MoMA増改築を勝ち取った建築家・谷口吉生氏が87歳で死去、多数の美術館設計

木下 順平
 

日経クロステック/日経アーキテクチュア

 

MoMA増改築を勝ち取った建築家・谷口吉生氏が87歳で死去、多数の美術館設計 | 日経クロステック(xTECH)

 

建築家の谷口吉生氏が2024年12月16日、肺炎のため87歳で死去した。同年12月20日に谷口建築設計研究所(東京・千代田)が発表した。谷口氏は国内外で数多くの美術館設計などを手掛け、日本建築学会賞作品賞や高松宮殿下記念世界文化賞などの受賞歴がある。代表作は米国の「ニューヨーク近代美術館(MoMA)」増改築や愛知県豊田市にある「豊田市美術館」、東京・上野の「東京国立博物館法隆寺宝物館」などだ。
 
 
 

2019年に谷口建築設計研究所で日経クロステックのインタビューに応じた谷口吉生氏(写真:稲垣 純也)

2019年に谷口建築設計研究所で日経クロステックのインタビューに応じた谷口吉生氏(写真:稲垣 純也)

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 谷口氏は1937年、「藤村記念堂」などを設計した父・谷口吉郎(1904~79年)、母方の祖父に東京駅の設計に参画した松井清足を持つ建築家の家系に生まれた。60年に慶応義塾大学工学部機械工学科を卒業後、米ハーバード大学で建築を学ぶ。帰国後は、東京大学の研究室や丹下健三・都市建築設計研究所で丹下健三に師事。磯崎新らと共に、マケドニア・スコピエの復興都市計画などの海外プロジェクトに参画した。

 その後、計画・設計工房を創設。第1作となる「雪ヶ谷の家」(75年)を手掛け、父・吉郎を通じて依頼を受けて設計した「資生堂アートハウス」(78年)で日本建築学会賞作品賞を受賞。建築界にその名が知られる存在になった。

 

 

 

 

 

「資生堂アートハウス」の外観。谷口吉生氏は2017年の改修設計も手掛けた(写真:日経クロステック)

「資生堂アートハウス」の外観。谷口吉生氏は2017年の改修設計も手掛けた(写真:日経クロステック)

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 79年には吉郎から谷口吉郎建築設計研究所(現谷口建築設計研究所)を継承。その後、都内の「葛西臨海水族園」(89年)で毎日芸術賞、香川県の「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館」(91年)で村野藤吾賞を受賞するなど華々しいキャリアを歩んだ。

 

 

 

水盤越しに「葛西臨海水族園」のシンボルであるガラスドームを見る(写真:吉田 誠)

水盤越しに「葛西臨海水族園」のシンボルであるガラスドームを見る(写真:吉田 誠)

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谷口吉生氏は葛西臨海公園内にある「展望広場レストハウス」の設計も手掛けた(写真:日経クロステック)

谷口吉生氏は葛西臨海公園内にある「展望広場レストハウス」の設計も手掛けた(写真:日経クロステック)

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 谷口氏が建築家としてデビューしてから既に約50年がたち、手掛けた施設の多くは更新期を迎えつつある。例えば、開園から30年が過ぎた葛西臨海水族園は、東京都が設備の老朽化やバリアフリー対策を理由に新施設の整備を決定。長年、臨海エリアのランドマークとして親しまれてきた既存の建築物は保存・活用の検討が進んでいる