月が見えない夜を越えて 40 (最終話) | 蒼のエルフの庭

蒼のエルフの庭

蒼の方への愛を叫んでおります
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(男性の方のご入室はお断りいたします)

『The  Music  Never  Ends 』

音楽会の最後を締めくくる曲

各会場のアーティストが

揃って候補に挙げた曲だと聞いた

 

 

『喜び、悲しみ、全てに寄り添いながら

 導かれるように口遊む

 The  music  never  ends

 どうしようもない 悔しさ

 影を落とす日も ・・・

 Be  alright 朝は来て

 途が続いて行く ・・・』

 

この歌詞を読んだ時

蒼ちゃんが歌う癒しの歌を思い出した

 

どんな時も ・・・ 彼は謳い続けてくれた

孤独の道を歩いている時も ・・・

一人謳い続けた ・・・

 

だから ・・・ この世界に希望が残ってるんだ ・・・

 

前奏が始まり

 

月見亭の大野さんを中心に

謳が始まる ・・・

wonderlandにO国

そして松岡邸(過去と未来)

此処だけ素人の俺たち

申し訳ない気もするけど

蒼ちゃんが背中を押してくれる

『自信をもって堂々と』

手のひらから伝わる想いは温かい

翔が俺の横で笑みを浮かべる

ちびちゃんは嬉しそうに笑って

リズムに合わせて踊り始める

 

歌には力がある

 

昔の俺たちは

その事を気にも留めなかった

 

メロディーをなぞりながら口遊むだけ

(それでも良いのかもしれないけど)

 

想いが溶けて光になるなんて

考えもしなかった

 

目の前で起こってる

幻想的な光景は

夢ではなく

希望と言う翼を纏った光が

『RAY』を飛び出して

ゲートの向こう側の地上を目指していく

 

沢山の色の光 ・・・

それはそれは美しい

どれだけの人がこの景色を見ているのだろうか ・・・

 

 

最後の大サビを終え

全員で合唱するパートで

スクリーンは4分割された

皆が俺たちに向かって手を振る

 

一人一人に手を振りながら

『ありがとう』って呟く

一人では出来ない事も

沢山の力が集まれば

成し遂げられる ・・・

そんな単純な事を教えて貰った

 

 

最後は歌を謳うのも忘れて

皆の声を聴いてた

 

大ちゃん ・・・ 翔先生 ・・・

本当にありがとう ・・・

(映らないからお礼が言えないけど)

 

曲が終わり ・・・

スクリーンに映るのは

俺たちがいるテラス ・・・

 

彼らの声も姿も

そして言葉を交わすことも

もうできない ・・・

 

気が付いたら涙が頬を伝って

ぽとりと落ちていく ・・・

 

「終わりましたね ・・・」

 

4人が俺を囲んで

何とも言えない顏をした

ホッとした気持ちと

淋しい気持ち

色々な想いが混じった表情

薄っすらと頬を濡らす涙 ・・・

きっと俺も同じ顔をしてる

 

 

此処からは俺たちのストーリー

希望の種が芽を出すか

そのまま朽ちていくのか

全ては俺たちの手の中に ・・・

気を引き締めないと 

 

音楽会の後

3人で大ちゃんと話をした

顔が見えなかったのがちょっと残念だけど

蒼ちゃんも

ちびちゃんも

そして俺も 

ちゃんとお礼が言えた 

 

 

またいつか ・・・ どこかで ・・・

その日を夢見て ・・・

 

感慨深い顔で屋敷に向かっていくと

いきなりのBIRTHDAYソング

 

何か考えてるような気はしてたけど

これは本当に驚いた

どこで調達してきたのか

豪華なケーキが用意され

PRESENTまで

 

副社長が俺たち3人に用意していたのは

ケーキの形をしたアイシングクッキー

どうやら手作りらしい

歪な文字にも味がある

ちびちゃんが大喜びで

宝物にするとラッピングされたクッキーを

大事そうに胸に抱えた

 

パーティーの終わりは物悲しい

蒼ちゃんたちは紅玉に帰り

俺たちはもう一晩だけここに泊まることにした

アパートに帰ると

暫くは此処に入れないからだ

 

「あっという間でした」

 

二階のテラスから空を見上げて

ポツリと呟く翔

 

「無我夢中だったからな ・・・

 特に眼鏡君は世界が一新したから」

 

「確かに ・・・ でも ・・・

 全てが解き明かされて ・・・

 良かったです ・・・

 俺は何も悪い事をしていなかった ・・・

 考えなしな所はありましたが」

 

そう言って

テラスの手摺を掴んで

嬉しそうに空を見上げる

 

「そこが一番駄目だろ(笑)」

 

お前のタイムスリップミッションが

全ての始まり ・・・

それがなければ此処に辿り着けなかったけど

 

「そうですか?

 俺は希望通り、先輩の側に来ました(笑)」

 

「ホント変人(笑)

 ここからがスタート

 明日から忙しくなるぞ

 彼奴との交渉はお前な」

 

「ええ、エルフ国代表は緋~ちゃんだそうです」

 

「適任だな」

 

蒼ちゃんは優しすぎるんだ

優しすぎて傷付いてしまう

その点、緋~ちゃんは(笑)

蒼ちゃんや身内には凄~く甘いけど

それ以外に対しては冷徹(冷酷とも言う)

必ず自分が優位になるように交渉する

 

「そう思います(笑)」

 

クスクス笑うと言うことは

お前にもその素質、有りそうだな(笑)

 

「そろそろ休みましょう」

 

「そうだな ・・・」

 

ぼんやりと浮かんで見える

蒼い扉 ・・・ まだ消えていない ・・・

 

「あの扉 ・・・ 明日の朝にはなくなってるのかな?」

 

俺たちを導いてくれた扉だ ・・・

消える瞬間を見てみたい気もする

 

「朝の光に溶けるのかも ・・・」

 

「その可能性大だな」

 

星を眺めながら ・・・

夢を見よう ・・・

この星が ・・・

緑豊かな大地を取り戻す夢を ・・・

 

 

 

陽が昇り始める頃

歌が聴こえる

 

 

癒しの歌 ・・・ 

蒼ちゃんだ ・・・

ちびちゃんの声も聴こえる

 

ゆっくりベッドから起きだし

テラスに出ると

蒼い扉の前で歌う二人

 

 

「まだ有る ・・・」

 

ボソッと呟くと

 

「本当ですね」

 

翔が相槌を打った

 

「おはよう ・・・ 起きたの?」

 

「おはようございます

 起きますよ

 あの二人の歌が聴こえてきたら」

 

「ずっと、歌い続けてきたんだろうな ・・・

 一人の時も ・・・」

 

あの人がこの居住区を守り続けていた理由

大事な人たちが集った場所だからだ ・・・

 

「朝の挨拶しないと」

 

「そうだな」

 

急いで外に出て彼らのもとに向かう

蒼ちゃんの歌が朝陽に溶けて

キラキラと輝きながら

地上に舞い降りていく

樹々が嬉しそうに揺れてるような気がした

 

「おはようごじゃいましゅ!」

 

ちびちゃんが元気よく挨拶をする

 

「おはよう

 早起きだね」

 

「うん」

 

「俺とチビの日課なんだ」

 

「蒼ちゃんの歌を聴くと

 心が綺麗になった気がします」

 

「きがちます じゃないの

 きれいになるの!」

 

「確かにそうだ」

 

浄化と癒しの歌 ・・・

新しい一日が始まる合図 ・・・

 

「家で朝ご飯を用意した

 みんなでどうぞ」

 

「それは有難い

 朝食を頂いたら

 掃除をしてアパートに帰ります」

 

「掃除は必要ない

 そのまま、アパートに戻ってくれ

 それから ・・・ ここはエルフ時間ではない(笑)」

 

重要な事をサラッというのが蒼さん

俺たち結構、覚悟してたよ

此処から出たら ・・・

年を越してるんじゃないかって

 

「浦島太郎にはなってない?」

 

「あはは ・・・ なってないよ」

 

爽やかな顔で笑う蒼ちゃん

その横で嬉しそうに笑うちびちゃん

それが何だか凄く嬉しい

 

「社長、良かったですね(笑)」

 

翔がホッとした顔をするから

4人で大笑い 

 

穏やかない日ばかりじゃない ・・・

それでも ・・・ 笑って居よう ・・・

彼らと共に ・・・

 

 

蒼い扉がゆらゆらと揺らめき始めた

 

「役目を終えたのか ・・・

 ありがとう」

 

蒼ちゃんがそう呟いて

ゆっくりと歩き始めた

 

「消えるところ見ない?」

 

「見たら ・・・ 二度と現れない気がして ・・・

 社長が見たければどうぞ

 チビ、行こうか」

 

「うん ・・・ みんなをおこさないと!」

 

そうだな ・・・見ない方が夢が有るかな ・・・

 

 

4人でゆっくりと屋敷に向かって歩いていく

 

 

 

振り向くと ・・・ 陽炎のように揺れる扉

 

 

ちびちゃんが俺の手を握って微笑んだ

 

 

 

テラスから広間に入った時

 

 

 

 

 

何処からか歌が聴こえた

 

 

 

 

♪ 声を重ねよう 

  終わりのないそんなメロディーズ

  時を越え ・・・ 何度だって響く

  The  music  never  ends ~♪

 

 

蒼ちゃんが

ちびちゃんが

目を輝かせて

大きな声で叫んだ

 

「大ちゃん !」

 

 

振り向くと

さっきまでゆらゆらと揺れていた扉が

空に浮かんで広がって

見たことのある場所を映し出す

 

 

 

そこには蒼い瞳の青年が

空に向かって謳ってた

 

 

その傍らに緋色の髪をした青年 ・・・

 

 

 

あれは ・・・

大ちゃんと翔先生 

 

 

蒼ちゃんもちびちゃんも

泣きながら笑ってる

俺も翔も同じ ・・・

 

 

4人とも空に映し出された2人を眺めてた

 

歌が終わるように

二人の姿が空に溶けていく

 

 

 

この世界のどこかに居る ・・・

二人一緒に ・・・

 

 

「あおちゃん ・・・」

「大ちゃんと翔先生 ・・・」

「ばしょはわかっちぇる?」

「分かってるよ」

「あえるかな?」

「会えると良いな ・・・」

「きっとあえるね」

 

「俺も会いに行きたい」

「俺も」

 

 

そう言うと二人が嬉しそうに笑った

 

 

 

 

蒼い扉は影も形もなくなって消えた

最高のプレゼントを残して

 

 

 

 

 

 

 

 

<おしまい>

 

 

3部作のお話140話

漸く完走出来ました

正直、出来るのかなと

心折れそうになったりしましたが

無事に着地出来ました

二つの部屋が同時進行していて

分かりにくいお話になったなあと

反省しています

長いお話にお付き合いくださった皆様

コーラス隊に参加してくださった皆様

ありがとうございました

 

 

いいねに励まされ

コメントに力を頂きました

お返事が出来ず

申し訳ありません

拙い拙いお話にお付き合い下さり

感謝しております

ありがとうございました

 

 

蒼のエルフ