心臓専門医で遺伝学者のエリック・トポル Photo: Sandy Huffaker for The Washington Post / Getty Images
“健康すぎる高齢者”研究の先駆者が実践する「老化を遅らせる」生活習慣 | クーリエ・ジャポン
健康すぎる高齢者”研究の先駆者が実践する「老化を遅らせる」生活習慣
誰でも今日から真似できる「若く生きるための方法
フィガロ(フランス)
Text by Jeanne Sénéchal
心臓専門医で遺伝学者でもあるエリック・トポルは「スーパーエイジャー」の研究に6年を費やした。スーパーエイジャーとは申し分ない健康状態の高齢者のことで、一般的に、実年齢より20〜30歳若い認知機能を持つ80歳以上の人々のことを指す。トポルが理解を目指したのは、退職後すぐに衰える人がいる一方で、なぜ病気にかからず健康を維持できる人がいるのか、その理由だった
Zoomの画面の向こうで、エリック・トポル(71)が青い水筒を持ち上げる。「朝、たくさん水を飲んで、夜には飲まないようにしているんです」
この予測医療の先駆者は、何ごともないがしろにはしない。心臓専門医から遺伝学者になったトポルは、68歳のときに水分補給、睡眠、食事生活などを徹底的に見直した。病気を「治療するよりも、かからないようにする」という願いから、遅まきながら古き良き方法に新しい価値を見出したのだ。
取材の数日前、彼は米スタンフォード大学長寿センターの会議に参加し、そこで新著『スーパー・エイジャーズ:科学的根拠に基づく長寿のためのアプローチ』(未邦訳)を紹介した。この本は、一度も大病をせずに90歳、100歳になった男女を対象にした、膨大な研究の成果である
彼らの健康長寿の秘密は、おそらくゲノムの中にあるだろうとトポルは考えていたが、その考えは改められることになる。彼らの遺伝情報に、病気から守られるような変異はまったく認められなかったのだ。生き方における「選択」だけが問題で、その選択はたとえ単純なものであっても、決定的なものなのである。
すべてのきっかけは、リー・ラスという名前の一人の女性患者だった。98歳にして既往歴はなく、ただ、心臓の検査を受けに来た。検査結果はまったくの異常なし。心臓の状態は申し分なく、糖尿病もなく、何の治療の必要もなかった。「こんな結果は見たことがなかった」とエリック・トポルは著書のなかで振り返る
Wellderly(ウェルダリー)」という人々の共通点
それから、トポルは大規模な調査を始めることにした。数年にわたって彼とスクリプス研究所の調査チームは、80歳以上の高齢者を対象に、ゲノムのシークエンス解析をおこなった。被験者は全員健康な1400人の高齢者である。彼はこれらの高齢者のことを「Wellderly(ウェルダリー)」と呼ぶ。「元気な(well)」と「お年寄り(elderly)」を組み合わせた単語であり、つまり、年はとっていても元気な人々のことである。
こうした人たちは遺伝学上の例外的に優れた特性、たとえば稀少な変異や老化を防止するようなDNA配列などを備え持っているのだろうと最初のうちは考えていた。ところが、調査結果は異論の余地がないもので、重要な生得の条件はまったく存在しなかったのである
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実年齢より脳が20〜30歳若い「スーパーエイジャー」が持つ、唯一の「共通点」
ニューヨーク・タイムズ(米国)
Text by Dana G. Smith
91歳、ホロコーストを生き延びたラルフ・レーボックは、多忙なスケジュールをこなしている。
毎月最初の金曜日には、シカゴ近郊にあるユダヤ教の集会所で高齢男性の集いに参加する。毎週金曜日の午後は、合唱団で歌っている。また、イリノイ州ホロコースト博物館での活動を通し、長年にわたって数千人の子供達にナチス・ドイツからの脱出経験を語ってきた。
82歳のリー・スタインマンは、シカゴの自宅周辺に暮らす子供たちとアートプロジェクトに取り組みながら、すぐ近くにある野球場でカブスの試合を観戦することに多くの時間を費やしている
パンデミックの始まりに退職するまで、スタインマンは17年間、警備員として野球場で働いてきた(その前は、広告のコピーライターをしていた)。彼はいまだに元同僚やファン仲間に会うため、夏の間は週3〜4回、スタジアムに歩いて通っている。
レーボックとスタインマンは、ともに「スーパーエイジャー」と称される人々だ。スーパーエイジャーとは、80歳以上でありながら、実年齢より20〜30歳若い人々と同じくらいの記憶力を有する人々である。
米ノースウェスタン大学の研究者らは、2000年からこの驚くべき人々についての研究をおこなってきた。その目的は、加齢に伴う一般的な認知機能の低下や、アルツハイマーといった深刻な記憶障害を彼らがいかに回避しているかを解明することだ。8月7日に発表された新たなレビュー論文には、彼らの25年間の発見がまとめられている
脳萎縮から脳を保護するもの
82歳のリー・スタインマンもスーパーエイジャーだ Photo: Lyndon French for The New York
スーパーエイジャーには、多種多様な人々が含まれる。彼らに共通する、魔法のような食事や運動、薬はない
世界最高齢だった女性の身体とライフスタイルを死後調査してわかったこと
1日3回食べていたという食品は?
世界最高齢だった女性の身体とライフスタイルを死後調査してわかったこと | クーリエ・ジャポン
ニューヨーク・タイムズ(米国)
Text by Gina Kolata
世界最高齢だったマリア・ブラニャス・モレラは、亡くなる前、最後の願いを口にしていた。「私の体を研究して」と。
スペイン東部の街、オロトに暮らしていた彼女は、2024年夏、117歳で死去した。そして、バルセロナ大学医学部遺伝学部長のマネル・エステラーと共同研究者たちが、彼女の望みを叶えた。研究チームはブラニャスの血液、唾液、尿、便を分析し、彼女の長寿の理由の解析を試みたのだ。
その研究結果が9月24日、医学誌「セル・リポーツ・メディシン」に掲載された
1日3回のヨーグルト
彼女は地中海式食事を実践し、喫煙も飲酒もせず、足を悪くした2000年代初頭まで、毎日1時間歩いていた。また、彼女は高コレステロール、認知症、心臓病、がんといったリスク要因からの保護効果があるとされる「遺伝子変異」にも恵まれていたことがわかった