東京、大手町にある「星のや東京」での日本酒セミナ―付きプレミアム宿泊プランを
全面プロデュースさせていただきましたが、
そのレポート2回目は、日本酒ペアリングディナーについて。

夕食の、発酵×フレンチをテーマにした
「Nipponキュイジーヌ ~発酵~」の夏メニュー、
浜田 統之料理長が織りなすコース料理に合わせて、
日本酒をセレクトさせていただきましたよ。



かんずり、黒みりん、煎り酒、赤酢、魚醤、塩麹など…
和の発酵調味料を巧みに使用したフレンチと、
バリエーション豊富な日本酒の掛け合わせで変化する楽しさを、
感じていただければ…との想いで、一夜限りの日本酒ペアリング、
事前に検証もして、いざ本番!!



乾杯酒は、七賢 -SHICHIKEN SPARKLING SAKE EXPRESSION 2006 
(山梨県 山梨銘醸)ジャン=フランソワ・ミレー×七賢



『時間の経過とともに表情が変わるこの酒の魅力は、
あくなき探究を続けるミレーの姿と重なる。』と語る、醸造責任者の北原亮庫氏。

山梨県立美術館に所蔵されているフランソワの作品「種をまく人」をラベルに採用し、
そのイメージを味わいにも反映させたといいます。

2006年に醸造された大吟醸古酒を仕込み水の一部に使用し、
白州の水の清らかさをぞんぶんに生かしたスパークリング サケ。
2種類の酵母で味わいの奥深さそして幅広さを表現した、
大地のエネルギーを感じる一本です。

懸命に生きる農民たちの姿や自然の風景を力強く描いた
「種をまく人」にように力強く、芯のある印象。

これは時間の経過や温度変化と共に、
味わいがどう変化していくかを感じていただきたく、
ゆっくり時間をかけて楽しんでいただきました。

そして、一皿目は「双」、鰻料理です。



びくに見立てた籠を開けると…



冷と温、2種類の鰻料理。



こちらには、 IWA5 アッサンブラージュ3(富山県 白岩)を合わせました。



ドンペリの製造責任者だったリシャール・ジョフロワ氏がアッサンブラージュした日本酒。
力強く、 深みのある余韻が楽しめます。

IWA 5のプロジェクトは、実験的な工程を繰り返し、進化を続けているとのこと。

非常に繊細で絶妙なバランスの上に、アッサンブラージュ1と2からの教訓を活かしながら、
“遊び”のエッセンスを加えた、とジョフロワ氏。



冷たい鰻の蒲焼と合わせると、きゅうりの爽やかさ、
シェーブルチーズ、サワーブレッドの酸味引き立ちさっぱりとした余韻。

温かい鰻のタルトと合わせると、タレの甘味、
大徳寺納豆の旨味が引き立ち鰻の脂と合わさって乳化し、一つにまとまる印象。

さらに、トリュフの香りがより引き立ち、体中をその香りが駆け巡っているよう!!

私が言うのも何ですが、絶妙なペアリングでした音譜

2皿目は「石」(5つの意思) 
フレンチのミニコースをイメージし、前菜からスープ、メイン、デザートまで…をこの一皿に。



こちらには、開壜十里香 臥龍梅 純米大吟醸を。 (静岡県 三和酒造)



兵庫県産の愛山を使用していますが、
これがそれぞれの料理にぴったりマッチしたんです!

一つ一つ石の台座を持って、料理を口まで運びます。



日本酒と合わせると、かんぱちのルーロは、
大根の糠漬け、ピクルス、梅干しの酸味や程よい苦みが合わさって爽やかに、

ガスパチョ(ほおずきの実をイメージ)は、
塩麹の旨味とパイの香ばしい穀物感が広がり、

サザエは、肝の苦みと見事なマッチ、

タコのメルゲーズは、かんずりの辛さがぐんと引き立ち、

ずんだ餅は、甘露煮の黒みりんの甘じょっぱさとマッチして…。



臥龍梅の懐の深さを実感しました音譜


3皿目は「綾」、鯖の一品。 

こちらには、DOBUROKU ホップどぶろく03 (秋田県 稲とアガベ)を。



秋田県産 ササニシキ (精米歩合90%)を使用し、仕込の際にホップを入れています。



合わせてみると、どぶろくがソースのような役割となり、
どぶろくのホップの香りとヨーグルトのような優しい酸味が、
煎り酢の鯖やロゼワインで煮込んだ梅の酸味、
玉ねぎと赤パプリカ、ポワロの甘味と相まって、優しい味わいに。



ラビゴットソースには隠し味に昆布も入っていて、旨味の相乗効果も楽しいですね音譜

4皿目は「尽」、鮎の一皿。 
こちらには、賀茂金秀 辛口夏純 (広島県 金光酒造)を。



鮎は一晩かけてコンフィにしており、骨まで食べられる柔らかさに。
外はパリッ、中はふわっと食感。



この波紋のような柄は、お皿の絵ではなく、赤しそパウダーと山椒パウダーなんです。

頭は何もつけずに、内臓のある真ん中は赤しそパウダーを、
尾っぽは山椒パウダーで。赤酢とスイカジュースでさっぱり口直しに。



賀茂金秀の、ライムやレモンのような柑橘系の香りと酸味がしっかり爽やかな味わいと、
頭や肝の苦みにマッチして、
香ばしく軽く揚げた衣がより軽やかに感じました。

そしてメインは「繁」、岩牡蠣と牛ヒレ肉の一皿。
こちらには、 Q/A つちをきく 純米吟醸 (兵庫県 三宅酒造)を。



まだ東京で殆ど知られていない銘柄ですが、1819(文政2)年、加西市に創業。

地元の九会地区で栽培した山田錦と、同水系の伏流水、
万願寺川水系の水を使って造りをしています。

現社長でもある6代目蔵元の父新一郎さん(62)から
2020年、長女文佳さんが引き継ぎ7代目に。

銘柄は、土壌や気候などに対する「問い掛け」や「対話」を意味する、
クエスチョンの「Q」、できた日本酒がアンサーとなる「A」のQ/Aと、
地元・九会(くえ)地区の名前を掛けています。

「菊日本」がメインブランドですが、この新しい「つちをきく」には、
「土地」に対するこだわりの思いが込められています。



こちらの料理は、牡蠣と牛ヒレ肉(子牛と牡蠣の料理が
古典フレンチにあることからヒントを得て)
赤ワインベースのソースとオイスターソースを合わせた一皿。

アマランサスとエシャロットのコンフィにベアルネーズソースがかけられていて、
日本酒と合わせると、磯の香りがより広がり、ベアルネーズソースとの相性も抜群!!



昆布&竹炭入りのパン&ソースに合わせても、また美味しかったですよラブラブ



デザートは2皿出ましたが、まずは「爽」、小夏の一皿。
こちらには、飛露喜 純米吟醸 (福島県 廣木酒造本店)を。



ヨーグルトン(大分のお酒)入りエスプーマに、
小夏シロップの飴細工が乗っていて、スプーンで砕いていただきます。



飛露喜と合わせると、柑橘系の香り同士の相乗効果で、
より酸味がより増し、サッパリとした後口に。

また、稲とアガベとも合わせましたが、ホップの香りとヨーグルトの風味が増して、
甘酸っぱさがまた心地よく、違った角度からのペアリングを楽しんでもらいました。

2皿目のデザートは「豊」、桃の一皿。
こちらには、8泡美人 アドベリーフレーバー (滋賀県 竹内酒造)を。



ボイセンベリーは日本でほぼ栽培されておらず、
一年間にたった2週間しか収穫できない上、
収穫後、たった1日しかもたないので市場に出回らないことから
「幻の果実」と呼ばれています。

滋賀県の安曇川(あどがわ)が産地なので、アドベリーと命名、爽やかな酸味が魅力。
収穫後すぐに急速冷凍し、風味と味をぎゅっと閉じ込め、
まるごと純米酒に漬け込んだスパークリングのリキュール。





デザートと合わせると、紅茶のような風味、ベリーの酸味や渋味が感じられて、
甘さが抑えられる大人のデザートに音譜

また臥龍梅と合わせてみると、フルーティーな香り同士が馴染んで桃の甘さが引き立ち、

稲とアガベとのペアリングは、桃の甘さや風味がミルキーに、
ネクターのようなテクスチャーに変化。

一つのお皿で数種類のお酒を合わせてみることで、
違ったアプローチのペアリングが楽しめることも体感いただきました。



〆のお茶は、黒文字茶を。




こちらは、お抹茶。


一つ一つのペアリングや、お酒の解説をしていきながら

皆様にお楽しみいただきました。




今回、お酒のセレクトから企画しましたが、

こうしてじっくり向き合い、解説聞きながら

ペアリングを楽しむのは初めて、という方も多く、貴重な経験いただけたようです音譜


私としても、素晴らしいお料理、素敵な空間で、

日本酒を合わせ楽しんでもらえる機会をいただけて、光栄でした


ホッと一息しつつ、そのあとは余力のある皆さんと、

お茶の間ラウンジで軽く二次会。


仕事ではありつつも、贅沢な時間が過ぎていきました…。

二日目につづくニコ