以前、相棒の前ちゃんにインカムを着けようぜと、一式預かったのだが、Araiの新品に替えたばかりの頃で、ヘルメットがまだ頭になじんでないせいかインカムのスピーカーが耳に痛くて、せっかくのインカムを返したことがあった。
それ以来、バイクを走らす時に耳に聞こえる大部分は、風の音と、自分の鼻歌だけであった。
もともと音楽は、民謡、演歌から、ロック、ブルース、ジャズと、広く浅くなんでも聞くのは好きなのだ。
今回、娘から使わなくなったウォークマンを譲ってもらったのをきっかけに、ヘルメット用スピーカーと言うやつを着けてみた。
ヘルメットがヘタってきたせいか、耳に当たらないように少し工夫もしたのだが、なんとか耳が痛くならずに、音楽を聴きながらのバイククルージングというやつが可能になった。
ただし、高速道路だけ。一般道では、色々と気を使うのか、音楽が邪魔になる。高速道路で、半分風に混じった音が聞こえる様になった。
伊勢湾岸道の、いくつも続く海上橋を走る。
雨の高速道路、スピードを80キロまで落とし、ボブディランのLike A Rolling Stonに耳をすます。
朝から続く雨が小降りになり、代わりに風が出てきた。
How does it feel~ How does it feel~♪
どんな感じだい?って、そりゃ寒いし気分が良いってわけにはいかないけど、でもね、走ってりゃあ、、、さ。
新名神信楽ICを降り、ウォークマンをOffにして走りだした307号線沿いには、両側に何軒も信楽焼きの店がある。どの店も、店先に何十体もの酒瓶をぶら下げたタヌキの置物が並んでいた。
すべてを見て回るほど時間はないし、店を決めるのにも目移りして決められない。とりあえず「陶芸の森」へバイクを乗り入れた。
あいにく、メインの(?)陶芸館は冬季のため休館だったが、信楽産業展示館で様々な信楽焼き窯元の作品を見物して、信楽焼きがタヌキばかりでは無い事がわかった。土産に湯呑みを買った。
その後、信楽駅前のでかいタヌキの公衆電話などを見物して、信楽を後にした。
信楽は、甲賀の地にある。甲賀といえば甲賀流忍者が有名だ。そして、峠を越えた先にもう一つの忍者の里、伊賀がある。
滋賀県と三重県に分かれてはいるが、忍者の里を代表する「甲賀」と「伊賀」が、以外に近い事を初めて知った。
伊賀の市街地に向けてバイクを走らせ、上野城の駐車場でヘルメットを脱いだ。
上野城の周りには、忍者屋敷の他に「芭蕉翁記念館」や芭蕉の没後300年を記念して建てられた「俳聖殿」等がある。
ここは一つ、旅人の大先輩である芭蕉翁について勉強しようと、時間をかけて記念館を見学した。
そして、伊賀上野城。
ここには、日本二の高石垣が残っている。
柵の無い石垣の上に立ち、雨雲のたれ込めた伊賀の町並みを眺めた。ちなみに、日本一の石垣は大阪城らしい。50センチほどの差らしい。
雨は止んだが、太陽は結局顔を出さなかった。
久しぶりに訪ねた松阪駅前は、クリスマスのイブイブという事で、多少華やいだ雰囲気に見えた。
冷えた身体をホテルで温めて、松阪の街に繰り出す。カップルを横目で見ながら、目指すは、松阪牛だ。
さすがに本場だけあって、焼き肉屋の看板があちらこちら目に付くが、俺に縁があるのはホルモンの暖簾。
煙りが外まで匂っているホルモン屋に乗り込んだ。
店内は、地元らしい客であふれていたが、運良くカウンターに陣取る事が出来た。
ビールと松阪牛内臓セット、それにハラミをオーダーして、ゆっくり上着を脱いだ。
少し焦げ目が付いたホルモンを、炎の上がる七輪から味噌ダレにつけて口に入れる。ビールで喉に流し込む。やはり、旨いなあ。
松阪牛のホルモンだからか、その思い込みがあるからか、とにかく旨い。雨の中を走ってきた甲斐があるというものだ。
キムチとホルモン、焼酎のウーロン茶割りを追加して、松阪の夜は更けていった。
翌朝、ホテルの無料サービス朝食のご飯をおかわりして腹を満たし、松阪駅前を出発した。
目指すは、樹齢150年とも200年とも言われている「山茶花(サザンカ)の大木」。
冬の朝は寒いが、晴れた空が気持ちいい。松阪の山並みを眺めてギヤをシフトアップした。
この山茶花は、綺麗だった。盛りの時期を半月以上過ぎているとのことだが、沢山の花をつけ、木の下の道を花びらで色づけている。昔の種なのか、現代の山茶花に比べ随分色が薄い。薄いというより、桃色で美しい。それに、いい香りがする。木の周りに居ると、風が吹くたびに甘い香りに包まれた。匂いに誘われたのか、メジロが何羽も花と花を飛び回っている。
何枚も写真を撮った。
これが、現代の山茶花。色が随分違うし、匂いも無い。
「小津安二郎青春館」。言わずと知れた日本を代表する映画監督の記念館だ。
途中の道の駅で、松阪の観光マップを眺め直していて、ふと目に止まり、行ってみようと再び松阪の街へ戻った。
朝走った道を戻り、愛宕町という歓楽街の一角にそれはあった。
こじんまりとした青春館の正面にバイクを停めさせてもらい、中に入ると、他に誰もいないのにわざわざ15分ほどの小津安二郎の紹介ビデオを上映してくれた。
小津映画と言えば、原節子や、笠智衆などが出ている事は知っていたが、まともに映画を見た事が無い。帰ってからの楽しみが出来た。ただ、古い映画なんで、レンタルビデオ屋にあるのかが心配だ。
再び松阪市街を離れ、山道を通って津市に抜けることにした。
ここで、道に迷った迷った。
山の中の細い道を、ぐるぐるぐるぐる1時間以上走り回ってしまった。GPSを出せば簡単なことなのだが、迷いっぱなしもソロの楽しみ。ぐるぐるぐる暗い山道を楽しんだ。
それでも、センターラインのある道に出た時には、やはり安心して自販機前で一服した。
ここで今回の旅も終り。津市を通る伊勢湾自動車道から高速に乗り、家路に就いた。
ヘルメットの中で、再びボブディランが唄う。
How does it feel~ How does it feel~♪
どんな感じだい?って、旨いものも食べたし、色々刺激も受けた。い~い感じの旅だったよー!



















