君の声は感情の波を掬って海へと返す。
そんな優しい歌を歌う人。
I'm still here always
いつもそこにいてくれてありがとう。
思い出の中を君の歌声が巡る。
スンミン、誕生日おめでとう。

毎度のことながら、遅くなってごめんなさい。
なんとなくお察しのこととは思いますが、ピリに引き続きスンミンの誕生日も、私の個人的エピソードを語る回でいきたいと思います。
でもこれ6月頃からずっと書こうと思ってたんです。スンミンの誕生日、絶対この曲の話書こうって。
何の曲なのかは↑でお分かりかと思いますが、Here Alwaysです。
私スンミンのソロ曲カバー曲の中で、これがダントツで一番好きです。
リリースした時はもちろん、その後も定期的に語りたくなる曲なんですが、いつも書きたい衝動と手が空くタイミングが合わず、たぶんここでは一度も触れたことはなかったと思います。
でも長い間この曲は私のそばにありました。
いつも柔らかく慰めてくれた。
そのことを書こうと6月頃は思ってたんだけど、時間は流れて、私はその優しい声と最後に静かに波打ち際を歩いた気がした。
そのお話を少ししたいと思います。
7月末で無職になって8月前半は職探しをしていた私ですが、実は前の会社は自主退職ではなく倒産でした。
もちろん従業員たちは倒産するとは知るはずもなく、事業縮小による解雇と説明してありました。
それは私も表向きは同じだったけど、業務上会社の実情を把握していたので、もうそれしかないということは分かっていました。なので密かに倒産に向けてある程度の準備は進めておきました。
それでもやっぱりつい最近まで、破産管財人からいろいろ指令が来ては事務所に入り、よかったまだ電気点くわと思いながらあれこれ資料を揃えたり、いろんな書類を作成したりしてました。(でもちゃんと日当はくれるよ)
そして先日、その日の仕事が終わり退出時刻を報告するために管財人事務所に電話したら。
「これでお願いするお仕事はすべて終了です。長い間ありがとうございました」
「あ・・・はい」
自分が返した返事にも、なんだか拍子抜けしてしまった。
解放でもなく感傷でもなく、言葉にするほどの感情は何も湧いてこなかった。
だけど電話を切ってパソコンの電源を切って、管財人に郵送するように言われた事務所の鍵を手に取った時、急に思った。
これをかけたら、もう開けることはないんだな。
それはもしかしたら、あえて意識的に思ったことだったかもしれない。
私は感傷に浸りたかったんだと思う。
この職場しか知らないわけじゃないけど、長く勤めたもう一つの家のような場所だった。
でも最後はあまり居心地はよくなかったし、大変なことがありすぎた。
だけどその家を、綺麗な思い出に戻したかったんだろうな。
これが最後だと思った時、ここでこれを聴いてから帰ろうと思った。
Here Always。仕事で心が疲れた時、よく聴く曲の一つでした。終わりに向かう日々の中でボロ雑巾みたいになってたこの気持ちを、しばし海へと連れてってくれた曲。
でも私、歌詞の和訳見たのって実はこの記事書き始める時が初でした。それまで英語部分からなんとなくこんな感じって想像するだけで。
歌詞の意味よりもとにかくスンミンの歌声が心地よくて大好きで、それだけで十分だったんです。
スンミンの歌声は力強く歌い上げるのも好きなんだけど、穏やかに柔らかく歌う中音が私は一番好きかな。
でもその穏やかさの中にも芯を感じて、スンミンらしいなぁと思います。
この曲は優しく柔らかく少し切ない声が、細胞に浸透するようにすーっと心を癒してくれるんだけど、でもその中にもやっぱり芯の強さはあると思う。
固く貫く感じではなくて、手を繋いでくれる感じ。
波打ち際を歩くように歌うんだねって、初めて聴いた時思ったの覚えてる。
「海街チャチャチャ」のOSTだったからそこから海のイメージが来てるんだと思うけど、それを水平線に浮かぶ小舟に持っていくか、寄せては返す波に持っていくかは、プロデューサーのディレクションはあるにしても、やっぱりスンミンの感性や表現力によるものが大きいと思う。
静かに砂を洗って、そっと撫でて引いていく波。
そんな歌声だと思った。
そしてそれは心の中に溜まったものも洗っていく。
この先も長く続く日常だと思っていた頃、終わりを覚悟した時、もう終わらせたいと思った夜。
いつもそこにいた。
ゆっくりと波打ち際を歩きながら、波のように歌う優しい声。
濁った堆積物を海へと流して、私はサンダルを脱いだように少しだけ身軽になった。
その曲を、もう座ることはない慣れ親しんだ自分のデスクで、最後に一度だけ聴きました。
イヤホンからスンミンの声が流れ出すと、いつも想像の中には波に洗われる自分の足が見えてた。
でもその時浮かんだのはやっぱり、日常だった頃のどちらかと言えば楽しかった思い出だった。最初のワンシーンは意識的に記憶から引っ張り出した気がしたけど、その後はただ溢れた。
家はそこそこ綺麗な思い出に戻ったよ。
私がここにいたことは無意味じゃなかったと思えた。
鍵をかけて、社名が剥がされたドアに最後のお疲れ様を言った。
I'm not still here だね。
でもこの先の日々にもきっと、その歌声は手を繋いで波打ち際を歩いてくれるんだと思う。
これからも、いつもそこに。
