建設会社の24年度決算は増益が8割、25年度の情勢を「建物用途別天気図」でチェック
奥山 晃平
日経クロステック/日経アーキテクチュア
建設会社の24年度決算は増益が8割、25年度の情勢を「建物用途別天気図」でチェック | 日経クロステック(xTECH)
残業規制の適用に、建設費の高騰――。様々な経営課題に直面する中、主要建設会社の2024年度決算(単体)は堅調だった。建築一式工事の完成工事高が100億円以上の建設会社を対象にした日経アーキテクチュアの経営動向調査では、回答企業の6割が増収。営業増益を果たした企業は8割に上った。
日経アーキテクチュアの経営動向調査に2024年度と23年度の業績(単体)を回答した建設会社70社のうち、24年度の建築売上高が23年度から増加したのは41社。回答企業の59%が増収を果たした計算だ。
日経アーキテクチュアの経営動向調査に2023年度と24年度の単体の業績を回答した建設会社について集計した。左上が建築売上高、左下が建築受注高の集計結果を示している。中央が23年度、右が24年度の営業利益。24年度は営業増益が目立った(出所:日経アーキテクチュア)
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建築の受注高は、回答した69社の67%に当たる46社が23年度から増やした。上場大手4社はいずれも1兆円を超えた。
営業利益は、回答した70社の8割に当たる56社が23年度から増やした。増益だった企業の割合は22年度以降、2期連続で25ポイントずつ増えた。資材費高騰のあおりを受けた企業でも価格転嫁が進み、営業利益が急回復した。
大手は25年度も粗利率改善へ
個別企業について見てみると、建築売上高ランキングの上位15社中11社が増収だった。
日経アーキテクチュアの経営動向調査に回答した建設会社の24年度建築売上高(単体)トップ15。金額は1億円未満を切り捨てて表記した。図中のカッコ内は対前年度増減率(%)で、▲はマイナス。増減率が1000%以上となる場合は「―」とした。前年度の営業利益がマイナスだった場合も「―」とした(出所:日経アーキテクチュア)
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建築売上高トップは大林組で、23年度比4.6%増の1兆2977億円だ。2期連続の首位で、25年度も増収の見込みを示している。
23年度に6位だった大成建設は、同19.1%増の1兆1969億円で2位に躍進した。「沢井製薬第二九州工場新棟」(福岡県飯塚市)や「住友不動産六本木セントラルタワー」(東京都港区)が寄与した。
3位以下の竹中工務店、清水建設、大和ハウス工業、鹿島はそれぞれ、4~7%台の減収だった。順番自体は23年度と変わらなかったものの、大成建設が2位に割り込み、各社が順位を1つずつ落とした。
営業利益は、建築売上高の上位15社中12社が増益だった。そのうち10社の増加率は2桁以上だった。
大手については、23年度決算で清水建設が営業赤字に陥った他、大成建設と大林組もそれぞれ22年度比で2桁の減益を計上。収益面で苦戦してきたが、24年度は苦境から脱した。利益率を圧迫していた低採算工事の消化が進み、建設費高騰などを踏まえて選別受注した採算重視の工事が手持ちの多くを占めるようになったことが要因だ。
大手5社の建築工事の完成工事総利益率(粗利率)を見ると、清水建設は23年度比10.2ポイント増の7.3%、大成建設は同5.4ポイント増の4.4%となり、マイナスからプラスに浮上した。
大手5社の建築工事の完成工事総利益率(粗利率)の推移。25年度は予想。25年度の竹中工務店の粗利率は建設事業全体の値で、25年12月期中間決算の数値を示した(出所:各社の決算短信などを基に日経アーキテクチュアが作成)
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5社は25年度も粗利率の改善を見込む。鹿島の高林宏隆常務執行役員は25年3月期決算の説明会で「27年3月期までに10%台に載せたい」と述べている


