床下のカビを換気設備で室内に拡散、築1年未満の基礎断熱の住宅で生じた夏型結露被害
荒川 尚美
日経クロステック/日経アーキテクチュア
戸建て住宅の床下は基礎断熱か床断熱かを問わず、夏型結露の発生が多い箇所だ。結露をきっかけにカビが生じて、室内側に被害が広がるケースがある。コンクリートの乾燥不足や配管貫通部の気密不良などが原因だ。
高断熱住宅の需要の高まりを受けて、基礎断熱の採用が増えている。カビの防除工事をフランチャイズチェーン(FC)方式で全国展開するカビバスターズ本部(名古屋市)によると、夏に寄せられる床下のカビ相談の3分の2が基礎断熱の住宅だという。
近年は次のような被害パターンが多い。築1年未満の住宅で床下に夏型結露によるカビが発生し、床下から高湿度の汚染空気を24時間換気ダクトで室内に送風。その影響で、室内にカビが拡大するというものだ。
2事例とも基礎断熱を採用しており、24時間換気のダクトを設置した床下で結露が生じた。それぞれ別の住宅会社が施工(写真:カビバスターズ本部)
[画像のクリックで拡大表示]
カビバスターズ本部の世良秀雄代表によると、ダクトにフィルターを付けていても、汚染空気の拡散を防ぐことは難しいという。「カビの胞子は細かいので、フィルターでは完全には除去できない。また、全熱交換型換気であれば徐々に床下の水分を減らせるが、発生量が多いと残ってしまう」(世良代表)
築1年未満で結露したのは、基礎コンクリートが乾く過程で出る水分で床下が高湿度になっているからだ。室内の冷房や地盤温度の影響で冷えたコンクリートと木部に高湿度の空気が接して結露した。基礎断熱では床下換気口を設けないので、竣工後間もない時期に生じやすくなる。カビバスターズの加盟店がカビ除去後の床下で実施している再発防止策は、送風機と除湿機の活用だ。
送風機はコンクリートの含水率が高い箇所や空気が滞留している箇所に、複数台設置する。結露の予防策として、新築工事中に送風ダクトと排気ダクトを床下の対角線上に設置して、コンクリートを乾燥し続けることも住宅会社に勧めている。
カビバスターズの加盟店がカビ防除工事後の床下に、送風機(上)と除湿機(下)を設置した様子。除湿機はニューシステムジャパン(福岡県那珂川市)の「スカイドライ」(写真:カビバスターズ本部