各国で進む年齢確認の厳格化
英国では「ポルノを見たいなら顔写真付き身分証明書の提示」が義務に
ポリティコ
COURRiER Japon
インターネットにおける性的コンテンツは長らく問題視されてきた。普通のサイトを開いただけなのに性的な広告が表示されたり、XなどのSNSをスクロールしていたらセンシティブな動画が流れてきて驚いたりといった経験をしたことがある人は、日本にも多いだろう。当然、子供たちも同じように性的コンテンツに触れているはずだ。
こうした事態に対応すべく、世界では厳しい規制を設ける国が増えつつある。
4月11日に施行された新法により、フランスではアダルトサイトで性的なコンテンツを閲覧する際、厳格な年齢確認を求められることになった。公的な身分証明書の提示を求めたり、ユーザーが顔を自撮りすれば年齢を推定できるツールを導入したりするなど、強力な年齢確認システムを利用することがポルノサイト側に義務付けられている。
米メディア「ポリティコ」によれば、この法律はまず、フランスのポルノブランドDorcelのような国内発ウェブサイトと、OnlyFansなどのEU域外で運営されているウェブサイトに適用された。
6月7日からは法律の対象が他のEU加盟国に拠点を置くサイトにも拡大され、Ayloグループ傘下のPornhub、YouPorn、Redtube、そしてXVideosといった業界大手も含まれるようになるという。
ポルノサイトが年齢確認を適切に実施していないと判断した場合、フランスのメディア規制機関ARCOM(アルコム)は、そのサイトが表示されないようブロックする権限を持つ
あなたは18歳以上ですか?」は無意味
英国でも年齢確認を徹底する法律が施行されている。
英「BBC」によれば、同国では約1400万人がオンラインでポルノを視聴している。「あまりにも簡単にアクセスできる」ため、子供たちの10人に1人が9歳までに性的コンテンツに触れているという。
これを懸念し、英国では2025年7月までに「写真付き身分証明書の提示を要求したり、クレジットカード情報を確認したりするなどの強力な年齢確認手法」を導入することが、性的コンテンツを提供するサービスに義務付けられた。違反者には売上高の最大10%に相当する罰金が科される可能性がある。
「年齢の自己申告は、もはや年齢確認において効果的な方法とはみなされておらず、受け入れられない」とBBCは報じる。「あなたは18歳以上ですか?」といったポップアップの表示は無意味であるとの判断を示しているということだ。
なお、この規制にはSNSも含まれる。2024年6月以降、イーロン・マスク率いるXは「合意のうえで制作・配信された成人向けのヌードや性行為」の投稿を許可してきた。だが、英放送通信庁Ofcom(オフコム)の児童保護担当であるアルムデナ・ララは、英紙「ガーディアン」に対し「企業がどこに拠点を置いているか、誰と誰が政治的に密接かは関係ない」とし、次のように続ける。
「英国で事業を展開するのであれば、英国の規則に従う必要がある」
米メディア「アクシオス」によれば、米国でも規制が進んでいるようだ。2025年の1月時点で、19州が「成人向けウェブサイトの訪問者に年齢確認を義務付ける法律」を可決している。ユーザーに対して政府が発行しているIDの提示を求め、年齢を確認する手段を実装することが、企業側に義務付けられた
規制を掻い潜るサイトへ人は流れるが…
年齢確認のために個人情報や顔写真を求めることは、未成年をブロックするうえで効果的かもしれない。
だが、プライバシーの観点からすると、疑問や不安を覚える人もいるだろう。ポルノサイトPornhubの親会社である「Aylo」は「何十万ものアダルトサイトに、機密性の高い個人情報を大量に収集することを要求する規制は、ユーザーの安全を危険にさらすことになる」と指摘した。
同社はまたBBCに対し、各国が求めている厳しい年齢確認は「効果がなく、場当たり的で危険だ」とも語った。年齢確認が義務化された米国ルイジアナ州では、同社のウェブサイトのトラフィックが80%減少したとし、次のように続ける。
「人々はポルノを探すのをやめたわけではなく、年齢確認を求めない、インターネットにあるより危険な場所に移っただけだ。この法律は結局のところ、インターネットを大人にとっても子供にとってもより危ないものにしただけだ」
ポルノに触れるためのハードルを上げることで、新たな問題が発生する可能性はたしかにあるだろう。だが、過激なコンテンツで溢れかえる「無法地帯」となっているインターネットを放置するより、より健全で気持ちの良い環境を整備するための努力は間違いなく必要なはずだ
英国では「ポルノを見たいなら顔写真付き身分証明書の提示」が義務に | クーリエ・ジャポン