お亡くなりになられた、
消防隊員2人死亡の道頓堀ビル火災、スプリンクラーの設置なく6項目の法令違反も
森 英寿
日経クロステック/日経アーキテクチュア
消防隊員2人死亡の道頓堀ビル火災、スプリンクラーの設置なく6項目の法令違反も | 日経クロステック(xTECH)
火災が発生したビルを、道頓堀川を挟んだ南側から見た写真。火災発生翌日の2025年8月19日に撮影(写真:日経クロステック)
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2025年8月18日の午前9時50分ごろ、大阪市中央区の繁華街・道頓堀の雑居ビルで火災が発生したと市消防局に通報があった。消火活動に当たった消防隊員2人が殉職し、消防隊員4人と20代の女性1人が負傷。火災は同日午後7時ごろに鎮火した。翌19日には、大阪府警と市消防局が現場検証を実施した。
火災があったビルの南側正面。外壁に設置していた看板の多くは燃え落ち、枠だけが残る。東側ビルの低層部は比較的損傷が少ない。上層部では手すりがゆがんでいることなどから、激しい燃焼が起きたことがうかがえる(写真:日経クロステック)
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火災発生翌日の25年8月19日、たこ焼きを買い求めて路面店に並ぶ外国人観光客の足元には、いまだ黒く焦げた破片が散乱していた。規制線の前で足を止め、全体が黒くすすけたビルを撮影する通行人の姿も多く見られた。
火災現場近くには献花台が置かれ、飲料水などを供える人の姿もあった(写真:日経クロステック)
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ビルの入り口はブルーシートで覆われていた。ビルの前にあったテントにも、火災の跡が見られる(写真:日経クロステック)
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宗右衛門町通りから見た現場ビルの北側(写真:日経クロステック)
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火災の発生したビルは道頓堀川沿い、繁華街の一角に位置し、周囲には飲食店や雑居ビルが密集する。東側のビルが地下1階・地上7階建て、西側のビルが地下1階・地上6階建てとなる。登記簿によるといずれのビルも構造種別は鉄筋コンクリート造で、1968年に竣工したとある。近くの飲食店に勤務する店員は「あのビルは辺りでも1世代前のビルだった」と振り返る。
日経クロステックの取材に対して市消防局企画部企画課(広報)の山本周平・消防司令補は、「人が通る通路や配管など、何らかの形で両建物が接続している。消防法上は2棟のビルは1つの防火対象物という扱いだった」と説明。ビルにおける詳細な火元の位置や、延焼の経路などについては調査中だと言う。
市消防局の報告によると、2棟のビルで焼損したのは床の計約100m2、外壁の計約170m2、並びに天井・側壁の計約17m2だった。
死亡した消防隊員2人は消火活動中にビル内に取り残され、他の消防隊が6階で発見した。横山英幸大阪市長は2025年8月18日の会見で、「崩落の結果、出口方面に退避がかなわなかった方が、別フロアに移動した結果、呼吸の問題で命を落としたのではないかと考えられている」と話した。崩落の状況や消防隊の活動の詳細に関しても、市消防局が調査している。
さらに市消防局への取材で、同ビルにはスプリンクラーが設置されていなかったことが明らかとなった。市消防局企画部企画課によると、このビルは消防法令上はスプリンクラーの設置義務はなかったという。防火扉など他の防火設備に関しては、同局はビル所有者と確認を進めている