富山県黒部市の「パッシブタウン」が完結、木の風合い生きる高層木造
木材使用率は平均的な耐火木造の約6倍に
池谷 和浩
ライター
富山県黒部市の「パッシブタウン」が完結、木の風合い生きる高層木造 | 日経クロステック(xTECH)

3棟の住宅棟を高層化し、距離を取って配置した。木造の構造技術が高まったことで、柔軟な配置計画も可能になった(写真:吉田 誠)
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2025年6月の完成後、視察が相次いでいる話題のプロジェクトだ。従来の耐火木造と比べて木材使用率を飛躍的に高め、「断熱等級7」の外皮性能を実現したことで、二酸化炭素(CO2)排出量を総合的に削減した。
富山県黒部市に位置する「パッシブタウン」は、YKKのグループ会社であるYKK不動産(東京・千代田)が12年越しでYKK社宅跡地を再開発した、自社運用の賃貸集合住宅だ。2025年6月、その第5街区がランドスケープも含めて竣工した。
YKK不動産の志水宏朗社長は第5街区について、「持続可能な社会にふさわしい、自然エネルギーを最大限に活用したローエネルギーの街づくりを目指す『パッシブタウン』の中でも、最終にして最大のプロジェクトだ」と位置付けを説明する。
街区には6階建て2棟、7階建て1棟の住宅棟(M~O棟)が立つ。その他、集会所棟、屋根に太陽光発電設備を備えた駐車場、これらを結ぶ屋根付きの回廊で構成される。住宅は計64戸で、建築部分の延べ面積は約9000m2。総事業費は86億円だ。
近隣に高層建築はほとんどない。そうした中で第5街区はあえて住宅棟を高層化し、建物のフットプリントを抑えた。「公園の中に住まう」というコンセプトの下、ランドスケープを広く確保する狙いがある
北側の住宅棟(M棟)から敷地全体を見下ろした。公園のようなランドスケープが広がる。中央にある丸みを帯びた建物は集会所棟で、回廊の屋根と共に屋上を緑化した(写真:吉田 誠)
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基本計画と建物の基本設計を担当したのは、
欧州を中心として
数多くの中大規模木造建築物を設計してきた
ヘルマン・カウフマン氏だ。
構造・設備の基本設計、建物の実施設計及び施工は竹中工務店が担当。検討段階からプロジェクトに参画した
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ヘルマン カウフマン Hermann Kaufmann
ミュンヘン工科大学建築工学科 木造建築学科 教授
Architekten Hermann Kaufmann ZT GmbH主宰(フォアアールベルク)
横畠 康 Koh Yokobatake
有限会社 艸建築工房 代表取締役
高知県立林業大学校非常勤講師
NPO法人チームティンバライズ
オーストリアのフォアアールベルク州から始まった、革新的な木造建築は2050年の脱炭素化の中で重要な意味を持ち、世界中から注目を集めています。その革新的な木造建築のパイオニアであり、技術を確立したヘルマン・カウフマン氏は、LCT-One(ドルンビルン)やシュムッタータル中・高等学校(バイエルン州)など数々の先進的な木造建築で国際的な賞を受賞し、評価されています。ヘルマン・カウフマン氏は従来の木造建築をオーストリアの伝統的な木造技術と革新的な製材技術を用いて大規模な高耐性構造を可能にし、新たな木造建築の可能性を切り開いた人物です。従来の木造建築を超える高い機能性と耐久性だけでなく、木造だけが可能にするモダンでサスティナブルなデザイン、脱炭素と循環性でコンクリートに替わる木造建築は未来を担う建築とも言われています。



