2027年の11月中頃、短い秋が終わり、冬の訪れを感じさせる 肌寒い日の午後のことでした。
たけし君は、商店街を歩いていました。
いつものように、猫のタマも いっしょでした。
たけし君は、ママから頼まれた買い物メモを手にして、商店街のはずれにある 1000円均一ショップに向かっているのでした。
たけし君は、現在 10歳(小学5年)でした。
タマは、1歳のメス猫です。
たけし君は、時々 不思議に思うことがあります。
僕って、1974年生まれなのに 何故10歳なんだろう?
友達は大人になって 会社の部長なんかになってる奴もいて、時々 飲みにも誘われるけど
「ボクは まだ10才だから、お酒は飲めないんだ」と断るしかなかったのです。
たけし君の所へ 猫のタマがやってきたのは、彼が10歳の時 1984年のことでした。
タマは ふわりと やってきたのです。
たけし君がサッカーのボールを追いかけて 公園のベンチの下へもぐって取ろうとしたら、そこにタマがいたのです。
なんだか胸がキュンとなって、家へ連れて帰りました。
そのあと、たけし君とタマは そのまま年を取らなくなってしまったのです。
それに 最近 気づいたんだけれど、たけし君もタマも 影がないんです。
こうして商店街を歩いていても、西日に照らされて 通り過ぎる人たちは、あたりまえのように 黒く長い影をひきずっていました。
「ボクとタマには影がない。このことが 年を取らないことと関係があるんだろうか?」と 近頃はよく考えています。
それに たった10年前の2017年には 確か100円ショップだったのに、いつの間にか1000円均一ショップになっていて、
そのことをちっともみんな不思議に感じてないことも、よくわかりませんでした。
パパはもうじき75歳で、定年を迎えます。
パパの悩みは、退職金が多すぎてどうしようと 困っています。
パパの会社は小さな所なのに 退職金が3億円もあって、その使い道に頭を悩ませているのです。
なにしろ 法律で銀行へ預けられる金額は ひとつの銀行で1000万円までで、最高でも三つの銀行に分けて3000万円までとなっています。
それ以上もし預け入れたら、全額 国に没収されるのです。
ならば 家に置いてタンス預金をとも思ったのですが、一年前の法律改正で タンス預金が発覚した場合は、ペナルティとして全額を州に没収されるのです。
あっ、ちなみに今はもう 県がなくなって 州になっているのです。
千葉県は茨城県、埼玉県と合併しました。
たけし君の友達も、52歳になってやたら給料が増えて困ると言っていました。
給料が毎月300万円あるので、なかなか使い切ることが難しいと言っています。
なにしろ タンス預金も銀行預金もNGという社会なので、ひと月以内に そのすべてを使い切らないといけないのです。
そんな訳で 安い100円ショップでは お客さんが少なくなって経営難となり 4年前に1000円均一ショップになりましたが、それでも
お客さんからは安すぎると苦情が来て、とうとう来年の春からは 1万円均一ショップになるようです。
「お菓子ひと袋が1万円なんて、ボクが子供の頃には考えられなかった」と たけし君は そう思ってふと笑ってしまいました。
「だって、ボクはまだ子供じゃん」
タマが じっと たけし君を見ています。
「ボクたちだけ、なんで 年を取らないの?なんで 影がないの?」