月の兎が見える夜 52 | 蒼のエルフの庭

蒼のエルフの庭

蒼の方への愛を叫んでおります
主に腐小説中心の妄想部屋でございます
ご理解いただける方のみお入りください
(男性の方のご入室はお断りいたします)

やっぱり最後の班に紛れ込んでた

絶対に一番最後まで残るはず

 

「ありがとうございました

 お気をつけてお帰りください」

 

最高級の笑みを浮かべて

参加者を向こう側に送る

 

『しゃちょう !』

『あのひと!』

『もんだいのひと!』

『きをつけちぇ!』

『おいらがついちぇるの!』

鞄の中からちびちゃんたちが

励ましの言葉を掛けてくれる

 

「気を付けるよ」って意味で

鞄を数回叩いた

 

「どうぞゲートを抜けて

 おかえりください」

 

「ありがとうございましたは

 省略ですか?」

 

厭味ったらしい奴

さっさと帰れよ

 

「ここに居られる滞在時間は決まっています

 ありがとうございました

 お気をつけて」

 

付き合ってられるか

『やなやつ~!』

ちびちゃん達が大合唱!

 

「ゲートを開けますから

 貴方も一緒にどうぞ」

 

「はあ?俺は向こう側には行けないの

 さっさと行かないと

 緊急ボタンを押すよ」

 

押せば強制的にコロニー側のゲートは開く

 

「いいですよ

 岡田さんが待ってますから」

 

「誰だよ岡田って ・・・」

 

「しらばっくれないでください

 トリプルSの大野さん」

 

「トリプルSなんて知らねえし

 俺は旅行社の社長」

 

話をするのもムカつくので

それだけ言って緊急ボタンを押した

此奴を向こうに押し出せば

俺は掌紋で『RAY』側のゲートを開ける

 

 

扉が開いたら ・・・ 

向こう側にライゾンがいた

(どうして岡田が飛んでこない!)

 

「どうされましたか?」

ったく白々しい奴 ・・・

 

「この方がそちら側に帰ってくれなくて

 困ったのでボタンを押しました

 どうぞお連れください」

 

「何があったんです?」

 

ライゾンがイディオンの方を向いて

事情を確認する

確認するのは俺だけでいいの

そもそも、コロニー側に用はないんだから

 

「ボタンを押したのは私です

 なかなか帰してくれなくて ・・・」

 

迫真の演技(大根だけど)で

事情を説明する

 

とんだ茶番だ ・・・

 

岡田がこっちに向かって走ってくるのが見えた

そうだよ ・・・ ボタンを押して

ゲートが開いたらそこに人がいるなんてのは

待ち構えてないとあり得ない

 

嵌められた ・・・

 

「茶番だな ・・・

 ボタンが押されるのが分かってたのか?

 ドアが開いたらそこに居るって

 待ち構えてなきゃ無理だろ

 なあ ・・・ ライゾン!

 それからイディオン 下手くそな演技してんじゃねえよ

 ったく、役者にでもなったつもりか

 やってられない ・・・ 」

 

とは言え

こっち側のドアが開いたままだと

『RAY』側のドアは絶対に開かない

 

『どうちて うそつくの!』

『じゃから オーラが』

『にごっちぇるの』

『しゃちょう、どうしゅるの!』

『でなきゃいけないの?』

 

「そうだな ・・・ 出ないわけには ・・・」

 

岡田が俺の前まで走ってきて

 

「智翔旅行社さん

 どうかしましたか?」

 

心配そうな顔で確認する

お前は遅いんだよ ・・・

 

「この二人に

 いちゃもん付けられてる

 帰れないんですけど」

 

岡田の方を向いて説明すると

間に割って入るライゾン

 

「この人がイディオンに

 こちら側に行かせろと言ったらしいです

 ボタンをしたのはイディオンです

 良いんですか?

 訴えれば貴方は旅行社の

 資格をはく奪されますよ」

 

ライゾンが鬼の首を取ったような顔をする

 

「今度は脅しか ・・・訴えろよ

 2人とも知らないんだな

 あそこの中間スペースは

 モニタリングされてるの

 それも『RAY』側でな」

 

慌てた二人が顔を見合わせる

岡田も困った表情のまま

考え込んで

それから俺の腕を引っ張った

 

「智翔旅行社さん

 中間スペースに長居をすると

 向こう側のゲートが緊急停止します

 そうなると帰れませんので

 こちら側でお話を伺います

 潔白が証明されれば

 ゲートを開けてお帰り頂きます」

 

岡田が説明している間に

後ろの扉が閉まった音がした

 

話しが長引きそうだ

ちびちゃん達を外に出して

逃がさないと

 

ゆっくり鞄の蓋を開けて

ちびちゃん達を外に出す

楠があるのは『RAY』との境界

ここから大きな木も見えてる

 

「しゃちょう 4にんをつれちぇいってくるね

 しょうくん、じゅんくんとてをつないで

 ま~くんはかずくんと ・・・

 おいらについちぇきちぇ」

 

流石お兄ちゃん、4人を先導してくれてる

一番年下のじゅん君が少し怯えてたから

こう言ういざこざは見せたくない

 

 

「岡田さん適切な判断だと思います

 いくら『クー』でのご友人だったとしても

 中立の立場で審議してください」

 

「やってられないわ ・・・

 イディオン、この手紙誰から預かった?

 岡田だと言ったな

 岡田、これはお前が預けたのか?」


「何の手紙?」

 

岡田がキョトンとした顔をする

 

「これだよこれ!」

 

ポケットの中の手紙を

岡田に突き渡す 

 

「俺は知らないけど ・・・」

 

「じゃあ、どこの岡田なの?」

 

イディオンを睨みつけると

 

「そんなもの渡していません」

 

身に覚えがないとばかりに

頭を左右に振って

素知らぬ顔をする

 

何処までも屑だな ・・・

 

「岡田さん、ここでは何ですから

 建物の中で話しましょう

 どちらが正しいか

 ここでは分からないですから」

 

建物内に入ったら

「RAY」側と連絡が取れないと思ってる

全ては筒抜けなんだけど

 

「じゃあ、案内して

 埒が明かないんだろ」

 

気づかれないように

岡田に目配せをすると

苦々しい顔をしたまま頷いた

 

三男の所に行くには

この方法しかないんだけど

知らねえぞ ・・・

 

俺の前を岡田が

後ろを二人が歩く

 

この構図を見ても

後ろの二人はグルだろうが ・・・

 

楠の傍を通り過ぎようとしたら

おチビちゃんが俺の方に乗っかった

 

「しゃちょう、4にんはむこうにかえちたよ

 おいらいっしょにいくね」

 

そう言ってにっこり笑う ・・・

あんなに素直に楠に向かうから

可笑しいとは思ってたんだ ・・・

 

マジか ・・・

蒼ちゃんと言うか ・・・

あの5人が ・・・ 頭から湯気を出してそう ・・・

 

 

これ国際問題に発展するよ

岡田、どうするんだよ!

 

 

 

 

<続きます>