I think I love you 83(最終話) | 蒼のエルフの庭

蒼のエルフの庭

蒼の方への愛を叫んでおります
主に腐小説中心の妄想部屋でございます
ご理解いただける方のみお入りください
(男性の方のご入室はお断りいたします)

結構遅くまで飲んでいたので

起きたのは朝と言うには遅い時間

特別なお客様は既に松岡邸を後にしていて

さとち君はかなり寂しそうに見えた

「大丈夫?」って声を掛けたら

「また、じぇったいに あえるの!

 だからだいじょうぶなの」

そう言って笑みを浮かべた

その姿が健気で抱きしめたくなったけど

お兄ちゃんが傍にいたので

遠慮することにした

 

彼(兄さん)は昨日の夜と同じで

テラスの椅子に腰かけて

ぼんやりしてた

 

「おはよう、寝坊助君」

椅子に座ったまま俺を見上げて苦笑い

 

「おはようございます

 兄さん早いですね」

 

「ああ、3組の特別なお客様を見送った

 なかなか会える方たちじゃないからな」

 

そうだ、若ちゃんと上ちゃん

二人の父と子ども達とは

二度と会えないかもしれないのだ ・・・

ん?社長と副社長って ・・・

何処から来てるんだ?

あの二人だけは謎だった

 

「起こしてくださいよ!」

 

「起こしたよ

 『もうのめな~い』って 

 寝言を言って、また寝た

 だから諦めた」

 

面目ない ・・・

朝は苦手なんだよな ・・・

 

「すみません ・・・」

 

返す言葉もない ・・・

 

「ふふ ・・・ 朝飯食った?」

 

彼は可笑しそうに笑って

そのまま話題を変えてくれた

 

「まだです ・・・」

 

「早く食べて来ないと

 片付けられちゃうぞ」

 

この時間に朝ご飯が残ってるんだろうか?

もうない気がするけど ・・・

 

「もう無いんじゃ ・・・」

 

「あるよ、俺も珈琲飲みたいから

 一緒に食べるか」

 

珍しい、こんな優しい彼(兄さん)は初めて

 

「雨降りますかね ・・・」

 

ぼそっと呟くと

空を見上げて

 

「雲一つないのに?」

 

大丈夫かって心配そうな表情を浮かべた

彼が言う通り

雲一つない秋晴れで

さとち君の瞳の色のような空が広がってた

 

俺が言いたかったのはちょっと違うけど(笑)

 

食堂に行くと、ちゃんと朝食は用意されていて

ソラスの3人が揃って珈琲を飲んでた

(王子は姿が見えなかった)

 

「おはよう、野良君!

 ぐっすり眠れた?」

 

風ちゃんが手を挙げて声を掛けてくれる

 

「はい、ぐっすり!(笑)

 あの ・・・ 昨日失礼なことは ・・・」

 

正直、最後の方はあまり憶えていない

グデングデンに寄った俺を

支えながら部屋に連れて行ってくれたのは

彼(兄さん)と風ちゃんだったような ・・・

 

「う~ん 俺もあんま憶えてないけど ・・・

 楽しそうだったよな?」 

 

無門さんとカンちゃんが大きく頷いて

「楽しいお酒だった」と笑って答えてくれた

それを聞いてホッとした

取り敢えず失態は犯していないようだ

 

「今日は大学に行くの?」

 

珈琲カップを手に持って

俺達の前に座る風ちゃん

 

「休みなので

 家に帰ります」

 

「あ~ そうなんだ

 兄さんも?」

 

「ああ、家に帰って寝る!」

即答する兄さん

 

この時は知らなかった ・・・

彼の言葉に嘘はないと思ってたから

 

「忙しかったから疲れてるよな」

 

「流石に疲れたな ・・・

 うん、だけどすご~く楽しかった」

 

「参加者全員楽しかったと言って貰えたから

 参加して良かっただろ?」

 

これは俺達への質問の様なので

俺も大きく頷いて

 

「とても楽しかったです

 でも、ステージに立つのは

 この先ないかな ・・・」

 

俺がステージに立つのはこれが最後

そのつもりで臨んだ

 

「寂しい事を言うねぇ

 また歌えばいいじゃん」

 

「皆さんに助けてもらって

 ステージに立てましたが

 元々、センスがないので

 見る方に専念します」

 

彼が歌い踊る姿を

この先もずっと見ていたい

それが一番の願いかな

 

「絶対はないよ

 この先、また機会が巡ってくる

  その時は参加したらいい」

 

「それはそうですね

 機会があればですけど」

 

「兄さん、またやろうな」

 

「ああ、機会があればな」

 

風ちゃんの言葉に笑顔で返す彼

踊りを辞めるわけではないと聞いて

ちょっとホッとした 

 

遅くに起きたのに

食堂にはまだ沢山に人がいて

結構な賑わいを見せていた

 

朝食を終えた後

荷物を手に玄関に向かうと

さとち君たちが見送りに出てくれていた

 

「のらくん たのちいじかんを

 ありがとう!

 また、あそびにきちぇね」

 

「ああ、また会いに来るね」

 

また会える日がくるだろうから

その日が来るのを楽しみに待つことにする

 

さとち君は満面の笑みを浮かべて

俺と彼に抱きついて

手を振って見送ってくれた

 

彼と並んで松岡邸の長い坂を下っていく

まるで夢の世界から

現実の世界に戻っていく感覚

 

「下界に降りる感じがする(笑)」

 

こんなことを言うと

笑われるかなと思いながら

口に出していた

 

「松岡邸は夢の国だから

 明日ここに来ても

 同じ景色は見えない ・・・

 野良君の言ってることは間違ってないな」

 

「夢の後か ・・・」

 

そう考えると寂しくなってくる

 

「ダンスのダの字も知らなかったお前が

 見事にステージに立った

 よく頑張ったな ・・・

 俺に踊る楽しさを思い出させてくれたのは

 間違いなく野良君だよ

 ありがとう ・・・ 感謝してる」

 

改まってお礼を言われると

これが最後なのかと

胸騒ぎがしてくる

 

この先もずっと隣に居たいのに ・・・

 

「それは俺の方です

 無事にステージに立てたのも

 ダンスの楽しさを知ったのも

 全部兄さんのお陰です 

 これからも、ダンスや音楽を

 楽しみたいと思ってます」

 

「そうなの(笑)

 じゃあ、これからも続けて」

 

「はい、また一緒に踊ってくれますか?」

 

恐る恐る聞いてみたら

彼は笑みを浮かべながら

 

「勿論、また一緒に踊ろう」

 

そう言ってくれたから

これが最後じゃないと安心したんだ 

 

「気を付けて帰れよ!

 お疲れさん」

 

いつものように

ふにゃっとした笑みを浮かべ

手を挙げて

駅のホームで別れた

 

 

 

その日から ・・・

彼は俺の前から姿を消した ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<第一部終>