トランプ政権、対日防衛負担増要求「友好的に水面下で」 フライツ米国第一研究所副所長

産経新聞
 
 
 

米国第一政策研究所(AFPI)のフレッド・フライツ副所長

 

 

 

 

【ワシントン=古森義久】

 

 

トランプ米政権に直結する政策研究機関

「米国第一政策研究所(AFPI)」の

フレッド・フライツ副所長は

1日までに

産経新聞のインタビューに応じ、

 

第2次トランプ政権の日本や東アジアに対する

政策の特徴を明らかにした。

 

 

トランプ大統領は

インド太平洋への安全保障政策では日本との同盟の堅持を最重視し、

特に中国と北朝鮮の脅威に対する日本の防衛への誓約を核抑止をも含めて強化するという。

 

 

北朝鮮に対し、

日本人拉致事件の解決を一貫して要求する意図も明確だとした。

 

 ワシントン地区に本部をおくAFPIは

昨年の大統領選期間中から

トランプ陣営直属のシンクタンクとして機能し、

第2次トランプ政権にはすでに理事長、

所長はじめ十数人が主要閣僚職も含めて登用された。 

 

 

フライツ氏は第1次トランプ政権で

国家安全保障会議担当の大統領補佐官を務め、

アジアや中東問題を担当した。

 

 

選挙中もトランプ氏に密着して次期政権の外交、

安保政策を立案してきた。 

 

フライツ氏は

インタビューで、

トランプ新政権の対日政策について

「インド太平洋全体でも米国は中国や北朝鮮の脅威に対して軍事的抑止力をフルに行使し、その最大の重要拠点が日米同盟とみなす。

 

 

トランプ氏は

石破茂首相との会談でも明言したように

日本防衛には核拡大抑止を含め最大の共同防衛責務を果たす構えだ」と述べた。

 

 

 日本側の一部で日米同盟縮小への懸念があることや、

 

米側に日米同盟の片務性是正への期待があることについて、

 

フライツ氏はトランプ政権の政策は

日米同盟の堅持や

増強があくまで主体で、

その逆行はないと明言した。

 

 

その上で

「トランプ氏は故安倍晋三首相からの貴重な助言を受け入れ、

インド太平洋での安定のためにも日米同盟の強化を信奉している」と強調した。

 

 

 日米防衛負担や同盟の片務性について、

フライツ氏は

「トランプ氏は日本の防衛費倍増など防衛強化策に満足しており、いま新たな要求をする構えはない。

 

今後、

日本側の負担の増加や

片務性減少への期待が出てきても、

欧州に対してのような圧力ではなく、

あくまで友好的な、

水面下での方法でその期待を伝えるだろう」と解説した。

 

 

 トランプ政権の自動車輸入などへの新規の関税についてはフライツ氏は

「米国の年来の巨額の貿易赤字を減らし、

国内への投資や産業拡大のためのすべての関係諸国への措置であり、

日本だけを標的にはしていない」と述べ、

日米間で貿易問題が安保関係を侵食しないことへの希望を表明した

 

 

 

またフライツ氏は、バイデン前政権と異なるアジア政策として、北朝鮮に対して核兵器開発の全面停止を求め続け、トランプ氏はそのために金正恩朝鮮労働党総書記に再度の首脳会談をも提案する可能性があると指摘した。ただし、その際には安倍氏の強い念願だった日本人拉致事件の解決を金正恩氏に一貫して強く要求し続ける意図だと強調した。

フライツ氏のインタビュー要旨は以下の通り。

トランプ大統領はインド太平洋策全体でも日米同盟を最重視する。特に中国や北朝鮮の軍事攻勢に対して軍事抑止を保ち、特に日本の防衛では核拡大抑止も行う。個人的にも日本への友好心は強く、その基礎には故安倍晋三元首相からの貴重な助言や友情がある。

トランプ政権は東アジアでは日本、韓国の安全保障協力を望む。ただし、韓国の政情混乱(が収束するのを)を待つ必要がある。同時に(日米豪印4カ国の枠組み)クアッドや(米英豪3カ国の安全保障枠組み)AUKUSを堅持して、中国や北朝鮮の軍事脅威に対処する。

トランプ氏が駐日大使に指名したジョージ・グラス氏は信頼に足る。日本の重要性を認識し、しかも息子の一人が日本に長期在住する。トランプ氏に直接に語れることも長所だ。前任の大使(ラーム・エマニュエル氏)のようにLGBT(性的少数者)問題などで日本の内政に介入することもない。

トランプ政権はバイデン政権下での空白を埋めるためにも北朝鮮への積極政策を再開する。北朝鮮の核のCVID(完全かつ検証可能で不可逆的な廃棄)を目指す政策を継続する。そのために金正恩総書記との首脳会談も考慮するが、その場合には北朝鮮のウクライナ戦争からの離脱を前提条件とするだろう。

また、トランプ氏は北朝鮮との折衝で、日本人拉致事件の解決を一貫して求める。拉致事件は安倍氏から日本にとっていかに重要な案件であるかを認識させられ、米国政府全体としてもこの事件の解決への日本に対する支援を絶やさない

 

 

 

北朝鮮の核兵器開発を含む軍事力強化は米国にとっても脅威の増大であり、包括的な手段による抑止が欠かせない。トランプ政権ではバイデン前政権とは異なり、「炎と怒り」という標語に象徴される軍事手段の誇示で金正恩政権に圧力をかける。

中国の軍事膨張や経済恫喝(どうかつ)に対しては軍事抑止、経済制裁、外交、法的手段、同盟諸国の連帯など多角的な方法で対処する。トランプ氏と習近平国家主席との首脳会談も視野に入れる。バイデン政権時代の対中接触の欠落を埋める。

台湾については、中国の軍事攻撃にどう対応するかは「台湾関係法」に従い、「戦略的曖昧性」を保ち、介入の有無を明言しない。この点はバイデン前政権と異なる。しかしトランプ新政権にはマルコ・ルビオ国務長官ら中国を非難し、台湾を支援する要人が多いことを重視すべきだ。

フレッド・フライツ氏 フォーダム大院修了後、1980年代からCIA(中央情報局)、国防総省、国務省に勤務。情報活動や北朝鮮、イランの核開発阻止などに当たる。議会下院情報委員会の主任補佐官を経て、2015年から「安全保障政策センター」副所長、17年から21年まで第1次トランプ政権で国家安全保障会議担当の大統領補佐官。22年から米国第一政策研究所(AFPI)所属

 

 

トランプ政権、対日防衛負担増要求「友好的に水面下で」 フライツ米国第一研究所副所長(産経新聞)