扉の向こうへ お江戸編 最終話 | 蒼のエルフの庭

蒼のエルフの庭

蒼の方への愛を叫んでおります
主に腐小説中心の妄想部屋でございます
ご理解いただける方のみお入りください
(男性の方のご入室はお断りいたします)

お江戸ツアーもあと残すのは

皆様がお選びになった和紙に印を描くことと

江戸の町の散策

 

若智屋の客間には

絵具を溶かす皿と筆が用意されていて

すっかり準備が整っています

 

そこに朝餉を食べ終えたお客様を引き連れて

翔旦那が裏木戸を抜けてきました

 

「智、皆様お見えだよ」

 

その声を聞いて飛び出してきたのは和也

 

「皆様、お待ちしておりました

 どうぞお上がりください」

 

若主人が出てくると思っていた翔旦那

訝しげな顔で「智は?」と小声で尋ねる

 

「兄さんは昼餉の仕込みです

 私も直ぐにそっちに行きます」

 

「それなら私だろう?」

 

「何を言ってるんです

 翔旦那が出来るのは摘まみ食いだけでしょ」

 

「でも、絵具の扱い方は ・・・」

 

「心配いりません

 そちらは蒼灯殿が引き受けてくれました」

 

「じゃあ、私は何をすれば ・・・」

 

「蒼灯殿の手伝いです」

 

ぴしゃりと言われ

苦虫を潰したような顔で

小さくため息をついた

 

「こら、何と言う顔をしておるんじゃ

 はよう、上がって来ぬか」

 

廊下に顔を出した翁が

怖い顔で若主人を手招きした

 

部屋に入ると

蒼灯が絵具を溶かす水の支度を終えた所だった

 

「名前が書かれた紙の前に座ってくれ

 夕べ、若ちゃんが一人一人の名を書いて

 和紙と絵具の所に置いてくれた

 絵具も粉にして溶けやすくしてあるから

 すぐに印を書くことが出来る

 溶かし方は教えるよ」

 

「思い思いの印を描き

 それが終わった人から

 江戸の町の散策に出かけておくれ

 今日の付き添いは翔旦那と千葉屋と松乃屋だ」

 

蒼灯と翁から説明を受けて

皆様、席に着き絵具を溶かし印を書いた後

翔旦那を先頭にして

江戸の町の散策に出かけて行った

 

若ちゃんが作る昼餉

今日は山菜おこわと豆腐の汁物

野菜の煮つけと香の物

 

「蒼灯殿、ありがとうございました

 とても助かりました」

 

「昨日、絵付けをしたからなのか

 上手に印を描いてたよ

 教えることは何もなかった

 そうだ上ちゃんががっかりしてたよ

 若ちゃんの顔が見れないと」

 

言いながらくすくす笑う蒼灯

相変わらずの1,2も智の翔旦那だと

微笑ましく思えるようだ

 

「遠くに行くわけでもあるまいし(笑)

 彼奴は顔が聞くからな

 江戸の町の案内に打ってつけなんだよ」

 

「そうかい?

 お前さんの方が ・・・」

 

言いかけると

後から来た翁に

 

「此奴が一緒だと

 すぐに誰彼に捉まって

 案内どころではなくなるからな

 翔旦那が向いているんだよ」

 

人の良い若主人

姿を見れば誰彼となく寄ってきて

話を聞いてくれと頼まれる

それよりは若主人が居ない方が

不愛想な翔旦那が適任

 

「ああ、なるほど

 それもそうだな」

 

昼餉の支度が終わった頃

翔旦那たちが戻ってきた

 

先ほどの客間には

昼餉の膳が用意されていた

 

「皆様、お帰りなさいませ

 江戸の町を楽しんで頂けましたか?

 心づくしの昼餉を用意いたしましたので

 お召し上がりください」

 

若主人が用意した昼餉を頂いた後

翔旦那と若主人からご挨拶をさせていただきます

 

「遥か先の江戸から来てくださった皆様

 二日間と言う短い間でしたが

 楽しい時を過ごすことが出来き

 私を始め智も翁も蒼灯殿

 和さんに千葉屋に松乃屋も

 嬉しく思っております

 このような貴重な経験をさせていただき

 心より御礼申し上げます」

 

「楽しんで頂こうと思いながら

 私たちが一番楽しんでいたようにも思い

 少々、申し訳ないのだが

 懐かしい未来(先)の友人の匂いを

 運んでくれた皆に感謝しています

 ありがとう

 ここでの出来事は消えることなく

 皆の中に残ると思うから

 時々で良いから

 思い出してくれたら嬉しいよ」

 

二人の挨拶の後

蒼灯がこの後の事を説明した

 

「名残惜しいのは

 この部屋にいる全員が思うことだが

 帰る時間が迫ってきているので

 そろそろ月見亭に移動する

 月見亭で着替えの後

 昨日と同じ場所に扉が開くので

 そこから帰って頂きます

 それじゃあ、移動しようか」

 

縁側の廊下に和也と翁が座り

皆様をお見送りした

 

 

着替えの後、石橋前の扉に向かう前に

一人ずつ握手をして送り出す二人

 

「どうぞお気をつけて」

 

扉前で蒼灯が声を掛ける

 

「豆屋、聴こえるか?

 皆様、扉を潜られるが

 支度は出来ているか?」

 

「ああ、15人の皆さんが拵えた器

 身に着けていた小物に絵具

 全て支度済みだ

 お一人お一人にお渡しするよ」

 

話を終えて振り向いた蒼灯が

お江戸ツアーの皆様を

豆屋が待つ江戸に続く扉を開けた

 

 

 

 

 

 

<おしまい>

 

 

お江戸編、無事着地?

どうでしょうか

最後は急ぎ足になってしまい

何とか着地出来た感は否めませんね

11話と言う長い話のわりに

中身がなかったと反省しております

申し訳ありませんが

これが精一杯です

楽しい時間を過ごして頂けたなら幸いです

 

お付き合いありがとうございました

 

 

 

次は未来編となります

 

 

蒼のエルフ