小さな家」に「大きなアイデア」を詰め込む建築家たち

米紙が「乗用車ほどの幅しかない日本の狭小住宅」を探訪してみたら

 

 

ニューヨーク・タイムズ(米国)

 

Text by Tim Hornyak

 

日本人でも驚くサイズの狭小住宅を米紙「ニューヨーク・タイムズ」が何軒も訪れてみた。狭い空間を最大限に生かす「日本人ならではの工夫とアイデアが詰め込まれている」と脱帽している。

 

まるで現代アートか小さな要塞


迷路のように入り組んだ東京の裏通りに、周囲の住宅とは似ても似つかない奇妙な形状の建物が建っている。垂直に配された板張りの外壁、堂々たる長方形のフォルム、ほぼ窓のない外観は、まるで現代アートか小さな要塞のようだ。その姿にふさわしく「The Keep(砦)」と名付けられたこの建物、実は住居として設計されている。

スライディング式の玄関ドアを開けると、そこには質素でミニマルな空間が広がる。家具はなく、3つの窓と天窓があるのみ。上下階は半透明の格子で仕切られ、IHコンロ、シャワー、エアコンといった現代的な設備が揃う。梯子を上った先には、寝室スペースとして使えるロフトがある。

この風変わりな住宅を手がけたのは、不動産仲介業を営む鈴木茂(76)だ。彼が東京の阿佐ヶ谷にこの住宅を建てた目的は、一つは自身のセカンドハウスとしてだが、もう一つは、近年再び注目を集めている「狭小住宅」という建築トレンドのショールームとして利用するためだった

 

 

日本には世界有数の人口密度を誇る都市がいくつもあり、人々は狭い空間で暮らすことに長けている。江戸時代に普及した長屋や町家から、戦後のバラック長屋、団地アパート、カプセルホテルに至るまで、日本は革新的な設計を駆使して、限られた国土を最大限に活用してきた。

狭小住宅は、こうした伝統に独自のアレンジを加えたものだ。また、現代の経済的・社会的変化への対応でもある。

少子化と人口減少に直面する日本では、大家族向けの住宅がそれほど必要とされなくなった。その結果、手頃な価格の住宅市場を拡大するため、広大な敷地を細分化する動きが加速。都内では、家賃の安い郊外からの長時間通勤を避けたい若手会社員が、狭小住宅に飛びついている。

この風潮は急速な広がりを見せており、一部の自治体では、狭小住宅の増加による火災等のリスクを懸念して、区画の細分化に制限をかけているほどだ

 

 

 

 

 

 

「世界でたった一つの家」


「日本で狭小住宅が急増している理由は、不動産を取り巻く経済事情や社会変化、そして何より、その魅力にあります」と語るのは、米国人建築家のナオミ・ポロックだ

 

 

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