「まさに、そのとおりの、”良い写真”です!」
欧州の首脳たちはトランプ米大統領に媚びへつらっているのか
Photo: Kay Nietfeld / picture alliance via Getty
薬師寺克行「今月の外交ニュースの読み方」
21世紀版「カノッサの屈辱」か “教皇トランプ”に媚びる欧州の真意
薬師寺克行
Text by Katsuyuki Yakushiji
やりたい放題のドナルド・トランプ米大統領を、欧州の首脳たちはかつてほど非難しないどころか、持ち上げている感すらある。その印象が間違いでないとすれば、首脳たちの真意はどこにあるのか。元朝日新聞政治部長の薬師寺克行氏が解説する。
オランダのハーグで6月末に開かれた北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議で、欧州各国の首脳は米国のドナルド・トランプ大統領を徹底的に持ち上げ、媚びへつらう外交を演出した。
とりわけNATO事務総長でオランダ元首相のマルク・ルッテの気配りは徹底していた。まずトランプをオランダ王宮に宿泊させ、そこで晩餐会まで催して厚遇した。トランプが欧州の王室に遇されることを好むので、ルッテがオランダ王室と調整したのだ。
さらに首脳会議では、NATO加盟国が2035年までに国防費を対GDP比5%にまで引き上げることで一致したとトランプに報告した。これはトランプの要求をそのまま呑んだ、いわば「満額回答」である。
トランプはその会議で8分間も自由に発言したが、他の首脳は発言時間3分以内を厳格に守った。トランプが形式的な長い会議を嫌い、過去には途中で退席したこともあるためだ。
合意文書もわずか5項目と、これまでになく短い。しかも欧州が最も重要と考えているロシアへの非難も盛り込まれなかった。すべてはトランプの機嫌をとって米国をNATOにとどめておくことを最優先したルッテの作戦だ
教皇トランプ」の出現か
当のトランプは、イランへの空爆を実施し、イランとイスラエルの停戦を実現したばかりで、向かうところ敵なしといった気分だったろう。
まるで「教皇トランプ」が出現したかのようだった。1077年に神聖ローマ皇帝ハインリヒ4世がローマ教皇グレゴリウス7世に破門されてのち、カノッサ城外で懺悔して赦免を請うた「カノッサの屈辱」を思わせる光景だ