グッドデザイン大賞に坂茂氏の木造仮設住宅、25年は建築の領域で受賞増加

森 英寿

 

日経クロステック/日経アーキテクチュア

 

 

グッドデザイン大賞に坂茂氏の木造仮設住宅、25年は建築の領域で受賞増加 | 日経クロステック(xTECH)

 

 

石川県珠洲市に立つDLT木造仮設住宅の外観(写真:日経クロステック)

石川県珠洲市に立つDLT木造仮設住宅の外観(写真:日経クロステック)

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 日本デザイン振興会は2025年10月15日、2025年度グッドデザイン大賞に「DLT木造仮設住宅」を選出したと発表した。能登半島地震で被災した石川県珠洲市と輪島市に建てられた仮設住宅で、坂茂建築設計(東京・世田谷)の坂茂氏が設計した。DLTとは、木ダボ接合積層材のこと。審査員は従来の仮設住宅に多いプレハブ型と比較し、DLT木造仮設住宅の住み心地の良さなどを高く評価した。

記者会見に登壇した坂茂氏(写真:日本デザイン振興会)

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 25年度のグッドデザイン賞は5225件あった審査対象の中から1次審査、2次審査を経て1619件が受賞した。25年度は建築の領域で受賞した作品は399件に上った。24年度の同368件と比べると増加している。受賞対象のうち評価の高いものはグッドデザイン・ベスト100として選出し、その中から大賞と金賞を含む特別賞を決定した。

 大賞を受賞したDLT木造仮設住宅は、木造2階建て応急仮設住宅だ。従来のプレハブ型仮設住宅と同等の建設コストで、天然の木を現(あらわ)しとした住み心地の良い仮設住宅を目指した。石川県珠洲市宝立地区に9棟135世帯分、輪島市堀町地区に3棟31世帯分を建設した。

 

 

 

DLTを内装の現しにして、利用者が木のぬくもりを感じられるようにした(写真:坂茂建築設計)

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 建物は坂茂建築設計が設計し、石川県建団連(金沢市)の一員である家元(金沢市)が施工。一般流通木材を加工した木質パネルであるDLTの製造は、長谷川萬治商店(東京・江東)が担った。グッドデザイン大賞は坂茂建築設計、家元、長谷川萬治商店の3社が共同で受賞する。

 審査委員は、「災害支援の経験からの物理的ノウハウに加え、被災者を中心に据えて思考するヒューマニズムはまさに建築家ならではの社会貢献である」と評価した。

 25年10月15日に開かれた記者会見で坂氏は、次のようにコメントした。「DLT木造仮設住宅は、能登半島地震より前から開発を行ってきた。施工者である家元、DLTの供給を担った長谷川萬治商店とチームを組んだことで実現できた。被災地で少しでも良い住環境を支援するため、今後も頑張っていきたい」

DLT木造仮設住宅の建て方の様子。DLTを箱型ユニットにして、市松状に積み上げることで仮設住宅を建設した(写真:坂茂建築設計