バブル時代から
シティホテルに
恋人たちが集まるのは
バレンタインデーと
クリスマスイブ

不景気だなんだと
いっても、気持ちとお金
に余裕があれば
特別な日は、特別な演出
そう思うのは当然だ



私は残念ながら
大切な日に利用する機会はあまりなかったが

高級ホテルといわれる
場所で過ごす時間は、
それだけで特別感がある



都内の某高級ホテルは
家族とも何度か訪れる所

一流という独特の落ち着いた雰囲気が、小さな
緊張感をもたせてくれる

その空間に相応しい自分でありたいと
容姿、立ち振る舞いを
ワンランク上にする

それでいて
勝手知ったる場所という余裕も忘れない



安い居酒屋も大好きだが
年に数回は、その場所に
いるだけで高揚する
ようなお店に足を運ぶ

ある程度年齢を重ねた
大人であれば、とても
大切なことだと私は思う




昨年、『彼』とも
短く濃密な時間を
何度か過ごした

外人客が多いせいか
長身で均整のとれた
身体が横たわっても
空間が有り余っている

どこにいても窮屈さを
感じない広い部屋で
『彼』の短めのバスローブだけがアンバランスで
思わず笑ってしまった

館内のレストランも
勿論、最高によかったが
私は、ルームサービスを心ゆくまで楽しむのが
好きだった

閉ざされた完璧な空間
誰にも邪魔されず
二人っきりの時間を
夜が明けるまで堪能する



『彼』が5時前に
部屋を出ていく

厚いドアが閉まると
私はいつも“からっぽ”
になっていた




最後に訪れたのは
私の転勤が決まり、職場
を離れる前の最後の週末


何も変わらないよ


そう言ってたのにね…




あのホテルには
まだ行きたくない

まだ
残っているから