古今東西の妖精や精霊・スピリチュアルにまつわる作品を取り上げていくコーナーです。

 

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2022年3月3日公開

「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」

 

 

主人公はエブリンというアジア系の女性。家族は同郷の夫・ウェイモンドと一人娘のジョイ、そこへ高齢になった父親を呼び寄せて一緒に暮らしています。

一家はアメリカでコインランドリーを生業としているのですが、エブリンの日常は家族のこともお金のこともとにかく忙しく悩みが尽きません。

税務署とのやり取りで苦しむ中、急に別の宇宙からの交信が入り、世界を闇の勢力から救うために戦うことになります。

 

 

日常生活から逃げ出したいほど辛いという感情は、霊能とか芸術的な能力の開花のきっかけになることはわりとよくある事かもしれませんね。問題はそのあと。イメージの世界と現実を区別する事が肝心。空想に振り回されるんじゃなく、自分が乗りこなす側になること。

普段こうしてブログなんかやってスピリチュアルのはじっこをかじっている身としては、「こうなったらあかんなぁ」という見本というか、ここまで行ったらもうビョーキじゃねぇかっていう危なっかしさは身につまされる思いでした。笑いながら見ていたけど笑えないところもあるなぁ、と。

やっぱり地に足を付けてこそのスピですわ。世界を救わなきゃとか何かから追われてるとか言い始めたらやばいっすね。気を付けよーっと。

 

 

何年か前に映画見まくろうキャンペーンをひとりでやった時期があって、年間で170本近くDVDを借りたことがありました。もっとガチの人は一年で千本とか観るようなのでこんな数字恥ずかしいですが。それでも多少お勉強の甲斐あって、この作品をとても楽しめたと思う。

ジャッキー・チェンの映画を初めてテレビで見た時の驚きがよみがえったような感覚でした。戦う場面で冗談みたいなばかげたことをやらざるを得なくなるんです。それが別の世界と繋がるトリガーだから。人生どん底のエブリンですが、彼女のやけっぱち感と重なってみえました。空想に酔えば酔うほど強くなる。

夫のウェイモンド役の俳優さんはこれまでに武術指導のお仕事もされていたそうですね。アクションシーンがかっこよかったなぁ。

 

「この映画って、いったい何のジャンルなの??」と分類に困る。観る人によって、何を抽出するかによって全然違うものになってしまいそう。

ハリウッドで築き上げられてきたSFやショービズの華やかさ、アジア映画の中に息づく生きることへのひたむきさ、アニメの世界特有のぐにゃぐにゃしたファンタジー。すべての要素をバラバラにして一瞬で組み替える感じがすごかった…!

映画好きのためのニューシネマパラダイス的な感じ。見覚えのある「あのカット」の詰め合わせ。

 

私としては恋愛映画に位置付けたいです。

旦那さんが奥さんを愛していることが繰り返し表現されていてよかったなぁ。縁の濃い関係ってこういう感じなんだよね。別のパラレルでも出会っているんだよ。

自分の人生をどういう風に組み替えても絶対に出会っちゃうであろう人がいたり、絶対にこれは起きてたよな~っていう出来事ってあるものですよね。運命には動かせないものと動かせるものがある。変えられるのは自分自身の事だけ。

 

 

ちなみにサビアンシンボルという占星術の技法があるのですが、射手座22度が「中国人の洗濯屋」となっています。

前の度数は射手座21度「借りてきた眼鏡をかけた子供と犬」です。出来るだけたくさんのことに取り組み、無理をして負荷をかける段階です。

22度では前度数での経験から状況を整理し始めます。できること・できないことの範囲を認識していきます。

 

主人公のセリフで「やっと本当の私になれた」なんて一言もありましたっけ。いったん出来上がっているものを再構築することで初めて見えてくるものもあるんですよね。精神の変容には痛みを伴いますが、傷ついているのはエゴが作った仮面なのです。

人間の生涯は座礁したり凪いだりすることがあります。そんなとき、底が見えない湖に飛び込んだら足が付いて、単なる大きな水たまりだった…なんてことも往々にしてあるものです。

 

yucca.

 

この解説、物凄くおもしろかったのでオススメです!