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国際AI五輪で日本の高校生が金メダル、2種のAI人材育成で日本は復活する
日経クロステック/日経コンピュータ記者
- 国際人工知能オリンピックで日本から参加した高校生4人が全員メダルを獲得した。
- AIをつくる先端人材に関しては、日本は決して海外にひけを取っていない。
- 日本が今後AI分野で巻き返すには、企業でAIを活用する一般人材の底上げが不可欠だ。
日本のAI(人工知能)国力が低迷している。米スタンフォード大学が2023年に調査したAI国力ランキングでは、日本は36カ国中9位と振るわない。米国や中国にあるような巨大なAI企業も日本にはない。日本が今後AI分野で巻き返すには、国民全員がAIを使いこなす「1億総AI人材」を目指す必要がある。日本が1億総AI人材を実現するための道を探った
国際人工知能オリンピックの4人の高校生メダリスト。左から鈴木温登さん、時田直哉さん、山井勇人さん、付聖宣さん
(写真:日経クロステック
「AI開発において、高校生の時点では世界との差はないと感じた」――
こう述べるのは、2025年8月に中国・北京で開催された第2回国際人工知能オリンピック(IOAI2025)で銅メダルを獲得した開成高校2年生の山井勇人さん。同オリンピックは、全世界の高校生(日本の高等専門学校生を含む)が集まってAI開発の実力を競うイベントだ。日本から4人の高校生が参加し、全員が金メダルを含むメダルを獲得した。
筑波大学附属駒場高校3年生の時田直哉さんは金メダル、同校3年生の鈴木温登さんは銀メダル、聖光学院高校3年生の付聖宣さんは銅メダルを獲得した。IOAIでは、金メダルは上位約12分の1、銀メダルは上位約4分の1、銅メダルは上位約2分の1の成績を獲得した参加者に与えられる。
山井さんは日本からの参加者4人の中で唯一の高校2年生だ。IOAIの存在を知ったのは、国際人工知能オリンピック日本委員会(JOAI)が2025年4月から5月にかけて開催した日本予選のわずか1カ月前。それまでもAIに興味を持っていたものの、AI開発について本格的に学び始めたのはそこからだ。JOAIのある理事は「これだけの短期間でAI開発の実力を付けたのはすごい」と舌を巻く。
一口にAI人材といっても実は2種類ある。AIをつくる「先端人材」とAIを使う「一般人材」だ。IOAIでメダルを獲得した4人の高校生は、典型的な先端人材である。
AIをつくる先端人材とAIを使う一般人材
(出所:日経クロステック)
彼らはいかにAIに興味を持ち、いかにAI開発の実力を上げていったか。今後の日本はAIに対してどう取り組むべきか。話を聞いた。
日本はもっと基礎研究に資金を
皆さんがAIに興味を持ち、JOAIに所属するに至った経緯を教えてください。
鈴木温登さん(以下、鈴木):(中高一貫校である筑波大附属駒場の)中学1年生の2020年からプログラミングをやっていました。当時は新型コロナウイルス禍中で、パソコン研究部なら活動しているとのことで、そこに入ったのがきっかけです。パソコン研究部では競技プログラミングが盛んでしたが、もともとAIには興味があったので2023年に高校に入ってから機械学習に取り組み始めました。その年の冬にIOAIの大会の存在を知りJOAIに入りました。
大会参加は2025年が2回目になります。
(2024年にブルガリアで開催された)前回大会では銅メダルでした。
時田直哉さん(以下、時田):AIに興味を持ったのは2023年の高1の夏です。親がディープラーニングの本を図書館で借りてきたのがきっかけでした。1年間、将棋ソフトをつくろうと頑張りました。2024年の高2の夏休みに同じ高校の鈴木さんと授業で知り合い、JOAIに誘われて入りました。
銀メダルを獲得した鈴木さん
(写真:村田 和聡)
金メダルを獲得した時田さん
(写真:村田 和聡

