これまで、天中殺は「空間がなくて時間だけの世界」と定義されてきた。
その理論は、天中殺の原理を明確に定義して、わかりやすいものだった。
本来なら、そのまま宿命天中殺にも応用できるはずだが、宿命天中殺では、陰占を陽占に変換するという作業が入るために、「パイプ(ホース)」という概念を使って説明している。

 

なぜ、運勢天中殺の時は、空間と時間という概念を使い、宿命天中殺の時は、パイプ・ホース論になるのか、その説明がないので、わからないが、ここでは、「パイプが洩れる」ことが宿命天中殺現象と理解することにする。

例として、日干が外へ向けて(年干支)エネルギーを燃焼する時のことが書かれている。

『平均的通常の場合は霊気放出のパイプが大なり小なりは別として、完全に一貫したホースとなっていると思えばよい。そのため、外側の事象(社会現象)への対応として、難なくスムーズな放出がなされる』

日干が東の星や年支の十二大従星を燃焼させる時の話。この時に、日干と年干支をつなぐパイプラインがあると想定している。
それを使って生年天中殺の説明が続く。

『生年天中殺の場合、ホースに穴があき、洩れる状況があると考えればよいであろう。それゆえに、出すエネルギーが対社会に放散されることになるのである。』

「洩れる」現象の一例として、生年天中殺の宗教家や実業家を取り上げて説明している。

『高僧という立場においても大いにエネルギーを稼働させるが、又、一面画家であったり、陶芸家であったり、運動家であったりする。多面的活動家としての面目が躍如となるのである』

『事業家の人にも、大変な実業家でありながら、一面宗教家であり、一面教育者的活動をしたり、多々社会的に重要な役割を果すといった、放出フル回転操業の人物も出てくるわけである』

生年天中殺のパイプが洩れていることによって、一芸一学に秀でていながら、エネルギッシュに多芸多才ぶりを発揮するというプラス面が語られている。
その条件として、

『こうした成功者に部類する人たちには、殆ど能力・精神といった面においては、親の影響を受けていない。或る意味ではゴーイングマイウェイとする世評をうけかねない自己道追及の形である』

これは、昨日でてきた、自分の空間を作って成功する生き方になる。

「ゴーイングマイウェイとする世評」というのは、高尾先生独特の表現だが、「自分勝手」と置き換えても良い。好き勝手に生きて、それを肯定させるだけの能力が与えられているということだ。

宿命の公正さを信じれば、これはどの宿命天中殺にも与えられているはずだ。

パイプからエネルギーが洩れる。そのために、社会活動(仕事)の他に、高尚な趣味や精神分野での社会活動などが例に挙げられている。
洩れる=多方面の活動という考え方のようだ。

多方面の精神分野へ向かうことは、中殺された干支の不完全燃焼が仕事の満足度を満たさないためとも考えられる。

 

宗教であれ、芸能であれ、それが仕事である以上、現実を切り離すことはできない。精神を病んだ芸能人で、芸能界という自由空間を得ながらも、仕事としての一面では、対応に苦慮して、その面での現実を超えられずに、病んでしまったと思われるケースは少なからずあった。

宿命天中殺にもそれは言えることで、現実とは別の精神領域を持つことで、自分を満たすことを可能にして、バランスをとっている意味はあると思う。

 

それは洩れることから生じる能力ではあるが、洩れることの意味は、もっと他にもあると思える。