今俺が一番ハマッている作家、それはジェフリー・ディーヴァー。
その筆力は、最近読んだミステリー作家の中では群を抜いていると思う。
数ある彼の作品の中から今回紹介するのは、映画化されて話題にもなった、リンカーン・ライムシリーズ第一作、「ボーン・コレクター」。
ボーン・コレクター主人公リンカーン・ライム(映画ではデンゼル・ワシントンが演じた)は、元NY市警の熟練鑑識員。現役時の彼は誰もが一目置く凄腕鑑識官で、NYのことなら隅から隅まで把握し、現場に残された砂粒一つ、繊維一本から犯人を追いつめることができた。ところが、警察官が被害者となった殺人事件で地下を捜査している最中、トンネルが崩れて生き埋めになり、頸椎を破損したことによって彼の人生は変わる。現在の彼に動かせるのは首から上と、わずかに左手の薬指のみ。傍若無人なその性格は以前と変わらなかったが、今では訪ねてくる友人もなく、介護士のトムに悪態をつきながら無気力な日々を送っていた。そんな彼のところに、ある日、昔の仲間だったNY市警の刑事たちが訪ねてくる。その日、仕事でNYにやってきた一組の男女が、タクシーを装った何者かに拉致され、そのうち男性の方が、指の肉をそがれて生き埋めにされた死体で見つかった。ライムの家にやってきた刑事たちは、謎だらけのこの事件で、一刻も早く拉致された女性の居所を突き止め救い出すため、「一民間人として」事件解決に協力して欲しいとライムを訪ねたのだった。気が進まないながらも事件に協力することになったライムは、その持てる知識をフルに使い、犠牲者の男性の第一発見者となった、交通課の女性警察官アメリア・サックス(映画ではアンジェリーナ・ジョリーが演じた)を自分の手足として動かしながら、犯人に迫る。というお話。まずすごいのは、その捜査の様子の描写のリアルさ、詳細さ。ガスクロマトグラフなど、最新の捜査技術が次々と出てきて、証拠が次々と浮かび上がり、そしてその証拠に、天才ライムの頭脳が次々に意味を見いだしていく。シャーロック・ホームズを100倍濃厚にした感じの捜査方法には、ただただ感心してしまう。そして、人間関係の複雑さ。ライムを含め、捜査に参加する人間は、それぞれに問題を抱えている。問題を抱えながら、他人を救うため、自分の人生の意義を見いだすため、それぞれの理由のために捜査に関わっていく。例えば、アメリア・サックス。彼女は赤毛の超美人だ。一目見て誰もが目を奪われる彼女は、警察官になる前はモデル事務所に所属していた。父親は元警察官で、周りからは「万年巡査の娘」と陰口をたたかれている。たまたま現場に居合わせた彼女に感じるところがあったライムは、独断で彼女を手足として使うことにするが、最初、彼女はそれが面白くない。反発するアメリアにライムは根気強く接し、次第に二人はうち解けてくる。このあたり、ありがちだけれどちょっとジーンときてしまういいところだ。さらに、この小説、というよりもディーヴァーの小説最大の魅力は、「どんでん返し」。味方だと思っていた人間が敵だったり、敵だと思っていた人間が味方だったり。複雑な人間関係の中で状況は二転三転し、最後のページまで全く気が抜けない。映画・小説ともに評判が高い作品だけれど、小説の濃密さは格別。ドキドキしたい、面白い本が読みたい、そういう人に今一番勧めたい本です。