増え続けるデジタル予算、かすむ3割削減 試される松本デジタル相の手腕

大豆生田 崇志

 

日経クロステック/日経コンピュータ

 

 

政府情報システムの運用コストを2025年度までに2020年度比で3割削減するとした政府目標の実現が困難になりつつある。2025年10月21日に高市早苗政権が発足し、新たに就任した松本尚デジタル相がどんな手腕を発揮するか試されそうだ。

 

 

 

 

 

就任記者会見での松本尚デジタル相

就任記者会見での松本尚デジタル相

(写真:日経クロステック)

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 デジタル政策に詳しいインターフュージョン・コンサルティングが各府省庁の主要なデジタル関連予算を分析したところ、政府のシステム経費は「削減」どころか増加していることが明らかになった。デジタル庁が発足して以来、政府の情報システムに関連してデジタル業界の売り上げになり得るデジタル関連予算が増え続けているためだ。

 インターフュージョン・コンサルティングによると、政府のデジタル関連予算は新型コロナウイルス禍以降、当初予算に加えて複数年度で活用できる基金を主に補正予算で計上している。つまり当初予算で一時的に減っても、補正や基金で予算を積み増してきたわけだ。

 特に2023年度は基金を含むデジタル関連予算の合計額が7兆円超にまで膨らんだ。2023年度はポスト5G(第5世代移動通信システム)や先端半導体、重要物資サプライチェーン強靱(きょうじん)化支援、宇宙戦略などが加わり、さらに自治体システムの標準準拠システム移行に向けた「デジタル基盤改革支援基金」といった基金もつくられた。

 

 

 

 

 

 

デジタル関連予算の推移(当初予算、補正予算、基金)

デジタル関連予算の推移(当初予算、補正予算、基金)

(出所:インターフュージョン・コンサルティング)

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2023年度決算でシステム経費が1兆円超

 デジタル庁は一般会計に計上される政府情報システムの予算について、原則同庁に一括計上した上で各府省庁に配分して予算を執行している。各府省庁共通で利用する基盤となるシステムや、各府省庁がデジタル庁と共同で整備や運用を行う政策的に重要なシステムかつ一定規模のシステムが対象だ。

 決算でも政府のシステム経費の増加は明白だ。デジタル庁によると、2023年度決算では政府情報システムの運用と整備にかかるシステム経費の合計額が1兆円を超えた。経費の合計額1兆209億円のうち、最も多いのは厚生労働省の3275億円(全体の32%)、デジタル庁の1413億円(同14%)などだ。

 

 

 

 

 

政府情報システムの経費

政府情報システムの経費

(出所:デジタル庁の公表資料を基にインターフュージョン・コンサルティングが作成)

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 政府はシステム経費について大きく2つに分けている。1つは情報システムの運用、保守などに必要な経常的経費の「運用などの経費」。もう1つは、情報システムの新規開発や機能改修・追加、更改及びこれらに付随する環境の整備に必要な一時的な経費である「整備経費」だ。

 政府は官民データ活用推進基本法などに基づいて2025年6月に閣議決定した「デジタル社会の実現に向けた重点計画」で、政府情報システムの運用コストを3割削減するとした目標を維持。「運用などの経費及び整備経費のうちシステム改修にかかる2020年度の経費(計5383億円)を2025年度までに3割削減する」としている

 

 

 

 

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