SBGはオープンAIへの最大430億ドルの投資を協議中
トランプ時代のパワーカップル、孫正義とサム・アルトマン「双方の思惑」
ウォール・ストリート・ジャーナル(米国)
Text by Eliot Brown , Berber Jin and Keach Hagey
孫氏とアルトマン氏、AIの新パワーカップルに
ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長は、東京近郊に新築した、ローマ皇帝の石像が並び、18ホールのゴルフコースに囲まれた豪邸で過ごしながら、もんもんとしていた。人工知能(AI)革命が目前に迫っていると何年も前に明言しながら、そのチャンスをつかみ損ねていた。
「(自分は)まだ何もしていない」。昨年SBGの投資家向けに行った講演によると、孫氏はこう考えていた。「このまま年老いて死んでいいのか」
結局、孫氏に必要なのは新たなゴールデンボーイだった。そしてカリスマ的なスタートアップ企業創業者に飛びついてきた彼は、サム・アルトマン氏にその素質を見いだした
スタートアップ企業への過去最大の投資となる見通しの取引で、孫氏はアルトマン氏率いる米オープンAIに最大430億ドル(約6兆7000億円)をつぎ込む準備をしている。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の30日の報道によると、SBGは対話型AI「チャットGPT」を開発したオープンAIに150億~250億ドル出資する協議を進めており、それは400億ドルの大型資金調達の一環だという。
この資金調達でオープンAIの企業価値は最大3000億ドルに達する見通し。これは昨年10月時点の評価額のほぼ2倍となり、将来性に対する孫氏の紛れもない自信の表れだ。
それに加え、事情に詳しい関係者らによると、オープンAIが使用するクラウドコンピューティング拠点を構築するベンチャー事業「スターゲート」にSBGは180億ドルを投資すると約束した。
30日に東京へ向かっていたアルトマン氏にとって、この提携は重大な時期に豊富な資金力を持つ支援者が現れたことを意味する。
オープンAIと、これまで同社にとって最大の投資家であり長年の独占的技術パートナーだった米マイクロソフトとの関係は、十分なクラウドコンピューティング能力を得られないというオープンAIの主張を巡ってギクシャクしている。
また、より広範なAIの世界は、無料で使用できる安価なAIモデルを公表した中国AI企業ディープシークの華々しい登場によって動揺が広がり、専有技術に多額の投資をするオープンAIの戦略には懐疑的な見方が生じている。
オープンAIとスターゲートに孫氏が関与を約束したことで、オープンAIは今後数年間、十分なクラウドコンピューティング能力を備えることが確実となる。それはマイクロソフトとの契約のうち独占権が終了するタイミングでもあった。
一方、孫氏はシリコンバレー史上最大規模の資金調達ラウンドを主導することで、最先端AIシステムに巨額資金を投じ続けるアルトマン氏の計画の熱心な後ろ盾となっている。
「AI時代はわれわれ全員にとって、より良く、より安全で、より健康的で、より繁栄する未来を築くのに役立つ数十年に一度のチャンスだ」。孫氏は30日に広く配信された電子メールにこう記した
同日、米首都ワシントンでオープンAIが主催したイベントで、アルトマン氏はディープシークの技術を「素晴らしい仕事」とたたえた上で、米中両国の競争という観点からその出現を位置づけた。
「これは競争の厳しさとともに、民主主義的なAIが勝利する必要性を思い起こさせる」と同氏は述べた。
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