ああ、お腹いっぱい食べたなぁ。
秋って、食べ物が美味しくなるから困っちゃうよ。
そうでなくても、梅さんのつくるご飯は美味しいんだもん。
…ちょっと身体を動かしたほうがいいかもしれない。うん。
「ん?」
食後に、梅さんのお手伝いでテーブルを拭いていた私は、
誰かの視線を感じて、顔を上げた。
「佑?どうしたの?」
向かいのテーブルに座ってた佑が、
頬杖をつきながら、私をじっと見つめてる。
な、なんだろ、すごい真剣な目つき。
声を掛けても、ぜんぜん気がついてない様子で、
困った私はもう一度、彼の名前を呼んだ。
「ゆーう?」
「へっ?あ、俺?」
はっとした表情(かお)をした佑は、
そこでようやく私の顔を見た。
「…なに、見てたの?」
訊きながら、視線と口調がどうしてもきつくなってしまう。
だって、視線から「ドコ」を凝視してたのか、なんとなくわかってたから…。
「いや、薫、胸でかくなったなあって思ってさ」
佑の一言に、部屋の空気がぴきーんと固まったように感じた。
私はと言えば、頭が真っ白っていうか、目の前が真っ白って言うか…
とにかく、言葉を失ってた。
「ゆ、佑!ダメだよ、女の子にそんなこと言っちゃ!」
ハッ!
…と、透、ナイスフォロー。
「え?いいじゃん。別にちっちゃくなったって言ってるわけじゃねえんだし」
そういうこと言ってるんじゃないんだってば!と真っ赤になる透に、
佑は「え、いいことだよな?」と背後のソファに座る啓一郎を振り返る。
うわ、啓一郎の顔が、見る間に真っ赤になってる…。
佑、このテの話題を啓一郎に振っちゃダメだよ。
「お、俺は…よくわからねえ」
あ、なんかホッとした。
うん、啓一郎が「ああ」なんて肯定したら、
それこそ、何て言っていいかわからなくなりそうだもの。
「でも、啓ちゃんだって気づいてはいたんだろ?」
佑の言葉に、ふいっと顔を逸らす啓一郎。
な、なんでそこで否定も肯定もしないのー!?
え、え、え、まさか啓一郎も、そう思ってたの?
私の胸が、その…おっきくなってるって?
「っ!」
佑が亮に視線を向けると、
亮も慌てて目を逸らしてる。
う、嘘でしょ。
私は、救いを求めるように透を見る。
「わ、私は気がつかなかった…よ?」
両手と首をあわあわと横に振る透。
じゃあ、男の子だけが気づいてるってこと?
怖すぎる結論に、頬に熱が集まっていくのを感じながら、
私は恐る恐る、零を振り返った。
「…言われてみれば、確かにそうかもとは思うけどな」
今確認しないでくださいーーーー!!
「ねえ…なんでそんなこと、皆が気づくわけ?」
彼氏である俺を差し置いてさ、と。
今まで聞いたことのないような不機嫌な声が、
私の背後、零の隣辺りから聞こえてきた。
そ、そうだよね。
晃なら、気づいたら一番に言ってきそうなものなのに。
「そんなの、決まってんじゃん」
にしし、と面白そうに笑う佑。
その目が、悪戯っぽく眇められたと思ったら…
「晃は、普段から触り慣れてて気づけなかったんじゃねーの?」
…!!
「へ?あれ、図星か?」
冗談のつもりだったのか、拍子抜けしたみたいな佑の声。
ご丁寧にエコー付きで、遠くから聞こえてくるような…
「…な、ワケないでしょ?」
学校でそんなコトできる場所はないし、
寮内じゃ、梅ちゃんの監視下でますます不可能だし、って晃が苦笑してる。
一瞬でパニクった私に比べて、晃はさすがに平然としてるなぁ。
「でもよー、じゃあなんで薫の胸が急成長したんだ?」
もしもし?
冗談のつもりだったんじゃないの?
「単に、育ち盛りってだけじゃない?」
「じゃあ透は…」
「っ…私のことはいいのっ!!」
自分を指差してくる佑に、真っ赤になって怒る透。
その剣幕に、佑がちょっとたじろいでる。
そりゃ、女の子に胸の話はタブーだもん…今更だけど。
「まあ、個人差はあるでしょ」
「そんなもんかなあ…」
そう言って、ちらりと私の胸を見る佑。
も、そんな目で見ないでってば!
慌てて、台布巾を握り締めた反対の手で胸を隠すけど、か、隠し切れない…。
と、肩にふわっと、あったかくて柔らかい感触。
肩を見てみると、そこには赤いチェックのネルシャツが掛けられてた。
「薫ちゃん、ちょっと薄着すぎ。それ着てなよ」
確かに、薄手の長袖のカットソーじゃ、
身体のライン、出ちゃうかも。
言われて、すぐにシャツに袖を通した。
わ、あったかい。温もりに、ほーっとため息。
「でもよー、じゃあなんで晃は気づかなかったんだよ?」
ぎくり。
落ち着いたかと思ってた話題が、
再び、元に戻ってしまった。
「…触らなくても、しょっちゅう近くで見てたらわかんないよ」
どーせ、そーゆーコトで頭いっぱいですから、と付け足して、
晃は私の腕を引っ張ると、食堂から退散した。
(それで?どのくらい大きくなったの?)
(せ、先月、お店で測ってもらったら、Bから…Cになってた)
(へんなこと訊くけど、お母さんって胸、大きい?)
(?ううん、普通くらいだと思うけど)
(…じゃあ、やっぱり俺が大きくしたのかな)
(っ!!!!)
※昔から、「好きな異性に胸を揉まれると大きくなる」と言う都市伝説がありますなw
あれ、女性ホルモンの影響という説があるらしいです。
2010.11.04
目次
恋愛小説(純愛)ブログランキング
拍手ボタン ←面白かったら、拍手お願いしまーす!