5年2組 陽介先生 1 | blondcoco の人生相談

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夏休みが終わり、二学期が始まって 二週間程が過ぎていた。

ひなびた小学校5年2組では、その日 4時限目の国語の授業が行われていた。

公立の小学校の為、エアコンはない。

教室内は 子供たち36人の熱気もあり、かなりの暑さであった。

5年2組担任の陽介は、夏目漱石「こころ」について、子供たちに分かりやすく解説をしていた。

その時であった。「先生!」という声がして、黒板に向かっていた陽介は 後ろを振り向いた。

たけし君が 手を挙げていたのだ。

「あのですね、先生。漱石の「こころ」を解説しても、あまり意味がないと僕は思うんです。

文学というのは、それを読む人が 漱石と同じレベルか、それに近い所まで上がってきた人にしか、理解できないものだと思うんです。

小説のレベルを無理に引き下げて、小学生の僕たちに分かりやすく解説してくれるのは感謝しますが、漱石は 多分そういうことは望んでなかったと思います。

漱石に限らず 文学者は、この小説を理解したければ この高みに君らも上がってきたまえ、と 僕たち読者に挑戦状を叩きつけているんです。

分かりやすくしてしまうと、それは 文学ではなく、ただの説明文になってしまうように思います。

文学(小説)は、断じて説明文であってはいけない、と 僕は思います。

そこら辺の 家電などの、取り扱い説明書とは訳が違うんです」

教室中が、し~んと静まりかえった。

教室の中に、冷気が混じった。

子供たちは、一瞬 自分たちが シベリアの小学校にワープしてしまったのではないか?と 感じる程だった。

陽介は、教室内のフリーズしてしまった空気を少し暖めようと、こう応えた。

「たけし君の今の意見は、先生も正論だとは思う。

でもね、それだと 国語の授業は ほとんど成り立たなくなってしまう。

たけし君も知ってるとは思うけど、今 ディスレクシアの子供たちが、すごい勢いで増えているんだ。

だからね、小学校教育というのは、そういう子たちの為にも 分かりやすく説明しなければいけないんだ。

そのことは、判ってくれるよね」

たけし君は 応えた。

「わかりました。僕の方こそ、自分の主張を言いすぎたかもしれません」

その時、少し低音のハスキーボイスが 飛び出してきた。

「あのう、先生!ディスレクシアって何ですか?」質問したのは、みゆきちゃんだった。

陽介は、それにも応えた。

「ディスレクシアというのは、読字障害のことだ。

今の子たちの多くは、みんな 文字は読めるけれども、その内容は ちっとも理解できてない。

つまり ディスレクシアとは、そういうことなんだ」

みゆきちゃんは、もう一度 手を挙げて発言をする。

「あっ わかりました、先生!それは たとえば ゆかちゃんが、ひなびた町の雑貨屋さんで『上段は修正テープです。下段はテープのりです』と POP に書いてあるのに、テープのりのつもりで修正テープを買っちゃうことですよね」

教室中が どっと笑い、再び ゆかちゃんを除く35人の熱気に包まれた。


ゆかちゃんは、みゆきちゃんの無神経な言動には、いつものことながら 辟易させられてしまうのだ。

一人 シベリアの極寒の小学校にワープしたままの、ゆかちゃんであった。

でも、隣の席の たけし君を見ると、彼は目で こう云っていた。

(大丈夫だよ、ゆかちゃん!それは 単なる勘違いというものなんだ。ディスレクシアとは違うよ)




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文章が、井戸端を求めている。

文章が、井戸端に書いて欲しいと せがんでくる。

だから、井戸端は書くのだ。

行き場のない、迷路のような街を歩きながら、

暑くもないのに 額に汗を浮かべて。










ひなびた町の雑貨屋さんでは、お店の後継者を探しています。

君らしい雑貨屋さんを、創ってみませんか?

君の人生を、変えてみませんか?

尚、現状のお店の写真は、6月のブログ「女性のポジション」の中に アップしております。