◯おいしい焼き芋を作るには
冬の定番「焼き芋」はどうすれば美味しくなるのかを考えてみました。
まずはおいしい焼き芋の条件ですが、一番に「甘い」事でしょう。
そして甘さをダイレクトに感じるために「ねっとり感」も重要ではないでしょうか。
甘くてねっとり、ついでにしっとりだとおいしいですね。
*甘くするには
焼き芋の原料はさつまいもです。
近年は安納芋など糖度の高い芋が数多く出てきていますので、品種を選ぶのも重要です。
品種によってはねっとりしない物や甘さが焼き芋向きでない物も有りますので要注意です。
関東だと紅あずまが定番です。
麦芽糖の増加率で見たら「ひめあやか」が良く、トータルの甘さを追求するなら「シルクスィート」がオススメです。
そしてさつまいもは寝かしが重要です。
掘りたてのさつまいもはベースの糖度が低く、美味しくありません。
さつまいもは掘ったら1ヶ月~2ヶ月程度熟成させると加熱前の糖度が上がって甘さの底上げができます
熟成させる場所は10度を下回らない場所です。温度が低すぎると腐敗しますので注意して寝かしましょう。
さつまいもの準備ができたら次は加熱です。
さつまいもを焼くと甘くなるメカニズムは、βアミラーゼという酵素が加熱によりさつまいものデンプンから麦芽糖を作るからです。
ちなみにさつまいもは生の状態でも5%前後の糖分(スクロース)はあり、甘さの成分も麦芽糖(マルトース)だけではないですが、温度で増すのが麦芽糖なので麦芽糖中心に話を進めます。
なのでデンプンの多いさつまいもをβアミラーゼをよく働かせながら焼くと甘くなるわけです。
注意点は温度です。
・麦芽糖ができ始めるのはさつまいもデンプンの糊化し始める60度くらいからです。
・麦芽糖ができるピークは75度です。
・βアミラーゼは酵素ですので65度を過ぎると失活が始まり、85度で完全に働かなくなります。
という事は60度~75度の温度帯で時間をかけて麦芽糖を増やしてやると甘くなるわけです。
(ちなみに75度でのβアミラーゼの残存率は30%前後です。)
これでさつまいもに含まれるデンプン量に応じて最高の甘みが出せますね。
(ただし、クイックスイートは糊化温度が20度ほど低いので早く甘くなる)
麦芽糖がしっかり増やせたら次は食感です。
ねっとりした食感を生むのは品種に依存しますが、重要な事は温度を上げて中身を柔らかくする事です。
さつまいもの中に麦芽糖が増えていたら甘いのですが、食感がサクッと固めだと甘い気がしません。
なので十分に温度を上げて時間をかけて中身を煮崩すイメージで焼きましょう。
中身が柔らかくなる+麦芽糖が多い=おいしい焼き芋となります。
**さわけん的焼き芋理論の結論**
焼き芋は芋の中心温度65度~70度を長時間(30分程度)キープの後、高温でさらに焼き、水分をある程度抜く。
やり方はなんでもOK、この温度変化さえ守れば甘い焼き芋になります。
では実際に焼き芋を作ってみましょう。
さわけん的に言うと炊飯器の保温機能で70度で茹でてから焼くと言いたいところですが、今回はもっと簡単にオーブンで焼くだけにします。
オーブンは180度で焼きます。
でも180度だと低い温度をキープして糖化の促進ができないので最初は電子レンジを使って芋の中の温度を65~70度に上げて、130度のオーブンで焼き始めます。加えて「クシャクシャホイル」を使い温度の伝わりを遅くします。
ホイルをくしゃくしゃにしてぐるぐる巻いて焼くと空気の層ができて熱がダイレクトに伝わりにくいので低温焼きの時間帯に有効です。
高温加熱時にはちょっと効率が悪いのですが麦芽糖を増やすためなのでOKです。
ぴったりホイルを巻いて焼いた焼き芋。白っぽいところが気になります。
クシャクシャホイルで焼いた芋。しっとりとしています。
余裕があれば、ぬらした紙で巻いてから焼くといいでしょう。
以上を踏まえてレシピです!
◯ポテンシャルを十分引き出す焼き芋の作り方
さつまいも 1本
濡らしたキッチンペーパー 2枚
クシャクシャホイル 50cm
1、好みのさつまいもを買ったら2週間ほど野菜室で寝かせて熟成させる。
2、さつまいもを洗ってラップで巻き、200wの電子レンジで2~3分加熱する。
3、濡らしたキッチンペーパーで包み、クシャクシャホイルでぐるぐる巻きにし、オーブンに包んださつまいもを入れて130度のオーブンで30分~40分糖化させる。
4、180度~200度に温度を上げて30分焼く。
5、ホイルを開け15分焼いて水分を少しとばして完成!
これで焼き芋マスターですよ!
キッチンまわり評論家/科学する料理研究家・さわけん
**まとめ**
直径5,5cmのさつま芋なら電子レンジ200wで3分ほど加熱すると芋の内部を70度にできます。
そこからクシャクシャホイルで巻いて130度のオーブンで30分>180度に上げて30分で美味しくなります。
ちなみに右はあらゆる技を使って手間隙かけた結果、めちゃ甘になりました。