真夏の夜の夢

今日も暑いのに沢山の患者さん。

どんな患者さんが来ても慌てることがなくなったのはいつからだろう?

新卒1年目、必死だった。

その日は深夜勤で私はフリーで動く係だった。

整形外科の病棟は発熱患者がたくさんいて、助手さんが日勤中に氷を目一杯補充してくれていたが、準夜勤で尽きてしまった。

「手が空いたら氷を取りに行ってくれる?」

リーダーに頼まれて一通り処置が終わると、私はワゴンに大きなバケツを乗せて製氷機のある地下2階に向かった。

整形外科病棟は1階からエレベーターで地下2階へ、エレベーターを降りるとすぐ右手に大きな製氷機がある。

薄暗い地下2階。戦後にできたこの建物の地下2階はもとは病室だったため小部屋がたくさん並んでおり、いまは物品の保管庫になっている。

私は製氷機の前にワゴンを停めた。

製氷機のフタを開けて氷をどんどんバケツにいれてほぼ満杯になったとき、

あれ?さっき来たときリネン庫が開いてたっけ?

と思った。視界の端でリネン庫のドアが開いているような感じがしたのだ。

エレベーターを降りて斜め右の向かいがリネン庫。私は全身に鳥肌が立つのを覚えてゆっくり後ろを振り返った。