花の香りと共に 15 | 蒼のエルフの庭

蒼のエルフの庭

蒼の方への愛を叫んでおります
主に腐小説中心の妄想部屋でございます
ご理解いただける方のみお入りください
(男性の方のご入室はお断りいたします)

昼餉を食べた後

さとち御一行様は蒼灯の家に移動した

 

露地門を抜けると見慣れた庭先

どう考えても、ここは豆屋さんだと思うサクちゃん

 

「雑貨屋さん、ここって豆屋さんですよね?」

 

家の中で違うのは

床が畳で調度品もこの時代の物

でも家の作りはそのままだ

 

「うん、そうだよ」

 

「もしかして豆屋さんが蒼灯って知ってるんですか?」

 

雑貨屋さんにだけ聞こえるような小さい声で聞いてみた

 

「知ってるよ、この時代は6、7代目かな?

 そこからだから俺たちに時代は ・・・

 何代目だ?」

 

指を折って数えながら

20代目、もっとかな?って呟いた

 

雑貨屋さんの頭の中では

同じ人だと言う考えがないのだ 

 

 

「あのね、ちらないままでいいんだっちぇ」

 

聴こえていないと思ってたら

さとちが耳元でそっと囁く

 

「そうなの?」

 

「うん、それでいいんだっちぇ

 きがついちゃとき

 きせきがおこるっちぇ

 おおちゃんがいっちぇちゃの」

 

そう言って、満面の笑みを浮かべた

 

鈍感なのではなく

敢えて気づけないような

何かが施されてるってことなのかも

 

『翔、あの二人の縁はかなり深い

 もしかしたら私と彼奴の縁と

 同じくらい昔からだ

 智は蒼灯殿に会っているからな』

 

ずっと沈黙してた翔様が教えてくれた

 

「そんな昔から?

 翔様も会ったことがある?」

 

『会ったことはあるやも知れぬ

 ただ、覚えておらぬのだ

 私は都に住んでいたからな』

 

蒼灯さんが暮らしてるのは山の中

滅多に出会うことはないのか ・・・

 

「この建物が残ってるのが凄いよね

 あ ・・・ 蒼灯さん

 花びら餅、作らないの?」

 

「花びら餅?

 菱花びらの事か?」

 

「え? ・・・ 食べないの」

 

「それは宮中で正月に食べる

 宮中雑煮のことか?」

 

若主人が翁に確かめてくれる

 

「ああ、宮中雑煮か

 薄く伸ばした白餅(花びら餅と呼んだ)の上に

 赤い菱餅を乗っけてごぼうと味噌を挟んだ

 その形状がを花びらに似てるから

 花びら餅と呼ぶと聞いたことがあるが 

 江戸では食べぬな ・・・」

 

「そうなんですか?」

 

驚いた顔で困惑した様子の雑貨屋

 

「ああ、江戸では食わぬな」

 

翔旦那も同意する

 

「蒼灯さんは御存じないのですか?」

 

「知ってるぞ

 もともとは長寿を願い

 歯固めの儀で食していた物

 今は簡略化されてる

 菱花びらと呼んでいるが

 花びら餅の方が風流ではあるな

 雑貨屋、食べたいのか?」

 

「味噌餡とごぼうが

 白い餅に合いますよね」

 

それを聞きながらハラハラした

もしかして、雑貨屋さんの言っている花びら餅は

この時代に存在しないのではないかと

 

「雑貨屋さん、ここは江戸ですよ」

 

こそっと耳打ちすると

ハッとした顔をする

 

ほら、忘れてる ・・・

こっちでは不用意に現代の事は

言ってはいけないはずなのに

呆れ顔になってしまう

 

 

「ここできいても

 なんにもかわらないの

 だっちぇ、つくっちぇも

 おいらたちだけがたべるから」

 

そうか、それを商品化しなければ

歴史が変わることはないんだ

そして、その事を弁えてる人たちばかりだと

納得するサクちゃん

 

多分、その事を忘れるようになってる気がした

 

「明日、拵えてみましょう」

 

「そうだな」

 

若主人が俄然やる気を出した様子で

益々、やることが増えていく

 

「じゃあ、さっそく器を作っていくよ

 轆轤は回さず

 手び練りで作る

 袖が邪魔になるから

 たすき掛けをしてからな」

 

いよいよ、みんなで器を作ることに

正直、不器用な雑貨屋とサクちゃんは

蒼灯さんが付きっきりで教えてくれる 

翔旦那は若主人とさとちが付きっきり

翁は笑みを浮かべて様子を眺めていた

 

 

 

 

 

<続きます>