花便り 40 最終話 | 蒼のエルフの庭

蒼のエルフの庭

蒼の方への愛を叫んでおります
主に腐小説中心の妄想部屋でございます
ご理解いただける方のみお入りください
(男性の方のご入室はお断りいたします)

上毛屋の庭もすっかり春が来て

沢山の花が咲き始めた

 

「この庭は梅の里の花が遅れた影響を受けてたのか?」

 

昨日とは全く違う庭に目をやりながら

首を傾げて呟く翔旦那

 

「今年は少しばかり寒かったからで

 あの山の影響は受けていないが

 ちびちゃんの歌の影響があるのだろう

 

蒼灯が翁のお茶を飲みながら

庭に咲く花を見渡しながら答えを言う

 

「さとち殿の歌がですか?」

 

「ああ、俺が拵えた戸から漏れたな ・・・」

 

ちょっとだけ自慢げな顔をしてにやりと笑った

 

「だから、早咲きの花があるんだ」

 

若主人が得心した顔で何度も頷く

 

「それは要らぬお世話と言う事か?」

 

「蒼灯殿、誰もそのように思っておらぬ

 これだけ花が溢れかえる庭が

 珍しいからじゃ」

 

「そうですよ、この庭を絵に残したいと

 思っていたところです」

 

「兄さんらしい(笑)」

 

和也がクスクス笑うと

3人も同じように笑った

 

「何かおかしなことを言ったか?」

 

「何も言ってはおらぬぞ(笑)

 しかし、まさに

 終わり良ければすべて良しじゃ ・・・

 この二人が真っ青になって

 お前さんの事を探し始めた頃は

 肝が冷えたぞ ・・・」

 

「翁、その話は ・・・」

 

思い出すと恥ずかしい翔旦那

バツが悪そうな顔で

翁の袖を引っ張った

 

「翁、仕方ないですよ

 突然いなくなったら

 そりゃあ、慌てますって」

 

「和也も慌てたんだな(笑)」

 

「二人ともじゃ ・・・

 それだけお主を大事に

 思うておると言うこと

 有難いと思うんじゃぞ」

 

「分かってます

 二人のお陰で

 さとち殿と蒼灯殿が助けに来てくれました

 蒼灯殿、お世話になりました」

 

「ふふ ・・・ 俺も貴重な経験をさせてもらったよ

 あれほどの光景を見れるとは ・・・」

 

「外からでも見えていたんですか?」

 

「ああ、全て見えていたよ

 それもこれも、若智が行方不明になったお陰

 礼を言うのは俺の方だな ・・・

 さて、茶も頂いたことだ

 そろそろねぐらに帰るとするよ ・・・」

 

「またいつでも、遊びに来てください」

4人が並んでお辞儀をする

 

「それでどうする?」

 

「何をですか?」

 

「護符だよ護符(笑)

 俺の護符はお守りにはなるが

 この先、妖は見えぬ」

 

「蒼灯殿の護符はなら

 この護符は ・・・」

 

「豆屋の護符もいつか見えなくなるが

 暫くは見えるはず ・・・」

 

「どうする?」

 

若主人がニヤリと笑う

誰よりも怖がりの翔旦那

困り果てた顔をする

 

「そうか ・・・ お前さんは持っていないなら

 私のは返そうか ・・・」

 

「若智は持っていなくとも見えているぞ」

 

「そうなのかい?」

 

目をまん丸くして驚いた顔をする

 

「薄ぼんやりとだがな ・・・」

 

「そうでなければ

 あの屋敷には入れぬ 」

 

「あのな、お前さんと同じ護符

 私も持っているよ

 さとち殿が届けてくれた文の中に入っていた

 これは大事に貰っておくよ」

 

「じゃあ、私も」

 

「蒼灯殿との縁を結んでくれた護符

 4人とも大事に身に付けさせてもらいますよ」

 

「変わった坊主だな(笑)

 じゃあ、帰るとするよ

 上毛屋、約束したものは後日届ける

 可愛がってやっておくれ

 それと ・・・ お八つの事頼んだよ」

 

「それは勿論です」

 

「じゃあ、縁が有ったら

 また会えるだろう」

 

笑顔の蒼灯が立ち上がり

縁側に向かう

後を追う4人が縁側から降りようとしたら

すでに姿が消えていた

 

 

「行ってしまわれたな ・・・」

淋しそうに呟く翔旦那

 

「また会えるよ」

 

若主人が背中に手を置き

安堵の表情を浮かべた

 

 

 

後日、平穏な日々が戻った4人のもとに

翁には茶碗が

三人には湯呑が送られてきた

器の裏側には

蒼灯の銘が刻まれていた

 

 

 

江戸の珍事も無事に解決いたしました

お読みくださりありがとうございます

 

 

<おしまい>