Tell me why 12 | 蒼のエルフの庭

蒼のエルフの庭

蒼の方への愛を叫んでおります
主に腐小説中心の妄想部屋でございます
ご理解いただける方のみお入りください
(男性の方のご入室はお断りいたします)

館長と話した後

もう一度、絵と向き合った

そして自分の心と話をする

 

何の約束もしなかった彼

一定の距離を保ち

自ら引いた線を越えることはなかった

いくら俺がその線を越えようと足搔いても

彼のダンスのように

軽やかにかわされて

近づいたつもりでいただけで

何も知らなかった

 

見つめていた夢の先は何処?

好きだったものは何?

嫌いなものは?

どこに住んでた?

 

考えたら何も知らなかったし

教えてくれなかった ・・・

 

そして ・・・ 俺も話していない

 

見つめていた夢の先も

何が好きで何が嫌いかも

誕生日する伝えていなかった

 

ただ、彼のダンスが好きだと

それだけしか伝えられなかったんだ 

 

 

置いて行かれたのではなく

彼は彼の夢に向かって

一人で歩き始めたんだ

 

自分の夢すら分かってない俺が

彼の横に並べるはずもない

 

そしてあの別れの日

俺はダンスから決別することを伝えてた

それを彼は間違えることなく受け取ったのだと

 

一年近く経って

漸く気が付いた

 

俺はどうしたい?

彼を探し出して

同じ夢を見たい?

 

同じ夢は見れない

それなら ・・・

彼を支えられる存在になりたい

 

絶望の蒼だったはずなのに

深海に光が射し込むように

一筋の輝く蒼が見えた気がした

 

 

「野良君、良い顔になった

 館長さんの所に行く?」

 

存在を消していてくれたピ~ちゃんが

俺の後ろに立って

肩に手を置いた

 

「ああ、館長に会いに行く

 特別な絵を見せてくれるって」

 

そう話すとピ~ちゃんは

目を大きく見開いて

信じられないって顔をした

 

「どうしたの?」

 

「俺の友人も ・・・

 同じような場面に遭遇して

 特別な絵を見せて貰えたんだ

 俺も見せて貰えるかな?」

 

友人ってドイツ留学してる

大ちゃんの教え子だっけ

 

「貰えるよ

 館長さんそこまで意地悪じゃない」

 

「よかった~

 彼奴も留学する前に見せて貰ったんだ」

 

「それって大ちゃんの絵?」

 

「違うよ

 「蒼の魔術師」

 大野画伯の絵だと思う

 特別な絵ってことは ・・・

 未公開の絵の可能性がある」

 

かなり興奮してるのか

声が弾みすぎて震えてる ・・・

 

「そんなことある?」

 

「ある、彼奴も未公開の絵を見せて貰ったって」

 

そうなんだ ・・・

どんな絵なんだろう ・・・

ちょっと興味が湧いてきた

 

「ピ~ちゃん ありがとう

 この絵に会わせてくれて

 ずっと燻ってた想いに向き合えた

 うん、凄い絵だよ ・・・」

 

心から笑える気がする

 

誰のせいでもない

自分が鬱々として立ち止まってただけ

瞳を閉じたまま

開いてるつもりでいた ・・・

 

 

あの日彼が伝えてくれた言葉の中には

ちゃんと俺が存在してた

切り捨てたわけでもなく

置いていった訳でもない

 

連れて行って欲しいとも

付いて行きたいとも

願わなかったのは俺 

 

「ちょっとだけ待っててくれる」

 

「うん、良いけど」

 

「連絡したい人がいるんだ」

 

優しい言葉から逃げた

それがどんなに失礼な事か分かってて

 

 

館長に会う前に

無門さんに連絡をした

 

「はい、大野です」

 

「御無沙汰してます櫻井です」

 

「久しぶりだね

 迷いは消えたみたいだね」

 

不思議な人だ

声を聴いただけでホッとした

 

「はい ・・・ 消えました

 大ちゃんの『蒼』の絵を見て」

 

「鮫島さんの美術館にいるんだ」

 

「御存じなんですか?」

 

「知ってるよ

 あそこのランチは美味しいよね ・・・

 って、その前に君の決断を聞かせて」

 

「就職先の事なんですが

 鮫島さんの所で働こうと思います」

 

「そう来たか ・・・

 後学のためにどうやって知り合えたの?」

 

ちょっと悔しそうな声に

こんな俺に期待してくれてたと思うと

嬉しくて胸がじ~んとする

 

温かい人たちばかりなんだ ・・・

 

「蒼の隠れ家のマスターの所です」

 

「なるほど ・・・ それが最善の道だったって事だ

 就職先が決まっておめでとう

 翔にも伝えるよ」

 

「すみません、色々心配して貰ったのに

 ご期待に添えずに ・・・」

 

「どうして?

 君の内定はこの先も続いてるよ

 鮫島さんの所で修行して

 是非、friendshipに転職してください

 必ずその時が来るから(笑)」

 

それってやっぱり

館長と鮫ちゃんは関係があるのかな?

 

「それはお祖父さんとの関係ですか?」

 

「館長が説明してくれるはずだよ

 でも、僕たちも祖父ちゃんも

 何もしていないから

 それは信じてね」

 

「それは信じてます」

 

彼らはあの日以降

連絡を絶った

『鍵は俺の手の中にある』と言って

この人たちは嘘はつかない

全ては俺に委ねてくれてた

 

「本当に良かった ・・・

 あの絵が助けてくれたんだね」

 

「はい 今から

 館長と話をしてきます」

 

「頑張って!

 また会えるから

 その時を楽しみにしてるね」

 

「ありがとうございました」

 

心から祝ってくれる声に励まされて

館長に会いに行く

 

 

 

 

 

<続きます>