兄弟たちが学校へ出発した後に、ちょうど家に着いた。


 僕は急いで着替え、エズミの何か聞きたげな目を避けた。彼女は僕の顔をまぶしそうに見ながら、心配と安堵を感じたようだ。長かった僕の憂鬱な様子に彼女は胸を痛めていたから、それを乗り越えたと感じた彼女は喜んでいた。


 僕は学校まで走り、兄弟たちに数秒遅れで到着できた。彼らは走っていない、舗装道路に沿った密集した森に立っている僕を知るには、アリスを通さなくてはならない。僕は見る者がいなくなるまで待ち、車がたくさん並ぶ駐車場にある木々の間から何気なく歩き出した。


 駐車場の角の方からベラのトラックのエンジン音が聞こえる。僕は彼女に見られることのない場所で足をとめた。



彼女は僕のボルボを長く睨み付けながら、駐車場の中を運転し、眉をひそめながら一番遠くのスペースに駐車した。



(ベラはシルバーのボルボにぶつけてやりたい衝動にかられ、できるだけ遠くに車を止めることにした)



 もしかしたら彼女はまだ僕に、そしてその正当な理由に怒っているかもしれないということを強烈に思い出した。



 僕は自分を嘲笑いたかった―――蹴り飛ばしてやりたかった。僕の計略と計画の全てが暗礁にのった、彼女が少しも僕を気にもかけなかったら?彼女が見ていた夢だって、何でもでたらめにもなれる。僕はなんて傲慢で愚か者なんだろう。


 ああ、もし彼女が僕を気にかけていなかたら、それはそれで彼女にとって、あまりにも良いことじゃないか。その事は彼女にうるさく付きまとう僕を止められないが、それを彼女に警告することはできる。僕は彼女にそれをする義務がある。


 僕は彼女にどう接触をはかろうかと考えながら、静かに前へ歩きはじめた。


 彼女はそれを簡単にさせてくれた。彼女がトラックから降りようとした時に車の鍵が指から滑り落ちて、足元の水溜りへと落ちていった。


 彼女は鍵を拾おうとしゃがんだが、すでに僕はそこにいて、彼女が冷たい水の中に指を突っ込む前に鍵を受け止めていた。


 彼女がびくっと身体を起こした時には、僕はトラックに背中を預け寄りかかっていた。



 「あなた、それどうやったの?」


彼女はきつく問いただしてきた。



そうだ、彼女はまだ怒っているのだ。



 僕は彼女に鍵を差し出した。


 「何のこと?」



 手を差し出された彼女の手のひらに鍵を落とした。深く呼吸をして、彼女の香りを吸い込む。



 「突然現れることよ」


彼女ははっきりとしている。



 「ベラ、君がずばぬけて注意力散漫なのは僕のせいじゃないよ」


ひねくれた言葉はいつものジョークだ。


 ベラは何もなかったことにしてくれる?


 僕は彼女の名前を抱きしめるような思いで言ったけど、彼女にはどう聞こえただろう?



 彼女は僕のユーモアを理解せず、僕をにらみつけた。


 彼女の心臓の鼓動は跳ね上がった―――怒りからだろうか?それとも恐怖感?


 一瞬間をおいて、彼女はうつむいてしまった。



(ベラはエドワードの落ち着いた声に惹かれ、その瞳に見つめられたせいにして、こんがらがる頭を整理しようと下をむいた)