「宝島」が直木賞を受賞した。「琉球処分」も読んだ方がいいぞ
戦後の沖縄の問題を描いた「宝島」が直木賞を受賞した。
作者は東京生まれ(?)の真藤順丈さん。この人の本は読んだことがない。テレビのインタビューに好感し、アマゾンに注文。期待して読もうと思う。
ちょうど昨年暮れに、長年読んでおこうと思っていた「琉球処分 上下」を読了し、「武器を持たない沖縄」という「国」が明治維新の「近代日本」に事実上、併合されていく様をつらつら読んでいて、沖縄の戸惑い、逡巡、迷走、あたふた……最終的に「琉球王」も強制的に東京にまわせられ、精神的な主を失って空っぽになった島が何の抵抗もできずに併呑される、というのをいらだちながら読んでいたから、ああ、「国が滅びる」というのはこういうことか、たとえそれが一見、平和的に見えようとも、生身のニンゲンたちに重く破滅的な運命を強いる、と思ったから、「宝島」にはすっごく興味がある。
ちなみに「宝島」は沖縄、東京などでものすごい売れ行きとか。
「琉球処分」の作者は、沖縄生まれの芥川賞受賞者で川端康成賞も受けている大城立裕さん。やや上の年代だというのを感じる作風かな。ぼくらの若い頃の感覚に近いと思うのは目取真俊さんかな。
このひとも沖縄出身の芥川賞作家。「ドジン」とか機動隊に言われた人だ。
ところで、「宝島」の作者のインタビュー記事、なんとサンケイのウェブ版にこうあった。
「ニュース、ルポルタージュでは伝え切れない、小説の形で読者の心を響かせられるものが書ければ、沖縄出身でない自分でも普遍性を持たせられるのでは。沖縄の戦後史を多くの人に知ってもらいたかった」
産経もこういう記事を載せて、ちゃんとした思いを伝えれば、そんなにあせって右翼的なイデオロギーをまき散らさなくとも、共感を呼ぶことができるだろうに……。
つまり編集の度量の問題だね。偏見に満ちた狭量で偏屈で一方的に断罪するようなことは、ぼくはきらいだね。
ってなことで「琉球処分」を読むと、当時、中国の影響力にすがって明治日本を牽制しようとした沖縄の非暴力の抵抗、潮流があったこともわかって、いまの様々な「沖縄への差別的な中傷の根源的な悲しさ」を、強烈に思う。