スペイン語の授業は終始ぼんやりしていた。


ゴフ先生は僕のうわの空の状態の理由を決して聞こうとはしなかった―――僕のスペイン語の方が自分よりも上だと彼女は知っており、ずいぶん僕を自由にしてくれている―――僕は自由に物思いにふけることができた。


 そして、僕はあの子を無視することができなかった。それだけは明白だった。でも、それは彼女を壊してしまう選択の道はないことを意味するのではないだろうか?未来を手に入れられるだけにはならない。他にも選択はあるし、繊細な均衡をもたねばならない。僕は手段を考えようとした。



 授業が間もなく終わるまで、僕はエメットにあまり注意を払っていなかった。


彼は好奇心の強い男だ―――エメットは他人の気持ちの陰の部分について、あまり直観的ではないが、僕の事になるとはっきりとわかるようだ。僕がずっと渋い顔をしたままで、何が起こったのか知りたがっていた。エメットは何とかこの変化に理由をつけようと考えていたが、ついに僕が希望に満ちていると結論をだした。



 希望に満ちている?僕の表情から何がわかったっていうんだ?



 僕たちが愛車のボルボまで歩いていたとき、僕は何を望むべきなのかを考えていた。



 それほど長くは考えることはなかった。たいてい僕が神経質になるのは、彼女のことを考えているとき、ベラの名前を思い起こしたとき、ライバル達を。僕はそれを認め、ベラの周囲に気を配らなくてはならない。マイクの失敗を聞いた―――とても満足気に―――エリックとタイラーは、そろそろ自分たちも動こうと考えている。



 エリックは、もうすでにベラのトラックに寄り添って彼女が彼をさけられないようにポジションをとっていた。タイラーの授業では課題を受け取るのに時間がかかり、ベラが飼える前になんとか彼女を捕まえようと焦っていた。



「ここで皆を待っていてくれ、いいね?」


僕はエメットにそうささやいた。



 彼は疑わしげに僕を見たが、肩をすくめて頷いた。



 ―――子供に返ったみたいだな



僕の妙な頼みごとを面白がって、彼はそう思った。



 僕は体育館の出口にいるベラを見つけ、彼女が脇を通っても僕に気が付かない場所で待った。彼女がエリックの待ち伏せに合ったとき、いいタイミングで出ていけるような場所まで大股に前進した。



 彼女は待ち伏せしているエリックに気付くと体を硬直させた。一瞬固まった後、リラックスして前へと歩を進めた。



 「はい、エリック」


親しげにかける彼女の声が聞こえた。



 僕は不意をつかれ、突然心配になった。


もし、このひょろ長くて不健康な肌の10代の少年が彼女の好みだったら?