長谷工とロボット研究者の石黒浩氏が「未来の住宅」開発、大阪・関西万博を機に協業

山﨑 颯汰

 

日経クロステック/日経アーキテクチュア

 

 

長谷工とロボット研究者の石黒浩氏が「未来の住宅」開発、大阪・関西万博を機に協業 | 日経クロステック(xTECH)

 

 

 

長谷工コーポレーションは2025年5月15日、5年先の30年代を見据えた未来の住宅「ivi house(アイヴィハウス)」が東京都杉並区で完成したと発表した。このプロジェクトにはロボットやアンドロイド研究の第一人者である大阪大学の石黒浩教授らが参画している。「生命を宿した住まいが人と調和する」をテーマに掲げて住宅を開発した。光や音、香りなどを通して、従来とは異なる住宅の在り方を提案する。

未来の住宅「ivi house(アイヴィハウス)」の外観。木目調の縦ルーバーで覆われている。メディア向けに内覧会が開かれた(写真:日経クロステック)

未来の住宅「ivi house(アイヴィハウス)」の外観。木目調の縦ルーバーで覆われている。メディア向けに内覧会が開かれた(写真:日経クロステック)

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 アイヴィハウスは木造2階建てで、延べ面積は約100m2。設計・施工は、長谷工が20年に完全子会社化した細田工務店(東京・杉並)が手掛け、25年3月に竣工した。外装には木立のような細い縦ルーバーを採用し、住宅街の中では存在感がある。内装はホテルのような仕上がりにしている。

アイヴィハウスは木造2階建て。2階にバルコニーがある(写真:長谷工コーポレーション)

アイヴィハウスは木造2階建て。2階にバルコニーがある(写真:長谷工コーポレーション)

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アイヴィハウスの間取り。1階に和室や寝室、風呂場があり、2階にLDKや書斎、バルコニーを設けた(出所:長谷工コーポレーション)

アイヴィハウスの間取り。1階に和室や寝室、風呂場があり、2階にLDKや書斎、バルコニーを設けた(出所:長谷工コーポレーション)

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 この住宅の特徴は、直線的な空間をできるだけなくしたことだ。人と調和する住宅を模索している石黒氏は、「曲線的な造形」にこだわった。玄関から縁側、階段、リビングに至るまで丸みを帯びた形状を採用し、「有機的なデザインとすることで生きているような住宅を目指した」(石黒氏)。

2階のLDK。曲線的な空間設計が特徴だ(写真:長谷工コーポレーション)

2階のLDK。曲線的な空間設計が特徴だ(写真:長谷工コーポレーション)

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玄関と2階をつなぐ階段。奥に見えるのは和室と中庭(写真:長谷工コーポレーション)

玄関と2階をつなぐ階段。奥に見えるのは和室と中庭(写真:長谷工コーポレーション)

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 石黒氏は、「ロボットと住環境は全く異なるように思えるが、どちらも『人と関わる』点においては非常に似た性質を持っている」と語る。「楽しそうなロボットが人と関われば、人にも楽しい感情が芽生えるように、楽しげな内装の住環境は住む人を楽しい気分にさせてくれるだろう」と話す。

 同氏は10年ごろからアンドロイドの研究に加えて、大和ハウス工業やダイキン工業と協働で住環境の研究開発も手掛けてきた。研究室内にマンションの一室を再現し、照明や空調などをコンピューターで制御。快適な部屋の設計を研究し、「快適指標」の考案などに挑戦してきた。

 石黒氏と長谷工の連携は、同氏がテーマ事業プロデューサーを務める大阪・関西万博のシグネチャーパビリオン「いのちの未来」に、長谷工がプラチナパートナーとして協賛したことがきっかけだ。長谷工は真っ黒な建物の外壁表面を水が流れるパビリオンを現物協賛者として提供した。

石黒氏が手掛ける大阪・関西万博のシグネチャーパビリオン「いのちの未来」では、50年後の未来を展示している。その中には50年後の住環境も登場する。アンドロイドとの生活が普通になりながらも、リビングの雰囲気は現在とあまり変わりなく表現されているのが興味深い(写真:日経クロステック)

石黒氏が手掛ける大阪・関西万博のシグネチャーパビリオン「いのちの未来」では、50年後の未来を展示している。その中には50年後の住環境も登場する。アンドロイドとの生活が普通になりながらも、リビングの雰囲気は現在とあまり変わりなく表現されているのが興味深い(写真:日経クロステック)

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滝の水膜に覆われた真っ黒な万博パビリオン「石黒浩館」、長谷工が建物を引き渡し

 水しぶきを上げて流れ落ちる滝が建物を覆うパビリオンが大阪・関西万博にお目見えする。石黒浩氏がテーマ事業プロデューサーを務めるパビリオンは外観が真っ黒で表面を水が流れる。

2024/10/29

 長谷工の常務執行役員でエンジニアリング事業部長の堀井規男氏は、「ロボットやアンドロイドだけでなく住環境にも関心が高い石黒氏の知見に基づき、未来の住まいを形にできないか考えた」と振り返る。こうして未来の住まいを実際につくるivi project(アイヴィプロジェクト)が始動。第1弾としてアイヴィハウスが誕生した。石黒氏は「アイヴィハウスは研究開発ではなく、5年後の住宅を今ある技術でいかに実現するかに重点を置いている」と語る。

内覧会でアイヴィハウスの説明をする大阪大学の石黒浩教授(左)と、長谷工コーポレーション常務執行役員の堀井規男氏(写真:日経クロステック)

内覧会でアイヴィハウスの説明をする大阪大学の石黒浩教授(左)と、長谷工コーポレーション常務執行役員の堀井規男氏(写真:日経クロステック