だがこれらの有益な発見は、あの少年のせいで僕の心を温かい気持ちにさせなかった。


 彼のベラをみる独占欲は―――まるで彼女が作られた掘り出し物かのように―――あまりにも彼女を下品に空想していて、ほとんど僕を怒らせたといってもいい。時が経てば経つほど、彼がライバル―――タイラー・クローリー、エリック・ヨーキー、そして時折僕すらも―――と考えている人物以上の男を彼女は選ぶということに、確信をもつべきだ。


 彼はいつも授業が始まるまで、僕たちのテーブルのベラの隣に座り、彼女の笑顔に調子にのってくだらない話をしている。ちゃんと礼儀正しい笑顔で、僕は自分に言い聞かせる。それでも僕は時々、部屋を横切って壁となり彼をバックハンドで打つという、そんな想像をしながら退屈しのぎをする…多分、致命傷は与えない程度に…。



 マイクは、それほど僕の事をライバルとは考えてはいない。事故の後、ベラと僕が共通の経験を分かち合うことにより絆が生まれたのではないかと彼は心配していたが、明らかに反発する結果となった。その前までは、僕がベラに注目し、パートナーに選んだと彼は悩んでいた。しかし今や僕は彼女を徹底的に無視しているため、彼は自己満足にひたっている。


 彼女は今、何を考えている?彼女は彼の行動を喜んでいるのか?


 そして最後に、僕の苦痛の中で最もつらいもの、ベラの無関心だ。僕が彼女を無視したとき、彼女も僕を無視した。彼女は決してまた僕に話しかけようとしなかった。僕が知りうるかぎり、彼女は決して、全くといっていいほど僕の事を考えていなかった。


 これは僕を狂人へとかりたてるかもしれない―――もしくは、未来を変えてやるという僕の決意を砕くことさえ―――彼女が時々、以前のように僕をみつめないかと期待してしまう。彼女を見たいという欲求に従わないように、僕はそんな自分をみないようにしたが、アリスは彼女の見ているものについて、いつも僕たちに知らせてくる。他の家族は、まだベラが疑わしいと用心しているけど。


 ベラがわりと遠くの向こうから僕をみていることで、いくつかの心の痛みが和らいだ。今も、そしてこれからも。もちろん彼女は、僕がどんな変わった種族なのかと不思議がるだろう。


 「ベラが一分後にエドワードをみるわよ」


アリスが3月の第1火曜日に言った。そして他の家族は、人間のように身体をずらし、そわそわして慎重になった。全く微動だにしないのが、僕たち種族の証なのに。


 彼女がどれくらい僕の方向を見ているのか、注意をはらった。僕をみてくれ、そう考えるべきではない。そう思う頻度は、時が経っても減ることはなかった。それが何を意味するのか僕にはわからなかったが、僕をいい気持ちにさせる。


 アリスは吐息をつく。


 ―――私、思うの…


 「その考えを止めろ、アリス」


僕は吐き捨てるように言った。


 「何も起こらない」


 彼女は口を尖らせてすねた。アリスは、ベラと親友になるという心に描いた未来を気にしている。そんな奇妙な方法で、ベラを失ってしまうことを、彼女にはわからない。



 ―――私は認めるわ、私が考えている以上にあなたにはいいことよ。ほとんど混乱してまた馬鹿げたことをしでかして、あなたは未来を手にするの。私はあなたの幸せを望んでいるのよ。


 「それは僕に十分な分別を与える」


 彼女は神経質に鼻を鳴らした。