これは健全な政策運営とはいえない」

「この状況から学ぶべき」 日本に突きつけられた通貨安の厳しい教訓

 
 
 
 
 
 
 
 
Photo by Takashi Aoyama/Getty
 
 

 

ニューヨーク・タイムズ(米国)

 

Text by River Akira Davis and Hisako Ueno

 

消費はいっこうに回復せず、円安を食い止める見通しも立っていない。こうした状況から、日本は学ぶべきだとエコノミストたちは厳しく指摘する。米「ニューヨーク・タイムズ」紙が、伸び悩む日本経済について解説する。


日本では何十年ものあいだ、「通貨安は企業の競争力を高め、経済を押し上げる」という考えが信念のように受け入れられてきた。

2024年に、その一部は現実となった。円が対ドルで37年ぶりの安値をつけるなか、トヨタ自動車などの大手企業は日本史上最高の利益を記録し、株価が過去最高値を更新したのだ。

しかし、日本の一般家庭の大半にとって、円安がもたらしたのは、食料費や電気代など生活費の上昇にすぎなかった。
 

2025年2月に発表されたデータによると、

 

日本経済は2024年後半に成長したものの、

 

通年のインフレ調整後の成長率は

 

0.1%にとどまり、

 

前年の1.5%から大幅に減速した。

 



通貨安によって輸出を刺激するという手法は、

経済成長を目指す国々が長年用いてきた政策の一つだ。

しかし日本の事例は、

通貨安が輸出を後押ししたとしても、

インフレが悪化するために

消費者の購買力を損なう可能性があることを示している。

 

日本経済に詳しいエコノミストのリチャード・カッツはこう説明する。

 



「経済学では、すべての政策には利益と損失があり、

それを比較することが重要だと教えられます」

 



そして、1ドル153円前後で推移する現在の円相場について、

「これは健全な政策運営とはいえない。この状況から学ぶべきだ」と語る。

 

 



前出のデータによると、

2024年の日本の家計消費はわずかに縮小し、

過去3年間の拡大傾向に歯止めがかかった。

 

日本では長期にわたる消費の低迷が続き、

実質GDPはコロナ前の水準をわずかに上回る程度にとどまっている

 

 

 

 

 

日本のGDPはコロナ前の水準をわずかにうわまる程度 Photo by James Wakibia/SOPA Images/LightRocket via Getty Images


かつて日本は、輸出依存度の高さから円安を歓迎していた。しかし、この20年間で、日本企業は海外の子会社に生産と販売の多くを委ねるようになった