自信に満ちるChatGPT生みの親にインタビュー
OpenAIのサム・アルトマン「僕は史上最高にクールで重要な仕事をしている
フィナンシャル・タイムズ(英国)
Text by Roula Khalaf
英紙「フィナンシャル・タイムズ」の記者がランチを共にしながらインタビューする人気連載に、OpenAIを率いるサム・アルトマンが登場。ライバル企業との開発競争からAIに支配される未来、イーロン・マスクとの対立まで、野心みなぎらせるCEOにじっくり聞いた
アルトマンの農場で彼の手料理
サム・アルトマン(40)がシリコンバレーの喧騒から逃れる先は、ナパバレーのブドウ畑に覆われた丘陵地帯にある広大な農場だ。私は、幅の広い出窓がある家のオープンキッチンにアルトマンの姿を見つけると、そのまま敷地内に入った。
彼の当惑した表情を見るに、私が現れるとは思っていなかったようだ。実際、私は約束より1時間ほど早く到着していた。それでもChatGPTの生みの親である彼は、会議を切り上げて、庭にいる私のところまで来てくれた。
本紙のこの連載のために、アルトマンは彼が選ぶレストランで会う代わりに、農場の自宅でシンプルなベジタリアン料理を作ると申し出た。レストランだと人の注目を浴びそうだからだ。
アルトマンは2022年、自らが率いるOpenAIが生成AIモデルをリリースすると、一躍時の人となった。2024年、彼はソフトウェアエンジニアのボーイフレンドと結婚し、最近、代理出産で男の子を授かった(ベビーベッドの購入にあたってChatGPTに相談したという)。そんなこともあり、いまでは多くの時間をナパの農場で過ごしている。
アルトマンはOpenAIを史上最速で成長する企業の一つに育て上げ、AIの覇権争いを加速させたが、これまでの道のりは平坦ではなかった。彼は自分の会社に一度解雇され、その人格やAI開発の安全性に対する姿勢にも厳しい目が向けられた。
OpenAIの共同創業者イーロン・マスクとの対立もあった。俳優のスカーレット・ヨハンソンには、彼女の声と「気味が悪いほど似ている」声をチャットボットの訓練に使ったとして非難された。
だが、より知名度の高い競合他社(とくにAI研究で長らくリードしていたグーグル)を出し抜いたことで、アルトマンはいまや各国の首脳からラブコールを受け、世界の巨大資本家たちも惹きつけている
o3」は天才レベルの知性
そんなアルトマンは、取材が進むにつれて自信に満ちあふれていくように見えた。話題はAI製品からAIの未来をめぐる実存的な問いにまで及んだ。アルトマンは野心をにじませながら、自分の運命を確信している者のように語る。
「僕はたぶん史上最高にクールで重要な仕事をしている」と彼は言う。また、以前はAIを産業革命に匹敵する存在だと考えていたが、いまではAIがもたらす「創造性の爆発」から、ルネサンスのほうが近いと考えていると話す。
私たちが会ったのは、OpenAIがより高度な推論力と画像生成能力を備えたモデル「o3」をリリースした直後だった。アルトマンによると、これは人間の代わりに自律してタスクを実行する「AIエージェント」の実現に向けた重要な一歩であり、AI業界をリードする全企業が総力をあ