八芳園」が過去最大規模の改修でMICE獲得へ本腰、新生デザインは山﨑健太郎氏
日経クロステック 「八芳園」が過去最大規模の改修でMICE獲得へ本腰、新生デザインは山﨑健太郎氏 | 日経クロステック(xTECH)結婚式・宴会運営を行う八芳園(東京・港)は2025年10月1日、改修工事が完了した本館をグランドオープンする。宴会場の改修には、高まるMICE(国際会議や展示会)需要を取り込む狙いがある。婚姻数が減少する中、中核事業に国際会議などの非婚礼事業を取り入れ、新たな活路を見いだす。25年9月17日、メディア向けに公開した。
改修した八芳園の本館を庭園から望む。木を使った4階のテラスが目を引く(写真:日経クロステック)
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八芳園は東京都港区白金台に位置する日本庭園を備えた結婚式場だ。その始まりは400年以上前に遡る。徳川家康の側近の邸宅だった敷地が大正時代に日本庭園として整備され、戦後に結婚式場や宴会場が設けられた。本館では複数回の改修を繰り返してきたが、今回は八芳園にとって初の減築かつ過去最大の予算規模での改修となった。
改修設計は山﨑健太郎デザインワークショップ(東京・中央)、施工は安藤ハザマが担当した。宴会場の数を15から11へと減らし、庭園との親和性を高めた。一方で、1会場当たりの容量を増やし、国際会議など新たなニーズにも対応する。
八芳園取締役の関本敬祐総支配人は「やっとできた」と語り、3年以上かけた大改修が実を結んだことに達成感をにじませた。既存の建物に蓄積された思いが失われないように検討を重ねた。「デザインよりもどんな思いでつくったかを語れる場にしたい」との言葉からはこだわりがうかがえた。
2025年9月17日に開かれた会見で、改修した本館への思いを語る八芳園の関本敬祐総支配人(写真:日経クロステック)
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会見では今後の事業の展望も示された。24年9月期の婚礼事業売上高が全体の66%を占める状態から、30年9月期にはその他宴会や地域プロデュースなどの非婚礼事業の売上高を、婚礼事業と約1対1になるよう引き上げる構想だ。総売上高は95億円(24年9月期)から130億円(30年9月期)と、35億円アップを見込む。今回の改修も非婚礼事業に含まれるMICE需要を取り込むための布石といえる。
関本総支配人は婚礼事業と非婚礼事業の収益比率を同じ程度にする見通しを示した(写真:日経クロステック)
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設計者の山﨑健太郎氏は、
「八芳園からは当初、建物の建て替えとして相談があった。しかし、一番美しいのは北に庭があって、手前に人がいる構造。庭を生かすためには建物を残したほうがいいと考えた」と語り、建て替えではなく既存の建物を生かした減築という方法を提案した。「継承と創造」を改修テーマに掲げた八芳園と山﨑氏の方向性が一致した。
設計を担当した山﨑健太郎氏(写真:日経クロステック