こんにちは。科学する料理研究家さわけんです。
先月、NHKのあさイチで焼き天ぷらをご紹介して割と反響があったのでまとめを書いておきたいと思います。
今回の焼き天ぷらは「少ない油で天ぷらを食べる」事を目指して作ったレシピです。
なので油は大さじ3でちゃんとした天ぷらができないか?という開発目標がありました。
大さじ3でそれっぽいものなら簡単ですが、目標は食べた時にサクッとした食感があり、薄衣で油っぽさがなく中身の味が美味しく感じられるものなのです。
難しいですね。
何が難しいかと言うと衣の軽さを出すのが大変なんです。
普通の天ぷらは油がたくさんあり、衣を投入すると瞬時に衣の水分が沸騰し膨らんで小麦粉の生地を押し広げて蒸発します。
これにより衣に気泡ができてサクッと軽くなります。
しかし今回は大さじ3でフライパンを使うので衣が一気に膨らむのは脂と接した部分だけなのです。
となると小麦粉の濃度はできるだけ低くし、固まった時に厚くならないようにしなくてはいけません。
そして可能な限り小麦生地に穴が開くような配合を考えないといけません。
市販の焼き天ぷらの衣もあるので試してみたらサクッと感は出て食感はいい。
ただ見た目が天ぷらというかパコラっぽい感じに見える。
衣を自作するならもう少し天ぷらに寄せなくては情報の価値が低いな〜。
と言うわけで方向性はサクッと食感+お蕎麦屋さん的な天ぷらっぽい見た目。
+材料を極力減らす=粉は1種類で卵は余るので使わない、それでもザ天ぷらにする!
これです。
で色々考えた末、こうなりました。
ちょっとアップにすると
いかがでしょうか、結構いい感じにできましたね。
と言うわけで動画はこちら!
レシピも書いておきましょうね。
<さわけんの焼き天ぷら 衣の配合>
小麦粉 大さじ4(40g)
水 100g+花の調整用小さじ1〜2
油 小さじ1
塩 ひとつまみ(なくてもいい)
油 底にうっすら一面(フライパン底面直径18cmで油65ml程度)
*エビや魚は下粉(片栗粉)を使う。
ポイントは衣の薄さ。
底面しか焼けない「焼き天ぷら」では衣が一気に油に触れない。
油に触れた底面しか膨らまないので、濃度のある衣では団子になりやすい。
なので衣をシャバシャバにして厚くつかないようにして衣の薄さを確保する。
薄ければ固くてもサクサクに感じるので油を加えて衣が薄く伸びるようにする。
考えた事はこちら!
<衣は軽めのざっくりするものにし、タネに片栗粉を薄くつけて衣を薄く乗せる>
・小麦粉でグルテンを出して固くする。
<パリッと感を出す>
・液体多めでシャバっとさせる。シャバっとしていても油が少ないので衣が逃げない。
<衣を薄くして固すぎない食感にする>
・油を入れ、衣にこまかい穴が開くようにする。
<グルテンをパリッと食感にするため>
・酢はグルテンを軟化させるので今回は不要。パリッと感の薄衣でいいのでは?
・卵は軟化するので無し。
<ネタから出る蒸気に負けない衣にしたい>
・下粉は片栗粉を極薄くつける。もしくは材料を減らすなら粉無しでも可か。
・小麦だと粘り感が出やすいので薄くつけられるなら有。
<火通りにあわせて下処理するか時間をかけて焼く>
・火の通りにくい具の厚さは薄くする。またはさつま芋は一度レンチンしてもいい。
・水分の多い舞茸も薄くカットする
<焼き方>
・焼き方はずらしながら投入して衣をはみ出させ、具に火が通ったら裏に返し、衣を足して裏に返す。
その後、具に火が通るまで焼く。具の火通りと水分量で結構時間がかかる。
<エビはどうする>
・花は衣の一部をとって水を足し散らすが、元々さっくり衣なのでそんなに量は要らない。
・衣を直接油に散らせてエビで巻き取る感じでもいい。
・エビは正直花を咲かせるのが面倒なので野菜と同じ方法で焼いていいと思います。
・ワカサギやキスも薄くて火が通りやすいのでうまくいきます。
・サクサクを長持ちさせるコツはしっかり水分を抜くようにじっくり焼く事です。それでサクサクが長続きします。
さわけんシェフ 2024年1月