■滋賀県が考える新しい税を三日月知事に聞いてみた
滋賀県は鉄道交通の要衝として発展してきました。これからも持続的に発展させるには、公共交通の利便性な
くしては難しい。しかし今、人口減少や新型コロナウイルス禍による利用客の減少で減便が起きています。
滋賀県南部は京都、大阪のベッドタウンとして発展してきて、数少ない人口増加地域です。どれくらいの運行頻度でどれくらいの所要時間なのかが、選ばれる街になるかどうかの分岐点になります。資産価値にも直結し、死活問題と言えます。県内の市町村に意見を聞くと「不便になった」「以前の運行本数に戻してほしい」という話をたくさん聞きます。
■近江鉄道の存在
滋賀県ではもう1つ、近江鉄道の存廃問題があります。約120年の歴史がありますが、施設や車両の老朽化が進んでいました。16年ごろから議論を始めて、鉄道施設を県を含む沿線自治体が保有する「上下分離方式」で存続させることを20年3月に決めました。コロナ禍の後だったなら、この合意形成はさらに難しくなっていたと思います。
近江鉄道は総延長が約60キロメートル、33駅あります。全線の輸送密度は1902人(17年度)ですが、1000人に満たない区間もある一方で、近江八幡(同県近江八幡市)~八日市(同県東近江市)間は4681人(同じく17年度)と相当の利用があります。企業や学校が沿線に立地し、通勤通学の足として使われているのです。この区間をバス転換したら、バスが何台も必要になり、運転手も必要でコストが余計かかる。交通渋滞も招きます。鉄道のほうが合理的な区間です。
今後4年間で徴税を始め、財源を作るところまで行けるかどうかは微妙なところです。しかし知事3期目の政策集、公約に交通税を入れているので、「ここまで議論が進んだね」という何らかの前進、進捗を県民に感じてもらうことは重要と考えています。
今、全国でローカル線の存廃が議論になっています。どこの自治体にとっても共通のテーマなので、国が一律の制度を設けることになればいいとは思いますが、防衛予算も社会保障も増やさなければいけない中で、公共交通にどこまで財源が回るのか。待っていては間に合わないので、滋賀県は先に行くということです。
■三日月知事は以前、JRに勤務
私は政治家になる前の1994年から2001年までJR西に勤務し、運転士も経験しました。国会議員として公共交通に関する法律の制定にも関わり、今は自治体の長を務めています。それぞれの内情をある程度知っている立場からすれば、交通事業者と自治体との議論は早く始めたほうがいいと思います。共通認識を持ち、力を合わせて解決のために一歩踏み出すことです。
滋賀県で言えば、近江鉄道は厳しい状況にありますが、JRはまだ可能性があり、元気なうちに(議論を)やり始めるのが重要なことかもしれない。交通税の議論を進めていく過程で、交通事業者とも「もっと運賃を下げてほしい」とか、「運行ダイヤを何とかしてほしい」といったキャッチボールをできるようになるのかなと思っています。

