子 お母ちゃん、何とかしてえな。
父 お母ちゃん?
子 お父ちゃんから、お母ちゃんに何とか言
うて欲しいねん。
父 お前、無茶言うなよ。お父ちゃん、自分
のこともろくに、お母ちゃんに言えへんのに、
他人のことなんか言えるわけ あらへんがな。
子 他人ちゃうがな!
父 他人みたいなもんやがな。人間、死ぬと
きは独りやで。
子 死んでどないすんねん。…なあ、そんな
こと言わんと。今度、若奥さん、紹介するから。
父 お前、小学生のくせに交渉の仕方がオッ
サンみたいやな…まァ、ええわ。そう
いうことなら、話だけでも聞いたろ。
何や? 言うてみ。
子 お母ちゃんがな、ボクに勉強せえ、勉強
せえて言いよンねん。どない思う?
父 何がおかしいねん? 小学生が勉強する
のは当たり前やないか。結婚せえ、結
婚せえて言うんやったら問題やけどな。
子 それでも限度があるで。
父 お母ちゃんが、それだけお前のことを可
愛いと思てるていうことやないか。
子 鬼みたいな顔して言いよるねんで?
父 笑とるときは、もっと怖いがな。
子 そらそうやな。
父 お母ちゃんはな、お前が一生懸命勉強し
て、ええ大学に入って欲しいんや。
子 ええ大学に入ったら、何かええことある
のんか?
父 ええ大学に入ったら、ええ会社に就職で
きるがな。
子 ええ会社に就職したら、何かええことが
あるのんか?
父 ええ会社に入ったら、ええ給料がもらえ
るがな。
子 ええ給料もろたら、何かええことがある
のんか?
父 お前がええ給料もろたら、お父ちゃんと
お母ちゃんの老後が安泰やないか。
子 何や、やっぱり自分らのためかいな。
父 当たり前やがな。何のために安月給で無
理してお前を育ててると思てんねん?
子 何の自慢やな。
父 そうと分かったら、お父ちゃんとお母ち
ゃんのために、早よ、猛勉強してこい。
子 何がそうと分かったらや…そやけどお父
ちゃん。ええ会社、ええ会社て言うけど、
ええ会社て一体、どんな会社や?
〈 僕と親父の生きる道 ②へ つづく 〉