世界で有数の収益をあげながら、知られていない会社
年間約30億円を幹部社員それぞれに還元する謎の企業ヴィトール社とは
ブルームバーグ(米国)ほか
Text by COURRiER Japon
ロンドンの街角にひっそりと佇むオフィスビル。そのなかで、世界でもっとも収益性が高いのに、ほとんど誰も知らない企業が、巨額の取引を動かしている。幹部社員は平均で年間30億円を手にし、世界のエネルギー市場を巧みに操る謎の企業とは?
平均30億円もらえる?
バッキンガム宮殿とロンドンの場末感漂うビクトリア駅の間にある、ごく普通のオフィスビル。その2フロアに、世界でもっとも収益性が高いにもかかわらず、ほとんど知られていない企業が入っている。コモディティトレード企業のヴィトール(Vitol)社だ。
英「フィナンシャル・タイムズ」紙によると、非公開企業のため業績は公表されないが、ルクセンブルクにある持株会社の監査済み決算によれば、過去3年間の平均純利益は年間120億ドル(約1兆8000億円)を超え、従業員1人あたりでは約600万ドル(約9億円)に相当する。
さらに上位の約450〜500人の幹部社員には、株式スキームを通じて巨額が還元されている。2024年の株式買い戻しによる還元額は過去最大の106億ドル(約1兆5900億円)に達し、1人あたり平均で2000万ドル(約30億円)を手にしていると米メディア「ブルームバーグ」は報じる。さらに、トップトレーダーや、より役職が高い幹部はその何倍もの額を受け取ったとみられる
この巨額還元の背景には、エネルギー市場の混乱を巧みに利用した経営手腕がある。2020年のコロナ禍、そして2022年のロシアによるウクライナ侵攻後のエネルギー市場の動揺を、ヴィトールは競合他社よりも早く、より効果的に収益化したとブルームバーグは伝える
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