月が見えない夜 16 | 蒼のエルフの庭

蒼のエルフの庭

蒼の方への愛を叫んでおります
主に腐小説中心の妄想部屋でございます
ご理解いただける方のみお入りください
(男性の方のご入室はお断りいたします)

窓の側に置いたソファーの上で目を覚ました

空には星空のベールが帰り支度を始め

細く欠けた月が、それでも凛とした姿で浮かんでた

 

「何時だ?」

 

誰に聞くでもなく声に出してみる

応えてくれたのは

壁に掛けられた古びた時計の振り子の音

 

「もうすぐ陽が昇る ・・・」

 

ゆっくりとソファーから立ち上がり

机に向かって歩いて行く

昨日遅くまで連絡を待ったが来なかった

PCを起動して確認

 

あの馬鹿 ・・・ 夜中に送ってよこした

 

『ミッション開始時間 午前9時

 シップ搭乗時刻 午前8時50分

 エネルギー充填時間 5分

 AI起動時間 3分

 眼鏡君の記憶操作 2分

 シップ出発帰還時刻 午前9時

 行先 ・・・ 昭和から明治の間

 眼鏡君回収予定 7日後』

 

一週間で情報を集めるって

眼鏡君は『クー』育ち

向こうの環境に順応できるのか?

いやいや ・・・ その心配より

跳ばされたら戻れる可能性は皆無

首謀者がそんなご丁寧な事はしない

欲しいのは情報だけ ・・・

 

『回収する気もないのに

 載せてんじゃねえ!』

 

俺に送った文章は削除されてるだろうけど

文句だけは送る

それに、どうせ起きてない ・・・

 

『だから、壊すんだよ!』

 

あらら、起きて嫌がる

 

『遅いんだよ』

 

『お前が寝るの早いんだろう』

 

『日が変わるまで起きてたよ

 壊せる時間は5分だな』

 

『AI起動が始まったら難しい』

 

『よく話したんだろうな?』

 

『頭が良い奴だから、何とかなると思うが』

 

『眼鏡君、頭は良いけど非力だぞ』

 

『それは知ってる』

 

おいおい、大丈夫か ・・・

 

『何か持たせろよ

 素手じゃけビクともしねえぞ』

 

必ずあるんだ一か所もろい部分が

そこを一撃すればヒビが入る

ヒビが入ればなんとかなるけど

眼鏡君に見つけられるかだ

 

『それは説明した』

 

『万が一のことを決めたい

 すぐに連絡取れるか?』

 

『ゲート前まで来れるか?』

 

『行けるが ・・・ そこには入れない』

 

ゲートを抜けたら拘束される

そうなったら動けない

 

『彼奴じゃなく俺がいたら

 ミッション的には成功、俺たちとしては失敗だ

 お前のそのPCにデーターを送る』

 

『そんなもん貰っても、俺は何もできない』

 

『それを ・・・ 『RAY』の中にある

 洋館に届けろ ・・・

 そしたら道が開けるかもしれない ・・・』

 

『洋館ってどこだよ』

 

『分からない ・・・ 分からないけど

 あるらしいんだ ・・・

 人がいるかどうかは定かではない

 この星の希望 ・・・ と言われている場所

 ただ ・・・ 扉は閉ざされたままらしい』

 

思いっきり両手で頭を搔いた

面倒な事を ・・・

 

『じゃあ、今から探しに行く

 時間は9時だな

 ゲートの前で待つ』

 

『そう伝える』

 

『頼んだ』

 

『頼まれた』

 

そうとなったら

その訳の分からない洋館を探しに ・・・

 

ハタと気が付いた

扉が開かない洋館

 

あのマジシャンみたいなおっさんのいる洋館

 

昨日も一昨日も ・・・

ずっと ・・・ あの扉は開かない 

 

のんびりはしていられない

急いで顔を洗って着替え

上着を手に持ったまま

まだ薄暗い空の下に飛び出した

 

 

<続きます>