米国の飲食店もパニック

シャンパン「やや少なめ」で提供? トランプ関税でバーは苦肉の策を検討

 
 
 

ブルームバーグ

 
 
 
 

グラスに注ぐ量を10%減らす?


トランプ関税は一旦、延期が決定した。しかし、それでも米国の飲食業界、特に輸入品を主軸にするバーやレストランに大きな不安を与えている。

現時点では、新たな関税に対する具体的な対策を語るオーナーは少ないが、「マンハッタンのある老舗シャンパンバーでは、間もなくフルートグラスに注がれる量が少し減るかもしれない」と報じられている。

米経済メディア「ブルームバーグ」によれば、創業27年のシャンパンバー「フルート・バー」では、EU製品に20%の関税が課せられた場合には「グラス一杯あたり約10%量を減らす」ことを視野に入れているという。
 

オーナーのエルヴェ・ルソーは、その理由について、できる限り値上げを避けるためだと述べている。

10%減らさざるを得なくなった際には、お客さんにはそれを正直に伝えるつもりだという。

同店のワイン在庫の約75%はヨーロッパ産、主にフランス産だ。

米国に拠点を置くサプライヤーから仕入れた在庫もあり、「おそらくあと1、2ヵ月は持ちそうだ」。しかし、それがなくなり次第、状況は変わると予想している。

そうなった際には、国内の商品、たとえば、同店限定の米国のロングアイランド産スパークリングワイン「アンティーム」を主力商品にするつもりだと彼は語っている。
 

シャンパンに代わるこのワインは、1920年代のフランスのレシピに基づき、オーガニックジンジャーを使用し、伝統的なシャンパン製法で造られているという。

また、主に国産の材料にフランス産シャンパンをほんの少し加えたシャンパンカクテルにも力を入れ始めている。一杯あたりに含まれる「シャンパンは10~20%程度なので、価格を安定させられる」と同メディアに語っている。
 

“米国産ワインの売上が伸びる”は「見当違い」?


米トランプ大統領は「相互関税」の発効からわずか13時間後に90日間の一時停止を発表した。

一時停止期間中、ワインの生産地として有名なフランスやイタリアを含む、ほとんどの国に対して10%の関税が継続されるが、突然の政策変更は、市場のボラティリティ(価格変動の度合い)を高めている。

ロイター通信によれば、米国は、フランスとイタリアを筆頭に、世界のどの地域よりも多くのワインをEUから輸入している。
 

フランスのワイン・スピリッツ輸出業者FEVSは、関税導入によりフランス産ワインとスピリッツの売上が少なくとも20%減少する可能性があるとロイターに述べている。

米国内のワイン、たとえば、カリフォルニアやオレゴン、ワシントンなどのワイナリーにとってはシェア拡大のチャンスだという見解もあるが、一部の専門家は「EUワインにしかない高級ラインの代替は難しい」と指摘している。

米国の業界団体である全米ワイン小売協会(NAWNR)も、関税導入によって国産ワインの売上が伸びるという期待は「見当違いだ」とロイターに語っている。

「全面関税導入による価格上昇に直面した消費者は、支出を抑えるだろう。まず削減されるのは、ワインのような生活必需品ではない品目だ」

3月、トランプ大統領は、EUが米国産ウイスキーに50%の関税を課す計画を進めた場合、EU産のワインやシャンパン、スピリッツに200%の関税で報復措置をとると述べた。​
 

その後、EUはウイスキーへの関税を撤回した一方、トランプは報復措置の警告を正式に撤回していない。ただ、少なくともいまのところ、圧力は緩和されている