能登半島地震で被災した老舗「加賀屋」が新旅館建設、隈研吾氏設計で26年冬開業へ
中東 壮史
日経クロステック/日経アーキテクチュア
能登半島地震で被災した老舗「加賀屋」が新旅館建設、隈研吾氏設計で26年冬開業へ | 日経クロステック(xTECH)
能登半島地震で被災した石川県七尾市にある和倉温泉の老舗旅館「加賀屋」は2024年12月25日、既存建物の近隣に新しい旅館を建設する「真・RYOKAN計画」を発表した。建築設計を担当するのは加賀屋と親交があった隈研吾建築都市設計事務所(東京・港)で、26年冬の開業を目指す。
新しく建設する旅館のイメージ(出所:加賀屋グループ)
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加賀屋は、能登随一の温泉地である和倉温泉で1906年に創業した老舗旅館である。24年元旦に起こった能登半島地震で、建物の外壁にX状のせん断ひび割れが複数発生。地震から1年が経過した25年1月現在も、休業を余儀なくされている。同じエリアで再開した旅館やホテルはあるものの稼働率は低迷しているという。
2024年1月に発生した能登半島地震で被災した老舗旅館「加賀屋」(写真:日経クロステック)
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建物の外壁にX状のひび割れが生じて、25年に入っても休業中(写真:日経クロステック)
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地元最大の宿泊施設である加賀屋は営業再開を目指し、新しい旅館を建てるという大きな決断をした。既存旅館は4棟構成で、客室数は計233室。修復する道も検討しているが、そもそも過去に増築を繰り返したことで作業動線の効率が悪く、建物も老朽化していた。新築することで被災前から抱えていた課題を同時に解消できると考え、費用などを含めて総合的に判断した。投資額は明らかにしていない。
敷地は半島の東側に位置する七尾湾に面する約3万m2の所有地だ。既存旅館から500mほどしか離れていない。能登半島地震で津波の被害は受けていないが、新旅館の設計中には地震や津波の発生を想定した防災対策を検討する。
新しい旅館の構造は鉄筋コンクリート造、鉄骨造、木造だ。階数は地上5階建てで、延べ面積は約8610m2を予定する。客室数は約50室。全室オーシャンビューで、天然温泉の露天風呂や半露天風呂を備える計画だ。
加賀屋の渡辺崇嗣代表取締役社長は、「利用者の要望が個性化・多様化・高度化している。時代に合わせ、さらにサービス品質を高めたい。新しい旅館では加賀屋らしさを引き継ぎつつ、旅館の質を一層向上させる」とコメントしている。加賀屋は以前から、サービスレベルの高さに定評がある