうのは、やっぱり堂々としていなくて、鞄を楯にしていろんなことを避けようとしている様ですよね。その避けようとしているものっていうのは、学校とか仕事場の上司とか恋愛とか結婚とか、いろいろあると思うんだけど、でも人は歩いていかないといけない。』

 

と語っている。ハーフであることをメリットとしている人もいる。時代もあるだろうが、アンジェラさんのこうした感受性は日座天中殺と無縁ではない。生家が安全地帯になる、裏を返せば、そこ以外の既存には属することができない。これは若い時の乙亥の一つの定義にもなる。

 

ただ、天極星の感受性の高さは過剰反応を生む。一つの副作用だが、一種の被害者意識の拡大は根強く残って行く。それもまた、創作に関してはプラスに転じる材料にはなるのだろうが、そのレベルでの創作では、単なる独りよがりで終わる危険もある。いかに乙が主観を脱することができるかが課題になる。

 

彼女の子供時代の差別から傷ついた体験や、アメリカでの生活、挫折体験、失恋、そうしたものすべてが日座天中殺故とは言えなかったとしても、その経験を乗り越えてきた自分自身を題材にして、次世代の人々にメッセージを送ることは、日座天中殺の一つの生き方になると思う。

 

空間のない現実は、傷みも喜びもストレートに反映する。人とは違う感受性ゆえにわかることが、メッセージには込められている。

アンジェラさんの歌に力があるのは、それがアンジェラさんが体験してきた生の現実だからだろう。日座天中殺には、純粋な現実を空間にする能力がある。

 

③安全地帯の家の外で、初めて生き場になったのは、外国だった。

『時代によって全然違うけど、私が一番臨んでいた“輝くもの”っていうのは、偏見のない人生かな。ジャッジされない、ありのままの自分を受け入れてもらえるような世の中にいれば、自分は輝けると思っていた。だから初めてハワイに引っ越したときにそういう世界になって、やっと「自分っていうものは何なんだろう?」って客観的に見れるようになったり、自分を好きになっていくプロセスが始まっていった。』

 

日本で生まれたアンジェラさんにとって外国は、既存枠の外になる。日座天中殺の定義と一致する枠のない世界。そこで自分を見つめることができて、肯定的に自分をとらえることが始まる。

 

こうして音楽で現実を作って行く道が出来、音楽を通じて人とつながる。

アンジェラさんにとってのこのテーマは、自分が作る空間に既存の人たちを招き入れる作業で、乙亥の空間の作り方になる。

アンジェラさんが作る空間は、自分の経験であり、自分が感じてきた人生や人々への切なる思いが込められている。それが独りよがりになるかならないかが大きな分岐点だ。

本当に作りたい歌を作るきっかけは「手紙」を作った時だという。

 

『私は「手紙」っていう曲を通して大きく変わった部分があって。それは何かと言うと、あの曲は自分の実体験から生まれてきた曲なんだけど「自分」っていう主人公と「私」っていうアンジェラ・アキはね、それまでは一緒だった。だから痛くて歌えないとか「あんまり見ないで」っていう部分もあったけど『手紙』ではその2人の自分をスパッと切り離したんです。そしたらめちゃくちゃ自分に踏み込んで書くことが出来て。それが広い世代の人たちに受け入れてもらえて。なので今回のアルバムでは凄く踏み込んでいろんなモノをぶつけられた曲ばかりなんですよ。『手紙』以前はどこか見えない壁でガードしていたと言うか「ごめん、これは私の世界」みたいな。でも今回は自分の中では壁がなくなったって感じてる。』

 

これが乙亥のところで説明した、甲の使い方だと思う。乙だけの世界は、主観色に充ちていて、「ごめん、これは私の世界」になる。自分の痛みは自分の個人的な痛みとなって、そこからは客観的な世界へと展開する道は見えてこない。

 

そこで乙(自分)を空にして、甲(アンジェラ・アキ)へと降りてくる。それによって、乙の痛みを甲が客観的に表現できるようになる。

この「手紙」という歌は、30歳の時に起こった事から生まれている。

 

『母親からアンジェラが30歳の誕生日に、手紙が送られてきた。それは彼女がアメリカに留学していた10代の頃、「私が30歳になったら渡して欲しい」と母親に頼んだ “10代の自分から、30歳の自分” に宛てた手紙だった。彼女自身は、その手紙を書いたことさえ忘れていた。読んでみると、便箋7、8枚に愚痴がビッシリ書かれていたという。だがそれを読んだとき今の自分と昔の自分が繋がり、あの「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」が生まれたのだ。』

 

これこそ、乙から甲にあてた手紙。引き受けた甲がそれを歌にする。

そしてこの手紙を甲に渡したのは母(壬)。壬→甲←乙 となる。

 

④アンジェラさんは二度結婚している。

『私は、結婚するのが初めてではありません。ワシントンD.C.の大学を卒業し、当時とても愛していた人と結婚しました。でも、時間が経つにつれ、二人の気持ちはどんどんすれ違っていき、もうこれ以上続けていくことができなくなりました。そして最終的に離婚をしました。記憶ごと封印してしまいたいくらい、本当に苦しい時期でした。』

 

『2度目の結婚はテレビディレクター。相手はデビュー前から彼女を支えていた音楽ディレクターで「彼は世界一の味方であり、生きていく勇気をくれる存在です」。また、「私が今まで経験してきた事や、そこから生まれてくる音楽を誰よりも理解して、サポートしてくれた人です」と綴り、存在の大きさを報告した。』

 

天極星(死人のエネルギー)で蔦類と言われる乙亥には、頼れる存在は不可欠。キンタロー。さんはディレクターとの結婚で、仕事の協力者でもあった。アンジェラさんのご主人も同業の人。結婚して、仕事を辞めて、アンジェラさんのマネージャーとして浮木を支えている。

 

夫の場所にある壬は母の気。乙亥の結婚相手は、「母のように自分を守って頼れる人」が理想。その人が自分が甲(アンジェラ・アキ)である事を生じ続けてくれる。

これは唯一ではないが、乙亥の結婚の一つの条件としてもいいように思う。

 

乙亥の結婚相手に関しては、外国人や年齢差などという日座天中殺の定説ではなく、現実を生きる自分(甲)を育ててくれる人、がいいように思える。

 

2012年男の子を出産。『アンジェラさんは出産後わずか3ヶ月で復帰を果たしており、4ヶ月後には6枚目となるオリジナルアルバムも発売するなど精力的に活動』。

甲戌を含めて、これまでの日座天中殺の傾向として、結婚からの仕事復帰が早いことがあげられる。仕事へ向かうエネルギーを閉ざすことは命取りになる。

 

そして、2014年には、日本での活動を止めて、アメリカ留学を決める。

『アンジェラは、かねてより進めていたブロードウェイ・ミュージカルプロジェクトに専念するために家族とともに日本を離れ、2014年秋頃からアメリカの音楽大学に留学するとのこと。彼女は「中途半端な状態に自分を置きたくありませんでした。自分の夢を実現させるためには、これからの数年間、新しい環境で勉強に集中し創作活動に打ち込むべきだと考えました」と説明している。』

 

経験と知識という乙亥の構造通り、経験から得られる時代を終えて、新たに本元の壬(玉堂星)を稼働して、音楽の勉強を始める。

それはそれとして、家庭という新しい枠組みを日本で作ろうと思うと、それは既存をはみ出すことになる(うまく生活できない)。アメリカへの移住は、既存枠を捨てて、そこで自分たちの枠組みを作ろうとすることを意味する。

日座天中殺の結婚としては少ない選択肢の中での有力な方法であることは間違いないが・・・

 

 

要の丙庚に夫と子供を入れて家庭を作るとして、それは間違いなく、仕事能力の減額につながる。夫を中殺「辛」にして、子供を天干「丁」に置くことはできるが、夫と子供の現実の居場所はなくなる。

 

アメリカに行ったとしても、子供ができると、仕事と家庭を両立することは非常に難しくなる。夫がどこまでそれを引き受けて、この宿命の丙と庚を自分が使うことができるか、注目していきたいと思う。